エピローグ
「ありがとう、君たちのおかげで全てうまくいったよ」
あれから数日後、我らの人生相談部の部室にバスケ部の中野部長が礼を言いに訪れていた。
「まさか、ここまで上手くいくとは……学園一の不良の名は伊達ではないな!」
「……あんまり嬉しくないっす」
一連の窃盗事件は女子バスケ部を恐怖させた。
更衣室に忍び込んで盗みを働くヤカラがいる状況で、こころ穏やかに練習に励むなんて無理な話だ。
部員たちを安心させるには犯人を捕まえることが1番の方法なのだが、その肝心の犯人が女子バスケ部部員じゃぁな……
そこで桐花の考えた案は実にシンプル、俺が不審者を捕まえてボコボコにしたと偽のストーリーをでっち上げる、たったそれだけだ。
そして盗まれたもの全てと、懇切丁寧な謝罪文(俺が書いた)をバスケ部に持っていくという完全なる自作自演。
正直こんなので部員たちが納得するのかと思っていたのだが、俺の悪評というものは俺が考えていた以上に効果があるらしく、あの吉岡アツシが怒らせたのだから犯人は相当怖い目にあったのだろう、部員のみんなはそう思い納得したようだ。
おおごとにしたくないという被害者である小泉の気持ちと、解決しのだから小泉の為に全て忘れろという部長の鶴の一声が合わさることで、女子バスケ部は以前の平穏を取り戻したらしい。
そして、肝心のあの2人は、
「大木だがな、小泉と一緒に小泉の彼氏の実家で倉庫の仕分けのバイトを始めたそうだ」
「へー、彼氏さんてボンボンだったんですね」
「桐花、言い方」
いくらなんでも失礼すぎる。
そんな桐花に部長は苦笑している。
「まあ、そのおかげで都合のいい時間にバイトができるらしくてね、力仕事だから金入りもいいし、いいトレーニングになるんだと」
2人の間にはまだぎこちなさが残っているらしいが、それがなくなるのも時間の問題だろう。
あの2人ならきっと大丈夫、それは間違いない。
「なら、全部丸く収まってめでたしめでたしっすね」
よかったよかった。
しかし、部長は苦虫を噛み潰したような顔になり、大変言いにくそうに、
「……その、だな、1つ問題があってな」
え? なんだ?
「最近、女子バスケ部に関するある噂が校内で流れているんだ」
もうこの時点で嫌な気がしてきた。
「……どんな噂ですか?」
「女子バスケ部の全部員が、学園一の不良、吉岡アツシの女になったと言う噂だ」
「桐花ァッ!!」
てめえの流した噂が一人歩きしてんぞ!!
こいつさっきから目を合わせないと思ったら、さては知ってやがったな!
「なあ頼むよ、アフターサービスもバッチリな恋愛探偵なんだろ、なんとかしてくれ!」
困り果てた部長を見て、桐花は落ち着きはらって言った。
「吉岡さん、更生してください」
「だから俺はチンピラじゃねえ!」
第二章終了です。
第三章は製作中ですのでお待ちください。




