雪4
「セバス!見ろよこれ!ミヅキ達が作った滑り台だぜ!俺も滑ったがスリル満点で最高だ!お前も滑って見ろよ」
アランが素敵な笑顔でセバスを見ると…
「いえ、私は大丈夫です」
セバスがサラッと断ってしまう。アランはセバスの肩を組むと…
「おい、ミヅキがせっかく作ったんだぜ…可哀想な事を言うなよ…」
ミヅキに聞こえないように呟くと…
「なぁミヅキ?セバスにも滑って欲しいよなぁ?」
アランがミヅキを見ると…
「えっ?いや…だめだ…んっ!」
ミヅキが止めようとすると、後ろからベイカーさんがミヅキを抱き上げ口を塞ぐ。
「ああ!ミヅキも滑って欲しいってよ!」
ベイカーが後ろから笑って言うと
「そうですか…では少しだけ…」
セバスはヤレヤレと柱を登って行った…
「ぱっはー!ベイカーさんセバスさん行っちゃうよ!」
口を離されてミヅキが上を見ると…
「大丈夫、大丈夫!セバスさんだぞ、怪我なんてしないよ…ただであの人が落ちる所は見てみたい!」
(うっ…確かに…そんなセバスさんも見てみたいなぁ…いや!駄目だよ!セバスさんを騙すなんて!)
ミヅキが心の天使と悪魔と葛藤していると…
「行きますね」
セバスさんが滑り出してしまった!
「「よし!」」
「あー…」
三人で上を見上げると…
「よし!あそこで減速すれば…ってしないな…」
アランが残念そうにしていると…
「しかも魔法で加速したな…で、でも次は穴が開いてるぜ」
ベイカーがニヤッと笑うと
「あっ…氷魔法で補修してるね」
ミヅキが言うと…
「あっ…俺巡回の途中だったんだ!じゃあ」
アランがこの場から去ろうとすると
「待て!俺が確認してくるよ!アランさんは残ってて」
ベイカーがアランを引き止めていると、セバスが見事に二人の前にスタッ!と着地した…。
「セバスさん!凄い!」
ミヅキがパチパチと拍手すると…
「ありがとうございます」
セバスが手を前に恭しく頭を下げると
「いやぁさすがセバスだな!着地が見事だ」
アランがセバスの背中をバンバンと叩くと
「速さもピカイチでしたね!」
ベイカーもパチパチと手を叩くと
「ありがとう…しかし途中壊れた箇所がありましたが」
セバスがアランを見る
「えっ?そうだったか?」
アランがとぼけた顔をする。
「あなた、先程滑ったと仰りましたよね?」
アランを睨む
「それに…一回転する場所があれでは加速が足りませんでしたよ?どうやって回ったのですか?ベイカーさん?」
「げっ…」
いきなり振られてベイカーが口を紡ぐと…
「ミヅキさんは何か知ってますか?」
セバスがニコッとミヅキに笑いかけると…
「壊れてるって言おうとしたのに、ベイカーさん達に止められました!」
ミヅキが敬礼しながらハキハキと答えると
「「ミヅキ!」」
アランとベイカーがサーっと顔色が悪くなる
「そうですか…」
セバスが笑いながら二人を見つめる…
「いや!違うんだ!ベイカーだ!こいつが先に…」
アランがベイカーのせいにしようとすると
「違う!セバスさん俺がそんな事する訳ないだろ!」
「お二人共…」
セバスが騒ぐ二人を睨むと、ピタッと黙る。
「お二人にはもう一度滑り台をしてもらいましょうかね…」
セバスが滑り台の柱を触ると、ググン!と柱がさらに高く伸びる。
「登れ」
セバスが二人に命令する。
「「はい!」」
アラン達が一目散に登って行くと…
「ミヅキさんも滑りますか?」
セバスがミヅキに手を差し出す…
「えっ…」
「ふふ、私も一緒に滑りますよ…どうですか?」
「うーん…セバスさんと一緒なら…」
ミヅキがセバスの手を掴むと、ミヅキを抱き上げ柱を駆け上がって行った…
頂上に着くと、セバスが氷魔法で二つの滑り口を作る。
「アランとベイカーはここから行きなさい」
セバスが片方を指さすと…
「セ、セバスさん…この滑り台…先が見えませんが…」
ベイカーがチラッとセバスを見ると
「ええ、短めにしてみました。大丈夫でしょう?」
セバスが笑うとベイカーの背中をトンっと押した…
「うわぁー!」
ベイカーがバランスを崩して滑り台を転がり落ちていくが…
「こんなの滑り台じゃねぇぇぇぇ……」
ベイカーがそのまま下に落ちていく…ドスンっと小さい音が聞こえると
「ほら、次はお前だ」
セバスが逃げようとするアランの肩を掴むとグッと力をこめる。
「痛ッ!痛ッ!わかった!わかったから…全く冗談が通じないやつだ…」
ブツブツと文句を言っていると…
「早く行け!」
セバスが足でアランを押すと…
「覚えてろぉー言っとくがミヅキも仲間だからなぁぁぁ…」
アランも爆弾発言をしてそのまま落ちていった…
「セ、セバスさん?」
ミヅキが怯えながらセバスを見つめると…
「ミヅキさん…何か私に隠してることはありませんか?」
「えっ…」
ミヅキがジリジリと後ろに下がるがそんなに足場が広くないので逃げる事も出来ない…
「ご、ごめんなさい!ちょっとセバスさんが落ちたら…面白いかも…って思いました」
ミヅキが正直に謝ると
「ミヅキさんにそんな風に思われるなんて…」
セバスがショックを受けたように顔を隠す…
「ご、ごめんね!慌てたセバスさんなんて見れないから…見てみたくて…可愛いかなと思って…」
ミヅキが慌てて謝ると
「可愛い?」
セバスが顔をあげる。
「セバスさんっていつもしっかりしてるから…落ちるセバスさんも可愛くて見てみたいなぁって思って…ごめんなさぃ…」
ミヅキがしゅんとすると
「許しません…」
セバスの言葉にミヅキがショックを受けて顔を上げると…そこにはセバスがミヅキを優しい笑顔で見つめていた…。
「セバスさん?」
ミヅキが首を傾げると
「一緒に滑ってくれるなら…今回の事は水に流しましょう」
セバスが手を差し出すと
「はい!」
ミヅキは嬉しそうにセバスの手を握りしめた!
ベイカー達が滑った方とは別の滑り台にセバスが座ると
「おいで」
ミヅキを手招きする、ミヅキはセバスの膝に乗ると後ろからギュッと抱きしめられた。
「行きますよ」
セバスが言うと二人で滑って行く…
「は、速い!」
螺旋状になっている滑り台を凄い速さで滑り降りて行く!ミヅキは恐怖にセバスさんの腕を引き寄せ抱きつくと…
「ミヅキさん!バランスが!」
セバスがバランスを崩すと、二人で滑り台から落ちてしまった!
セバスはミヅキを腕の中に抱えて庇うように落ちる。
ドスンッ!
二人は雪に埋もれると…
「大丈夫か!」
「ミヅキ!セバス!」
下で待っていたベイカーとアランが慌てた様子で二人を掘り返すと…
「ぶっは!」
「あははは!」
ミヅキとセバスが雪にまみれた顔を見合わせ笑い出す…
「怖かったぁ~」
ミヅキが笑いながら涙を拭うと
「すみませんでした、こんな事になるとは」
セバスも可笑しそうに笑っている。
「なんだ?二人共楽しそうだな?」
「落ちたのにな…」
アランとベイカーが訳が分からず首を傾げていた…。
ミヅキ達はカマクラに戻ってくると
「ミヅキ、鍋の用意が出来てるぞ」
テリーさん達が用意を終わらせてくれていた…
「ありがとう!もうお腹ペコペコだよ」
ミヅキがお腹をさすると…
「早く食おう!」
アランがもうテーブルに座って、待っている…その様子にミヅキが笑うと
「じゃあ食べよっか!」
ミヅキが苦笑すると
「今日はどんな鍋なんだ?」
アランが鍋を覗き込む…
「鍋って言うか…これは〝おでん〟だよ」
ミヅキが鍋の蓋を開けると湯気がふわぁとあがり出汁の香りが広がった…
「具は大根に卵、つみれに昆布にちくわぶ、タコにはんぺん、じゃがいもに牛スジです!」
「んー!はんぺんってふわふわで美味しい~」
子供達に人気なのははんぺん!
「タコと牛スジってのは酒にも合いそうだな!」
大人達は串に刺さっているのがお気に入りの模様…
「熱々で体が暖まるなぁ…」
「色んな具があって美味しいな、他にも色々と合いそうな具材が有りそうだな」
テリーが聞くと
「トマトとかも美味しいよ」
ミヅキが答えると
「トマト!食ってみたいなぁ…よし!買ってくる!」
アランが立ち上がると外へと飛び出して行った…
「あっ!…」
ミヅキが引き留めようとすると、セバスさんが止める。
「いいんですよ、本人が食べたがってるんですから探して来てもらいましょう」
セバスがにっこりと笑うと
「こんなの真冬にトマトが売ってるといいですけどね…」
ボソッと呟くとミヅキにおでんをよそってあげた。