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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第三章貴方の下僕になりたいのです
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2

「こんにちは。君たちが清水先生の言っていた人生相談部の2人だね」


 そう言って合唱部で俺たちを出迎えてくれたのはこの合唱部の代表、杉原部長だ。


「僕たち合唱部の問題なのに力を貸してくれるなんて...部を代表してお礼を言わせてもらうよ。本当にありがとう」


 杉原部長は背が低く小太り気味で少し頼りなさげに見える。しかしその穏やかな表情と柔らかな物腰は話しているだけで、ああこの人はいい人なんだろうな、と思わせるような不思議な魅力がある。何より俺のことを怖がらずに接してくるているだけで個人的にはかなりの好印象だ。


「それで、揉めている1年生のことなんだけど」

「あー、わかります。あの2人のことですよね」


 そう言う桐花の視線の先には、


「だからふざけた事ぬかしてんじゃねぇ!!」

「ふざけているのは君のほうでしょう!!」


 わかりやすく揉めている男子がいた。あの2人、俺たちが部室にお邪魔した時からずっとこちらに気付くことなく言い争いを続けている。


「茶髪の彼が伊達君、もう1人の黒髪の子が飛田君。

それぞれがウチのテノール(男性高音)リーダーと、バス(男性低音)リーダーなんだ。……もっともテノールもバスもあの2人しかいないんだけどね。ちなみに僕は男声アルトね」

「あの2人が合唱部っすか?」


 見たところ茶髪のチャラ男と黒髪のマジメ君って感じだ。見た目が対照的な2人だが、正直どちらも女子にモテそうな容姿をしている。


 完全に偏見だが、2人とも合唱部にいるイメージではない。


「はは、まあね。実際に2人が合唱部にいる理由は歌うことよりも、彼女だからね」


 そう言って部長が向ける視線の先にはとんでもない美少女がいた。


 彼女のことは知っている、1年の有名人守谷 エリカだ。まさか、彼女が合唱部だったとは。


「すごいですね、吉岡さんと比べるとなんて綺麗な金髪」

「無茶言うな、天然モノに勝てるか」


 彼女はとにかく目立つ容姿をしている。特に目立つのがその鮮やかな金髪だ。噂では守谷はアメリカ人のハーフであるらしく、親譲りのその髪は金髪というよりはブロンドヘアーって感じだ。


 そしてそれ以上に彼女を有名にしているのは彼女のその性格だ。


 彼女に話しかけても無視は当たり前、やっと口を開いたかと思えば飛び出でくるのはとんでもない毒舌の嵐。


 しかしそれが一部男子の中でイイ! と話題になり、今では"エリカ様"の下僕を自称する男子が急増している。クラスの男子の大半はすでに下僕となっており、上級生にまで下僕いるとの話だ。


 そんな彼女を理由に合唱部に入ったという2人はもちろん、


「だからオメエはエリカ様に近づきすぎなんだよ!!」

「君こそ! エリカ様に馴れ馴れしすぎです!!」


……まあ、当然下僕だわな。


「あんなの2人もいて邪魔じゃないっすか?」


 合唱部に入った動機が不純な上にあんなに大揉めして、しかもその理由が女子の取り合いだなんて……俺たちに頭まで下げた清水先生が不憫でしょうがない。


 しかし、杉原部長はそう思ってないらしく、


「いや、彼らには入ってもらって本当に良かったよ。お互いに守谷さんに良いところを見せようとして必死に練習するから上達も早いしね。一番遅くまで練習してるのは彼らなんだ。……それにあの2人は女子にモテるらしくて、彼ら目当てで女子が入ってきたから部活が賑やかになったんだ」

「マジっすか」


 やっぱモテるんかあの2人、あんなにエリカ様エリカ様言ってるのに。


「それに以前は仲が良いとは言えないけど、ちょっとした小競り合いがある程度であそこまで揉めることはなかったんだ」

「小競り合いって、どんなのがあったんですか?」

「……お互いの水筒を隠しあったりとか」

「しょうもな」


 完全に小学生レベルの嫌がらせだ。


「それで、なんであんなに揉めるようになったんですか?」

「以前にちょっとした事件があってね」

「ほう、事件ですか?」


 恋愛探偵を自称するだけあって、推理オタクでもある桐花の瞳に興味深げに輝いた。


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