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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第一章ゴリラキープアシークレット
3/62

2

「寂しい」


 タケルにタンカを切って一月がたつ。今日も俺は1人で飯を食っていた。


「虚しい」


 1人で食べる昼飯とは、ここまで味気ないものだっただろうか。


 この一月の間何もしてこなかったわけではない。俺だって友達を作ろうと努力はしたのだ。


 しかしことごとく失敗した。ある時は話しかけようと近づいただけで逃げられ、ある時は話しかけるとこちらが気の毒になるくらい顔を青ざめられ、またある時は普通に話しかけただけで無言で財布をこちらに差し出してきた。……まともに会話を始めるところからできていないんじゃ、どうしようもなくないか?


 どうすればいいんだろうか?俺はこのまま高校三年間、1人で昼飯を食う羽目になるんだろうか?


 今更タケルに泣きつくのは、男のプライド的にアレだ。絶対に許されることではない。


 ちなみにタケルとはこの一月の間会ってもいない。クラスが違う上に、帰宅部の俺とは違い、あっちは柔道部で放課後は忙しいのだ。


「そうだ、俺も部活に入ればいいのか」


 いいんじゃないか!部活に入れば部員と話す機会なんていくらでもある。そうすれば俺の外見ではなく、内面を見てくれる!


 ……ダメだ。どうシュミレートしても、部員が俺を恐れて来なくなり、部活が崩壊する未来しか見えない。


「はああ……」


 今日何度目かわからないため息をこぼしていると、


「すみません、吉岡 アツシさんですね?」


 と誰かが俺に声をかけてきた。


 女子の声っ!


 高校に入って初めてのことにテンションを上げて振り向くが、すぐに落ち込むことになる。

 

 そこには校内一の変人、桐花 咲がいた。


「そ、そうだが、なんの用だ?」


 自分でも顔が引きつっているのがわかる。しかし桐花はこちらと対照的に笑顔だ。


 彼女の顔を近くで見るのは初めてだが、噂以上に可愛い顔立ちをしている。特にメガネの奥の眼の輝きがスゴイ。ずっと見ていると吸い込まれそうだ。


……こんなに可愛い女の子が笑顔を向けているのに、一切トキメキが無いのは何故だろうか?


「吉岡さんにお聞きしたいことがあるんですが、いいですか?」

「俺に聞きたいこと?なんだ!? 俺にはお前の餌になるような恋愛話は持ってないぞ!!」

「……その反応は傷つきますね」


 いや、本当に何の用だよ?


「あ、申し遅れました。私、1年の桐花 咲です」

「あ、ああ。知ってる」

「私、人の恋愛話が三度の飯より好きでして」

「それも知ってる」

「学園中回って集めてるんですよ、恋バナを」

「うんうん、知ってる」

「そこで吉岡さんにはですね、お友達の剛力 猛 さんの恋人のことについて、お聞きしたいんですが」

「知ってる知っ……なんだって!!!」


 この女何を言った!?


「タケルに恋人!? 嘘だろ!!」

「えっ、ご存知ないんですか? お友達ですよね?」


 待て待て、どう言うことだ!? 俺と会っていないこの一月の間に何があった!??


「えーーと、ご存知ないなら、大丈夫です。ありがとうございました」

「待て、待ってくれ! どう言うことか説明してくれ!!」


 去ろうとする桐花を必死に引き止める。


「あいつに彼女がいるって本当か!? 誰なんだ!」

「……お友達なら、自分で聞けばいいのでは?」

「今訳あって1ヶ月ぐらい喋ってないから聞きづらいんだよ!」

「あの……本当のお友達なんですか?」


 何を言ってるんだ、俺とあいつは親友だ! 親友の間に秘密があって良いわけがない!


「なあ頼むよ、教えてくれ。このままじゃ、気になって夜も眠れない! 教えてくれるなら、あいつに関して知ってることはなんでも全部話すぞ!!」

「お友達なんですよね!?」


 その後、俺の必死の懇願によりなんとか桐花を引き止まらせることができた。




「先ほども言った通り、私は人の恋愛話を集めています。それこそ、この学園における彼氏彼女の関係は全て把握していると自負しています」

「マジかよ」


この学校、生徒数千人超えてなかったけ。


「例え恋愛経験がなくとも、これだけの恋愛話を集めた私は、恋愛マスターであると言っても過言ではありません」

「それは過言だろう」


 なんだ恋愛経験のない恋愛マスターって。


「そんな訳で、恋愛マスターである私は結構色んな人から恋愛に関する相談を受けるんですよ」

「本当か? それ」

「本当ですよ! 実際に剛力さんの彼女さんからご相談をうけているんですからね!」


 相談?タケルの彼女から?


「お前、俺からタケルの彼女について聞きたいから声かけたんじゃないのか?」

「……聞きたかったのは、剛力さんの最近の様子です。彼女さんが言うには、最近避けられているんだそうです」

「避ける? タケルが?」

「はい、会ってくれない上に、メールの返事も返してくれないそうです」


 それは変だ。タケルはかなり律儀な奴だ。どんなくだらない内容であっても、とりあえずの返事は返してくれる。


「そんなことが1週間以上続いて、悩んでいる彼女の相談を私が受けた訳です。剛力さんと1番親しい吉岡さんなら、何か事情を知っているかと思ったんですが……」


 あーー、何も知らない役立たずだった訳か。


 しかし、それなら。


「なあ、協力させてくれないか?」


 このまま何も知らないままではいられない。


「良いんですか?こっちとしては居てくれるとありがたいんですが」

「ああ、1ヶ月口を聞いていなかったとはいえ、あいつは俺のダチなんだ。ダチに何かあったってんなら、ほっとけない」


 そうだ、あいつはチンピラみたいな見た目の俺の、一緒にいるだけでも悪評が立ってしまうような俺のダチで居てくれた、俺が知る限り一番良い奴なんだ。


「……わかりました。こちらこそよろしくお願いします」

「ありがとう、頼む」


 桐花が差し出してきた、小さな手を握り返す。

 


「ところで、タケルの彼女って結局誰なんだ?」


あの柔道一筋の巨漢の彼女だ、どんなメスゴリ……いや、どんな女傑なんだろうか。


「ああ、1年の九条 真弓さんです」

「ふっざけんなっ!! あのゴリラ!! ゴリラのくせして1年の小動物系アイドルが彼女だと!? どんな手を使いやがったあのクソゴリラがっっっっ!!!」

「……あの、もう一度確認しますが、本当の本当にお友達なんですよね?」


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