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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第三章貴方の下僕になりたいのです
33/62

3

 杉原部長曰く、伊達と飛田が揉める原因となった事件は2つあるらしい。


 1つは


「合唱部は月に一度くらいに市の文化会館で練習をするんだ」

「確かコンサートホールがあるところでしたよね?」


 そこは俺も知っている。中学の合唱コンクールなんかでも使われているかなりでかい会場だ。この学校からだと電車に乗って結構移動しなければならないからなかなかの遠出になる。


「うん、大きな場所で歌うと響き方が違うからね。それで2週間ぐらい前にも借りる予約をしてみんなで行ったんだけど……」

「だけど?」

「……予約時間がズレててね、予定していた時間より2時間遅く予約されていたんだ」

「なんでそんな事が?」


 桐花から質問を受けた部長は俺たちについてくるように促すと、部内に置かれているホワイトボードに向かった。


「これはうちで連絡用に使っているホワイトボード、合唱部は人数が少ないけど各パートに分かれて空き教室でそれぞれ練習してるんだ。だから何か連絡したい事がある時は部室に置いてあるこれに書いて各部員に通達するようにしてるんだ」


 ホワイトボードには練習の日程や買い出しのリスト、それに部員たちが思い思いに書いた殆ど落書きみたいなコメントでカラフルに彩られている。


「なんでまたホワイトボードなんてアナログな手段を? スマホでいいじゃないっすか?」

「それが、その……守谷さんが伊達君と飛田君に連絡先教えたくないって……」

「……なるほど。」


 納得だ。あの2人が守谷の連絡先を知ったら絶対にめんどくさい。


「それで、このホワイトボードに文化会館での練習日と時間を書いて部のみんなにそれでいいかコメントを残してもらうようにしてたんだ。みんなからオッケーをもらえたからその時間に行ったんだけど……」

「予定していた時間よりも予約した時間が遅れていたということですね。予約したのは部長さんですか?」

「いや、いつもは僕が予約するんだけどホワイトボードに"予約しておきました。"ってコメントされててね、誰かが予約してくれたんだと思って、一応守谷さんが電話で本当に予約されているか確認したらその日に合唱部の名前で予約されてたらしいからそのまま……」


まさか時間がズレているとはねえ。と部長は呑気そうに言った。


「ん? なんで守谷が確認したんですか?」


 守谷がそんな雑用をわざわざやるイメージなんて無いが。


「ああ、守谷さんウチの副部長なんだよ」

「マジで!!」


 あの晴嵐学園の女王様とまで言われている守谷が!?合唱部にいるだけでも驚きなのに副部長だって!?


「彼女すごい熱心なんだよ。入学してすぐ入部してくれてね、朝練習もするんだけどいつも僕よりも早く部室に来てるんだ」

「マジかよ……」


 全然イメージと違う。


「結局予約したのは誰なんですか?」

「それが誰なのかわからなくてね、コメントしたら名前を書くようにしてもらってるんだけど予約したっていうコメントには書いてなかったんだ。だけど飛田君がね、伊達君が間違えて予約したんだって言い張ってるんだ」


 理由はわかんないんだけどね、と部長はため息をついた。


「ちなみに、文化会館での練習はどうなったんですか?」

「もちろん遅れて練習したよ、月に一度の機会だしね。……まあ、2時間も待ちぼうけくらったからみんなピリピリしてたけどね。守谷さんなんかは勝手に買い物行っちゃうし、慌てて追いかけたら僕荷物持ちさせられたよ」


 あはは、と部長は笑うが先輩を荷物持ちにするなんて流石エリカ様と言ったところだな。



 そして2つ目の事件は


「僕たち、天気のいい日はみんな集まって屋上で練習する時があるんだ。声出しだったり、何曲か歌ったりね」


 ああ、放課後たまにどこか遠くで歌が聞こえると思ったら合唱部だったのか。


「基本的には1日の練習の最後にやるんだけど、飛田君がもう少し練習するからって言ってね、CDとラジカセを部室に返してもらうためにカギを任せてみんな帰ったんだけど。彼からカギが見当たらないって連絡があったんだ」

「カギ無くしたんすか?」

「そうみたい。次の日の朝に守谷さんにいつもより早く来てもらって一緒に学校中探したらなんとか見つかったから良かったけど」


 これが合唱部のカギね、と言って部長が手渡してきたが、これは……?


「これがカギですか?」


 どう見ても手のひらサイズの頭に鈴のついたウサギのぬいぐるみだった。


「ああ、これキーホルダーになっているんだよ。ここをこうして、ほら」


 部長がぬいぐるみの尻部分のボタンを外すと中からヒモに繋がれたカギが出てきた。


 なるほど、こういう仕組みか。


「可愛いでしょ、カギって結構落としやすいからねこれなら落としてもすぐにわかるでしょ」


 確かにこのサイズの物が落ちたらすぐに気がつく。鈴も付いているから音でわかる。


「最後にこのカギを確認したのはいつですか?」

「僕の覚えている限るだと、部室を閉めてみんなで屋上に行って……うん、カギを屋上に設置してあるベンチに置いた時だね」

「誰かが間違えて持って帰ったなんてことは?」

「うーん、無いと思うよ。あの時屋上にいたのは合唱部だけだし、部員が間違える事なんて無いと思う。それにこのカギが見つかったのは次の日の朝一、職員室の前にある落し物コーナーの中だったんだ。もし間違えて持って帰ったとしても朝早くに学校に来てそんなとこに置くぐらいなら僕に連絡くれればいいだけだしね」

「……じゃあどうやったら無くすんすかこんなモン」


 無くなる理由が全然ない。正直、なんでこいつが消えたのかサッパリだ。


「そこがわからないんだ。飛田くんも気がついたら無くなってたって言うし、ただ伊達くんが飛田くんがカギを無くしたんだって責めてね。ほら、伊達くん文化会館の件で飛田くんに責められたから、ヒートアップしちゃって」


 なるほど、お互い疑い疑われ、責めて責められか。そりゃ揉めるわ。






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追記 早くも3件目のブックマークをいただきました!ありがとうございます!!

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