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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第三章貴方の下僕になりたいのです
35/62

5


「……それで、なんだよ話って」

「文化会館の予約時間が間違われて行われていた件についてお聞かせください」


 桐花が先に話を聞くことにしてのは茶髪のチャラ男、伊達だ。


 一応部長が俺たちを紹介してくれたが、伊達は突然現れた俺たちに対して明らかに警戒している。


「ああ、その話か。言っておくが間違えたのは俺じゃないからな」


 伊達は少し苛立ち気味だ。


「予約はそもそも部長がいつもやってんだ、わざわざ俺がやる必要はねーし、俺がやったとしてもホワイトボードにデカデカと日時が書かれてるんだ、間違わねーよ。なのに飛田のヤローがグチグチとよ」


 そう言って舌打ちをした。こりゃ相当ムカついてんな。


「飛田さんはなんで伊達さんを疑ってるんですか?」

「知らねーよ、あいつは最後まで残ってた俺が怪しいつってたが、どうせ俺だから疑ってんだろうよ」

「一番最後まで残って練習してたんですか?」


 桐花は驚いたように目を見開く。俺もそこまで真剣にやっていたなんて意外だ。


 伊達は胸を張る。


「エリカ様のためなら当然。あの方が頑張ってるんだ、俺も少しでも上手くなるためなら多少の努力はするさ」


 はーー、なんと言うか、下僕根性もここまでくると感嘆するな。


「……飛田もその日は俺の次に遅くまで残っていた。エリカ様のために努力する、その根性だけは認めてやってもいい」


 だがな、と吐き捨てるように続けた。


「初めて会った時から気に入らなかったんだ。エリカ様と距離は近えし、俺とエリカ様が会話してるといつも横からいきなり入ってきやがるし。下心が丸見えなんだよ」

 

 ……下心があるのはお前もだよな。とう言うツッコミは辛うじて飲み込んだ。


「エリカ様と会話って、守谷さんは男子相手だと基本無視か罵倒だと聞きましたが?」


 確かに下僕を引き連れている守谷を何度か見かけたことはあるが、会話してるところは見たことないな。


「最初は俺もそうだったさ、だが根気よく話していくうちに“うるさい”とか“死ね”って返事を返してくれるようになったんだ!」

「罵倒は変わってねーじゃん」


 それは会話とは言わない。


「それに今ではエリカ様は俺をステキなアダ名で呼んでくださるようんになったんだぜ」

「アダ名?どんなアダ名ですか?」

「発情期だ!」

「……それはアダ名じゃなくてただの悪口だろ」


 よくそれで喜べるなこいつ。



「カギの件に関しては僕は何も知りませんよ」


 次に話を聞くのは黒髪のマジメ君、飛田だ。


「カギが無くなったのに気づいたのは個人練習を終えて屋上から出る直前、それまで僕は屋上から出ていませんし、カギにも触れていません。もちろん屋上は徹底的に調べましたから何かの拍子に僕が無くしてしまった筈がありません。……なのにあの男は僕が無くしたんだとしつこいんですよ。」


 そう言って飛田は組んだ腕の肘を指で神経質そうに叩いている。こっちもこっちで相当イラついてるな。


「……ちなみになぜ伊達さんがあなたを疑っているかはご存じですか?」

「知りませんよ、あの日は僕が最後まで残っていたから怪しいなんて言ってましたが、どうせ僕だからでしょうね」

「あーー、飛田さんの次に遅くまで残っていたのは?」

「……彼ですよ。エリカ様に忠誠を捧げる。その姿勢だけは認めてあげてもよいでしょう」


 ですが、と鼻を鳴らして続ける。


「初めて会った時から合わないと思っていたんです、無神経だし、エリカ様に対して馴れ馴れしいですし。下心がみえみえなんですよ」


 ……なんかさっきも同じやり取りを見た気がするな。こいつら実は似た者同士じゃないのか。


「あの、もしかして守谷さんから何かアダ名をつけられませんでしたか?」

「よく知ってますね、つけられましたよ」


 ……やっぱりか。


「なんていうアダ名を?」

「紳士モドキさ!」

「・・・・・・。」


 伊達もそうだがなんでこいつら誇らしげなんだろうか。






「どう?何かわかった?」


 当事者2人の話を聞き杉原部長のもとに戻ったが、俺にはあいつらがドMだってことしかわからなかった。


「わかったことはあります、この事件は2つとも偶然誰かがミスして起きたことではないということです」


まあそうだよな、あの2人の話を聞く限りミスが起きるような状況ではなかった。しかし……


「そうなると、誰かが意図的に起こした事件ってことか?誰が得するんだそんな事して」


 予約時間が遅れたせいで2時間も待ちぼうけをくらい、カギを無くしたとなれば部活全体の問題になる。合唱部全員被害者みたいなものだ。


「もしかして、合唱部以外の誰かが合唱部の嫌がらせのために?」

「いえ、その可能性は無いと思います」


 部長の考えを桐花は即座に否定した。


「ホワイトボードに書き込むには当然部室の中に入らなければなりません。生徒が自由に使えるカギは職員室で厳重に管理されています。屋上でカギが無くなった件も部長さんの話を信じるのであれば合唱部以外誰も屋上にいなかった、その状況でカギを取ることができる人なんて合唱部以外いないでしょう」

「じゃあ、合唱部の誰かが?」


 部長が少し青ざめている、部員が自らの部活に嫌がらせをしたなんて考えたくないだろう。


「うーーん、まだわかんないです。取り敢えず情報を集めるために守谷さんにお話を伺ってもいいですか?」


 守谷か、正直事件との関わりは薄い気がするが。

 

 ちなみに彼女は俺たちがここに来てからずっと壁に寄りかかってスマホをいじっている。目の前で男2人が自分をめぐって言い争いをしていたにもかかわらず我関せずとでも言うかのように、そちらに顔を向けることすらしなかった。


「わかった、守谷さんだね」


 そう言って部長は守谷を呼んだ。


「守谷さーん、ちょっとこっち来てくれるかな」

「……。」

「守谷さんに聞きたいことがあるんだって、お話聞かせてー!」

「……。」

「えーと、守谷さん……」

「……。」

「……。」

「……。」

「……ごめん、行こうか」


 部長、負けないでください!!




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