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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第三章貴方の下僕になりたいのです
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7

 その後エリカ様からめぼしい話は聞けず、俺たちは桐花の要望で第2の事件現場屋上へと足を運んだ。


「しっかし、今日日学校の屋上なんて解放されてるんだな」


 飛び降り防止やらなんだで閉鎖されているものだと思いきやカギすらかかっていなかった。


 当然生徒の出入りも自由、昼休みには女子たちの定番のランチスポットになるらしい。


「安全対策がバッチリされているからでしょうね」


 桐花の言う通り屋上は高さ2メートル程のフェンスにがっちり囲まれていた。内側に軽くカエシのようなものまでついている、これではよじ登ることもできないだろう。


「ワンチャンカギが風に飛ばされて下まで落ちたのかと思ってたんだが、これじゃ無理だな」

「ええ、それにここにはベンチしか置いてませんからね、この屋上でカギを無くして見つけられないと言うのは無理があるでしょう」


 と言うことは当然、


「やっぱ合唱部の誰かか?」

「そう考えるのが自然なんですが……やっぱり動機がないんですよねー」


困ったように頭をかきつつ、桐花はスマホをいじってる。


「何見てんだ?」

「合唱部の普段の様子を撮った写真です。何かヒントがないかなと思って」

「いつのまにそんなもん」

「ついさっき杉原部長にもらいました。合唱部の皆さんが撮った写真をまとめてアルバムを作るんですって」

「……キーホルダーといい、ちょいちょい乙女入ってるよなあの人」


 いや、なんか似合ってるんだけどよ。


「守谷さんの写真もありますよ」

「マジでっ!!」


 桐花のスマホを覗き込むと、ホワイトボード前で集まり笑顔を見せる女子たちの写真が。そこにはなんと無愛想な表情をしながらもしっかりと写真に映り込むエリカ様の姿が!


「エリカ様ってこんな写真撮るんだな?!」

「……ナチュラルにエリカ様呼びなのはあえて置いておくとして、守谷さんってちょっと無愛想ですけど女子相手だと結構普通らしいですよ。」


 そういや確かに桐花の質問に対しては割と普通に受け答えしてたな。


「それより注目すべきは後ろのホワイトボードです。文化会館での練習予定日が書いてあるでしょ」


 たしかにホワイトボードには練習予定日時とそれにオーケーを出す部員たちのコメントが書かれていた。


「そしてこれが謎の人物のコメントです」


 次に見せてきた写真にはホワイトボード全体が写っていた。証拠として撮ったものだろうか? ホワイトボードには“予約しておきました”の文字が。


「字が綺麗で特徴がないな。お前筆跡鑑定とかできねえの?」

「まだ勉強中です」

「勉強してんのかよ」


 しかしこうもはっきりと練習日時が書かれていると間違えたってことは考えにくい、やはりカギの件と同じく誰かがワザとやったとしか思えん。でも何のために?


 そうやって頭を悩ませていると、


「あ、いたいた。2人ともこんなところにいたのね」


清水先生が扉を開け、屋上に出てきた。


「どう? 解決しそう?」

「……すみません、まだ何とも」


 事件の真相を掴めていない上、それがわかったところで揉め事がなくなるとは限らない、正直なかなか難しい依頼だ。


「清水先生はこの時間まで吹奏楽部だったんですか?」

「ええ、ついさっき終わったところよ」


 本当に遅い時間までやってるんだな、吹奏楽部って。この時間だと殆どの部活はとっくの昔に終わってるところだ。合唱部もすでにみんな帰っている。


「……いつもこんな時間だからね、合唱部の練習殆ど見てあげることができないの。」


 清水先生は申し訳なさそうに目を伏せた。


「合唱部にあるホワイトボードはみた?」

「はい、今時かなりアナログですよね」

「ふふ、それがいいんじゃない。あんなことできるの今だけよ」


 まあ、コメント見る限りみんな楽しんでたことは確かだな。


「吹奏楽部が終わると合唱部に行ってみんなの書き込みを見るの。その時間にはもう誰もいないんだけどね。でもそうすると今日こんなことがあったんだっろうな、みんな楽しんで部活やってるんだなってことがわかるの。……でもある日からコメントの雰囲気が変わって」


 そうか、それで先生は合唱部に問題が起きたことを知ったのか。


「あの先生、以前守谷さんが先生と話があるからって遅くまで残ったそうですが、何のお話を?」

「ええ、守谷さんには以前から相談を受けていてね」


 エリカ様が清水先生に相談?


「何についてっすか?」

「それは……女の子同士の秘密だから話せないわよ」


女の子同士? ……いや、何も言うまい。


「守谷さんってモテモテで大変ね、その日も守谷さんと会う前に屋上に行ったら飛田くんがまだ練習していたわ。彼、守谷さんのアプローチするために必死に練習してるんでしょ?」

「ええまあ、守谷さんはモテてますね。純粋な恋心によるものかどうかは微妙ですが」

「伊達くんも守谷さんのこと好きなのよね?ふふ、1人の女の子を巡って争うライバル同士。いかにも青春って感じで素敵ね」




じゃあ私仕事があるから、と言って先生は屋上を去っていった。


「……先生、本当に何も知らないんだな」


 合唱部の現状を知っていればあの2人のことをライバル同士なんて表現はしないだろう。


「合唱部って、本当は廃部になる予定だったそうです。去年に部員が部長さん1人になった上に清水先生の前に顧問を務められていた先生が定年退職されて、先生が顧問を引き受けてくれたからなんとか存続できたそうです。……部長さん言ってました、これだけお世話になった先生にこれ以上迷惑をかけられないって。だから合唱部内の揉め事は秘密にしていたそうなんですが……」

「先生にバレてかえって心配させてしまったと。なんか、悲しいすれ違いだな」


 先生には顧問としての責任を果たせない負い目、部長には先生の負担を増やしてしまった負い目が。それが先生と合唱部の間に存在する距離感の正体か。


 正直言ってどちらも遠慮しすぎていると思う。桐花なんか人生相談部を作るとき、


『顧問として先生のお名前を借りたいだけなんです! ほら、ここ! この申請書にお名前を書くだけでいいので!』


 なんて詐欺師みたいなセリフと勢いで清水先生を人生相談部の顧問にしたぐらいなのに。


「まあでも言えねーよな、あいつらがお互いにしょうもない嫌がらせをするような、ライバルなんて爽やかなもんからは程遠い存在です。なんてよ」

「確かに、あんな小学生みたいな悪戯を……ん?」

「ん? どうした?」


何か引っかかったものがあったのか、桐花は首を傾げて悩みだした。


その直後、慌てて手元のスマホを確認し出した。


「……そうか、そう言うことでしたか。……でもそうなると……っ!! やっぱりあれが狙いだったんですね!」


 急にブツブツと独り言を言い始めた桐花、正直めちゃくちゃ不気味だ。


「フフフフ、やっぱりそうです。これで問題点は全てクリアできました」

「おい! わかったのか!」


「はい! 謎は全て解けました!!

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