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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第一章ゴリラキープアシークレット
20/62

エピローグ

「寂しい」


 事件解決から3日がたつ。今日も変わらず俺は一人で飯を食べていた。


「虚しい」


 1人で食べる昼飯とは、ここまで人の心を空虚にさせるものだっただろうか。



 事件の顛末を語ろう。



 この事件の結果、晴嵐学園の教師が一人懲戒解雇、生徒三人が1週間の停学となった。


 生徒三人とは俺たちを襲いに来た不良連中のことである。


 停学の理由は、学園内での喫煙。


 柔道場を襲った件に関しては、脅迫を受けていたためお咎めなしだそうだ。


 そして彼らを脅迫した張本人で、部費を横領した挙句、その事実を隠すために大それた犯行を行った山下は即解雇となった。


 被害届も出されず、警察沙汰にもならなかったことについて処分が甘いと思ったが、山下の所業に柔道関係者が激怒しているらしく、山下は使い込んだ部費の返済を終えるまで監視付きで肉体労働をさせられるとかなんとか。


 使い込んだ部費がかなりの量だったらしく、返済まで何年かかるやら。


 柔道部は指導者が横領を重ねていた挙句クビになったことで存亡を危ぶまれていたが、定年退職した先代の顧問を再雇用という形で雇い新たなスタートを切った。


 ……そして当然と言えば当然だが、学園側は山下の横領の件に気付いていたらしい。


 ただし、山下に才能があるから見逃していたというよりは、証拠を固めるためにあえて泳がしていたそうだが。


 学園側からすれば俺たちの行動は、いたずらに騒ぎを大きくした余計な行動だったかもしれない。


 けれど、決して無駄な行動ではなかった。


 それだけは確信を持って言える。



 ただ……


「人恋しい……」


 チクショウ俺だけ何も変わってない、いやむしろ悪化してんじゃねえか。


 今学園には一つの噂が流れている。


 ()()()の不良、吉岡アツシが柔道部員を全員舎弟にした。


……とんでもねえデタラメである。


 噂がたった原因として、俺の怪我があるらしい。


 俺の怪我は襲われてつけられたものではなく、柔道場を襲った連中との壮絶な死闘の末に負ったものになっているらしい。


 停学になった連中は実は停学ではなく、その死闘で俺にやられて病院送りにされたため学校に来れないという認識だそうだ。


 それに感激した柔道部員達は俺に忠誠を誓い、それに恐れをなした山下は学園を去った。


……どんなストーリーだよ!!!


 柔道部の連中も面白がって否定しねーんだしよ!!!


 というわけで、俺は他の生徒から一段と距離を置かれるようになった。


 今俺が座っている机はおろか、隣と前後の机に座る生徒すらいない。


 ……食堂って、こんなに広かったけか?


「くそう……」


 今頃タケルと九条は二人きりでランチ中だろうな。


 彼女の手作り弁当とかふざけんな!! あのゴリラ!!!!


 石田は石田で、クラスに普通に友達がいるしよ。


「はああああ……」


 今日何度目かわからないため息をこぼしていると、



「すみません、吉岡 アツシさんですよね?」



 女子の声っ! ……とはならない、ここ最近でいやってほど聞いた声だ。


「……なんだ? 桐花」


 改まってどうした?


「いやー、学園一の不良と名高い吉岡さんがこんなにも覇気のない顔しているとは思わなくて」

「……うるせえ。」


 桐花はからかうように笑う。


 しかしすぐに笑いをおさめ、こちらを観察するように目を細める。


「お怪我の具合は?」

「……大したことねえよ」


 嘘です、超痛い。カレーが口の中でめちゃくちゃ染みる


「……その怪我の原因、剛力さんと久城さんのために身体を張ったって、みんなが知れば吉岡さんの見方も変わるんじゃないですか?」

「ああ、良いんだよそれは」


 確かに今の状況には大いに不満があるし、変えられるもんなら変えたい。けどな・・・


「この怪我の理由を説明するとな、今度はあの不良どもが変な目で見られるだろ」

「……別に構わないでしょう。自業自得です」

「そうもいかねえんだよ、俺が無理矢理ボコボコにするようにさせたんだからな。そこをほじくり返すと・・・なんつーか……寝覚が悪くなるんだよ」


 我ながらはっきりしない答えだ。


 だけど、桐花は俺のそんな曖昧な答えを聞き笑顔を見せた。


「いいですね。吉岡さん……やっぱりいいです」

「な、なんだよ?」


 その笑顔は穏やかというか、深いというか、今まで見てきた桐花の笑顔とは全く違う魅力があり、不覚にもドキリとしてしまった。


 だがそう思ったのも一瞬で、いつものオモチャを見つけた子供のような笑顔に戻った。


「実はですね、あの空いてた部室を勝手に使ってたのがバレてお叱りをうけましてね、ほらこれから探偵活動を続けるためには拠点が欲しいじゃないですか?ですから部活を作ろうかと思いまして」

「これからの探偵活動って……まさか……」

「部活の立ち上げ条件は、顧問一人に部員四人です。顧問と残り二人の部員を探さなきゃいけないんです」

「俺を頭数に入れてんじゃねえ! 嫌だぞ! もうやんねえかんな!!」

「あ痛たたた! 誰かさんに殴られた頭が痛い!!」

「こ……こいつ……!!」


 この女……めちゃくちゃだ……




 この女と出会ってからロクな目に合ってない。


 そしてこれからもそうだという予感がする。


 ただ……まあ……


「ひとまず今後のことを話し合うために、お昼ご一緒してもいいですか?」

「……おう」


 一緒に昼飯を食う相手ができただけ、良しとするか。

第一章完結です。


第二章は執筆中ですのでもうしばらくお待ち下さい。

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