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あーあー王宮で誕生日パーティとか嫌だなあと思い、ハッと気づく。
王宮にカモネギ→強制婚約→その後能力や身分を笠に着た悪役令嬢化=乙女ゲームか!
ゲーム広告に出ていた転生令嬢系の物語を色々と思い出し今更ながら冷や汗が出る。
確かに私はスタートダッシュの末、魔法チートや知識を早く詰め込んだチートになっているが。
私は、私は、
RPGみたいにギルドで冒険wktk!
それとも領地育成でwkwkしたいんだ。
とりあえず、最近調子に乗ってきていた心をすっと引きしめ、明日の対策を考えながら眠りについた。
「まあまあお嬢様可愛ゆうございます」
「ありがとうえりーぜ」
乳母のエリーゼに白いフリフリのドレスを着せてもらい、赤髪もアップ盛りに盛ってもらった。
右腕に長い尾を絡めながら右肩にリェスラ。
長く綺麗な尾羽を魅せながら左肩に乗るイェスラ。
青、緑、赤、白の4色は派手だが不思議とバランスよく調和していた。
あれから1晩考えたけど、対策はさっぱり思い浮かばなかった。
のでとりあえず、どうしても嫌なら逃げ出して精霊と暮らそうと開き直って両親の部屋へと向かう。
「まあリリア!なんて可愛いの!」
「まるで絵本の王女様のようだな!」
「ありがとうございます母様父様」
部屋に入るなり父様に抱き上げられて、母様に頭を撫でられる。
久しぶりにあう父様の抱っこが嬉しくて、手を首に回して抱きつくとギュッと抱き返してもらった。
「父様、まいにちお仕事おつかれさまです」
「リリアも頑張っているとアイリスに聞いているぞ。リリア、領民のことを考えてくれてありがとうな。でも無理はするなよ」
「ふふふ、リリアには助けられているけれどもっと甘えても良いのよ」
なんて優しい両親なんだろう。もう大好きだ。
もし結婚するとしたらこの2人みたいな夫婦になりたいな。
「じゃあ、えっと…母様、だっこしてください」
そうオネダリをすれば。
優しく笑った母様はすぐに父様から私を受け取って抱きしめてくれた。
「リリア、そんな緊張することはないんだぞ」
「無作法をお見せする訳には行きませんから」
父様に抱き上げられながら、王宮の回廊を進む。
顔には母様と経営について論ずるときの背伸びした顔を貼り付けて。
顔を見合わせ困った顔で笑う両親に気付かず、私はフンと鼻息を荒くして気合を入れた。
「リリア・キャロル令嬢、アイリス・キャロル侯爵、ガイ・キャロル騎士団長の御到着です」
お城の侍従さんが私たちの名前を呼んで。
父様が片手に私を抱きながら、母様をエスコートしてその部屋に入る。
部屋は大きめの部屋で、ソファやテーブルなどが置いてあったが誰も居なかった。
あれれ?なんて気合いの肩透かしを感じていると
「こっちだガイ」
開いた外へと通じるガラス扉の向こうから父様を呼ぶ声が聞こえた。
「……」
外について、驚いた。
たくさんの花が咲いた綺麗な庭。
お家の庭にもたくさんの花は咲いていたがここまで綺麗じゃなかった。その美しさに目を瞬かせていると、不意に父様に地面に降ろされた。
「陛下、この度はお招きありがとうございます。こちらが娘のリリア・キャロルです」
はっと気づくと目の前には父様と変わらない年頃の男性と女性、それから三人の少年がいた。
王家一家がくがくぶるぶる。
怯える内面を一切出さず。
胸を張り背筋を伸ばして薄い笑みを浮かべ、ドレスの裾をもって頭を下げる。
「この度は素敵な庭園にお招きいただきありがとうございます。ガイ・キャロルの一人娘のリリア・キャロルにございます。右肩のは水竜のリェスラ、左肩のはシルフのイェスラ。どちらも私と契約を交わしてくれた友人になります」
シーンと静まり返る庭園。
腕がプルプルしてきそうなので、魔力を循環して体力を補強する。
まだか。まだなのか。
五歳児相手にマテが長すぎるんじゃないか。
腕だけじゃなくて綺麗な姿勢を保つために無理をしている腰まで震えそうになった時、ようやくお声が返ってきた。
「あ、ああ、すまない、楽にしてくれキャロル嬢。えっと、そなたは確か先日五歳の誕生日を迎えたの…だよ…な…?」
「はい、左様にございます」
踏ん張って顔を起こすと陛下は今更な質問を…王子たちと私をきょろきょろと見比べながらわかりやすく動揺しながらしてきた。