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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
抱っこ人形、教師になる編(第6章)
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うううう。

4時間目の時間だけじゃ完成しなかったので泣く泣くお昼ご飯を取りに行くのをエルク様に任せて資料を作り直す。

見れば見るほど、アイザック様の絵はうまかった。

と言うか丸書いて中に魔力って書くだけなのになんでこんなに違うの。

なんで私のまる魔力はまる魔ナに見えるの。

力と丸が被ってるからですねごめんなさい。

仕上げた時は自信作だったのに、見比べるほど酷さが分かる。


貴賓室で画像に文章を足す作業を、もちろんプリントアウトでやっているとふっつーにトーマが入ってきた。


「あ、今度それ俺にも教えろよ」


そしてふっつーに椅子に座った。いや確かにここ4人席だけども。

相席も入室の許可も与えてないんだけど。

じとーと見つめると、当たり前の様にご飯を食べだしたので諦めて私は作業の続きをする。


と、エルク様はランチを2つ持って戻ってきてため息をついた。


「よう、遅かったなエルク」


「いらしてたんですねトーマ殿下」


「ああ、トーマでいいぜ。親友の旦那も親友みたいなもんだろ」


「親友って誰」


「ん?お前」


違うし。と言いながら書類を片付ける。

違う種類のランチをふたつ持ってきたエルク様が「どっちがいい?」と聞くのでエルク様が好きそうな方を避けて選ぶ。

そして少しお行儀は悪いが3人でおしゃべりをしながら食事をとる。



「いやーしかしやべえわ。担任含めクラスのほとんどが『アレ』に取り込まれたぜ。俺が取り込めてないのがわかってるのか、もうガンガン話しかけに来るしモヤはどんどん酷くなるしで俺辛い」


そう言うトーマは入室時には彼の腹回りをモヤを通り越して雲がまとわりついていた。無論、即座に散らしたが。


「学園長や陛下に仰いで本格的に対処が必要そうですね…」


「むしろその辺が取り込まれたりしてーーー。」



まさかねーまさかねえ。

…………。

全員が沈黙状態になり、最悪の想定を全員が思い浮かべたのがわかった。


「リリア、教師たちにもあの魔道具を発動できるように改良を早くお願いします」


「はい、と言いたいところですけど絵心のせいで全部書き直しが痛くてちょっと着手に時間がかかりますねえ」


「ああ、放課後に時間をくれとアイザック様が。絵心のあるものを紹介してくれるそうですよ」


「わかりました」


放課後には特に予定はなかったっけ。

そう思うがトーマに本来は放課後モヤ払いを頼まれていたのを忘れていた。となると、放課後にモヤをまとった人が来るかもなあ。

そんなことを考えながらもダッシュで昼食を完食し書類の続きを書き出した。

食器を下げることもしてくれたエルク様には感謝しかない………




なおトーマは私が書いた資料を見てケラケラ笑っていた。









「ねえ、リリア。1年と6年も同じ授業にするのかい?」


「その予定ですが…」


午後の授業の準備中、不意にエルク様にそんな事を言われた。

教える内容に差を出さないつもりだがそれがどうしたのだろう。

きょとんと首を傾げると、優しく頭を撫でられた。好き。



「1年しか受講できない6年と、6年間学べる1年が同じだとおいおい不満が出てくる……と思う」


言ってることはその通りだ。

産まれ持ったタイミングとは言え、学べる機会が少ないのは不平等だろう。

だが、これは魔力操作は訓練の賜物だ。

昨日今日学んだばかりの者がすぐに使える魔法陣とは違う。


困った顔で見つめたらエルク様も困った顔で見返してくる。

そんな顔も素敵だ。


「多少詰め込んだとして、経験が無ければ意味が無いと思います


「うん。だから私としても正直リリアが誰かを触るのは嫌なんだけど……リリア、高学年は直接触ってフォローしてあげたらどうかな?」


「でもそれだと、口頭で説明する時間が取れません」


「うん。だからその場合は私とか補助教員が座学をするんだ。幸いリリアの資料の内容はしっかりしてるし一応補助をするにあたって魔力操作の基礎情報は叩き込んだから、私でも出来ると思う」


「じゃあお願いします」


正直に言おう。

教壇で先生をするメガネのエルク様(白衣を着てもらいたい)


見 た い に き ま っ て る わ!!!!


80人への握手会など負担にならんーーーーが、そこでふと気づく。

エルク様と同時進行で実技をかましたら、私見れないやん!

写真、むしろ録画したい。

エルク様の一挙一動をあますことなく堪能したい。

だがしかし………ん、待てよ?

現在カメラに使われている特殊魔石。これに画像保存機能をつけて連続で映写すればパラパラ漫画の要領で…

いやでも音声は……改造前の有形魔法は音を形に変える……出来る。出来るだと………!


有形の魔法陣の、記録の部分を触る。

少し考えて、前世と同じく外部記録方式にしようと決めた。

シャルマの魔力はそこまで上質ではない。無理をしたらすぐ壊れてしまうのでそちらの負担は最小限にしてーーーーーー私の魔力に最大限の努力をしてもらう。

記録本体はどうするか。魔石の中に部屋を分割に…出来なくはないけど苦労の割に枚数が取れないだろう。

となると……ネガだ!

そうだ初めのカメラはネガと言う記録媒体が別だった。

細長いフィルムに一コマ一コマ画像を記録していく。

魔力を薄く薄く伸ばして、丸めればサイズも大きくない……。



「というわけでネリア先生、ヴァン先生手間をかけますが2人で3クラスの案内をお願いします」


「いやそりゃ最悪学級委員を使うからいいけど……なあ、ガキなにしてんのさっきから」


「気にしないでください。またなにか作ってるだけなんで、授業までには帰ってきますよ」


魔力を限界まで薄く伸ばして、有形魔法で細長いフィルム状の魔石…魔フィルム?を作り上げる。

端っこを折ってみるとそれはパキッと割れたが巻くことはなんとか可能だった。


もう時間が無い。くわっと目を見開き全身に魔力をたゆらせ…全力で作成に集中する!


「おい!なんで何も無い場所から赤いリボンが出来るんだよ!」


「リリアですから」


行ける!行ける!

魔法陣の1本1本の回路を繋ぎ、フィルム(仮)に繋いで…………!

エルク様の初授業!フルタイムで記録してやる!!!









『という訳で、魔力の流れを感じることから始めます。ですが皆さんは6学年、授業を受けられる回数がほかの学年に比べて圧倒的に少ないです。ですので今回はキャロル先生に一人一人実技で魔力の流れを感じさせますので、それを覚えてください。キャロル先生、お願いします』


言われたとおり、端っこから両手で二人づつ。

手を繋いで相手の体の中の魔力を動かす。

すると驚きながらも生徒たちは『魔力操作とはどんなか』を知った。


サクサクと体感をさせていると不意に順番待ちの年上の令嬢にそっとハンカチで目元を拭かれた。


「あの、どうぞ」


困惑しながら手を離した瞬間でハンカチを受け取り歯を食いしばったまま軽く頭を下げる。

するとポロッとまた涙が零れたので、ハンカチで拭く。

濃紺のストレートヘアーの、私より頭がひとつ大きい……黒の猫目の令嬢。

後でハンカチは買って返そう。


「あの、キャロル先生?レディキャロルは泣いてらっしゃるのですが、実技は中断された方が良いのではないでしょうか?」


背筋を伸ばした令嬢は声を張り上げて、壇上の上のエルク様に直訴した。

まるでエルク様を糾弾するようなそれに少し慌てるが、気を緩めれば涙が滝のように溢れ出るから、必死に首を振った。


「こんないたいけな少女を泣かせたままなど、矜恃に反しますわ」


そう言うと令嬢は私を庇うようにそっと抱きしめて、エルク様との間に立って私を守るようにエルク様を睨みあげた。


違う、違うんだお姉さん。







ビデオ、間に合わなかっただけなんだ……


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