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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
完落ち編(第5章)
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7



やれやれとため息をついて書き物をやめたエルク様は隣に座って私を膝の上に乗せた。


「リリアの愛に溺れそうです」


「私は既にエルク様に溺れていますけどね」


「またサラッとそういうことを言って。でもわかってます。そんなリリアだから私は貴女の愛を疑わずに信じられる…」


エルク様の顔を見たいが、エルク様は後ろから抱き込み決して顔を見せてくれない。

泣き声じゃないから、泣いてないならとりあえず良いかなあ。


「私は産まれつき両親は居ませんでした。周りにいる人たちには大切にはされてましたが愛されていたかと言うと微妙で……だからですね、初めっからわかりやすいくらい真っ直ぐな好意を向けてくれるリリアが眩しい」


初めてあった時のあの衝撃。

心を破壊されるように、エルク様は私のど真ん中に突っ込んできた。当時はその内面なんて知らなかったけど、のめり込むように全てに好意を抱いていったんだ。


「好きとか愛とかよくわからないけど、リリアは居なくならないって信じられる。どんな我儘も軽く受け入れてくれるリリアが怖い反面ずっとずっと閉じ込めて一緒にいたいとも感じるけど……それは叶えなくて良いです。閉じ込めなくても、リリアは私のものですよね?」


「もちろんです旦那様」


キッパリ断言するとエルク様の体が震えた。

言うのも緊張していたんだろう。安心させるように撫でてあげたいが、とりあえず動けないので大人しく抱っこされておく。



しばらくの間黙ったエルク様に黙ってむぎゅーっされて。

気がつけばリェスラもイェスラもエルク様を両サイドから攻めるようにくっついてきていた。


ありがとう相棒に親友よ。君たちの優しさもエルク様には伝わっていると思うよ。


「リリアも、リリアの精霊も本当に私に甘いですね……」


『しょーがねーじゃんだってリリはエルク大好きだしー』


『まるで親子みたいに盲愛してるものね』


どうしよう、褒められている気がしない。

うちの精霊たちは本当に、いい性格してる。


「……私もできたら…」


「はい?」


「出来たら……イェスラとリェスラと、喋ってみたいですね…」


「……ろくなこと言ってませんよ?」


「それでも、彼らも大切に思っているので出来ることなら話してみたいですね」


全然全くオススメはしないけど。

よっぽどGPSや転移装置の方がおすすめ出来るけど、とりあえず目標は決めた。


「頑張ってはみます…」


「無理はしないでくださいね」


ふふふ、と笑ったエルク様は私をイェスラとリェスラのあいだに置いて元の机に戻って行った。

真面目に書類を書き込む姿を見てーーーーリェスラとイェスラを膝の上に置いて作戦会議をする。



「ねえ、そもそもなんで私は2人の声が聞こえるの?」


『うーんよくわかんないなー。でもあまり話せるってやつの話は聞かねえなあ』


『私はリリが初契約だからそんなものわからないわ』


私が特異だからか、なんなのか。

まずそこの解明からだ。

ちなみに普通の人にはイェスラの場合は鳥の鳴き声、私には鳥と言語としてのイェスラの声が聞こえている。


ピーピーイーィー(はらへったー)こんな感じで二重音声だ。

二重に聞こえるが、トーマの魔法みたいなのとはまたちょっと違う聞こえ方がする。


『そういえばリリはあのピンクの羽虫の声も聞こえたのよね?他のやつは?』


「ほかのは聞こえたことないなあ。母様とか父様の子は鳴き声しか聞こえない」


『あのときピンクの魔力吸ってたからかなー』


あーそれは当時私も思った。つまり、だ

契約主の魔力があれば聞き取れる、と仮説を立てる。

でも他の契約主には声が聞こえていないのだから、私の魔力か体質に何かがある、ということだ。


「風魔法で言葉を伝える魔法ってあったよね?あれって精霊が使ったら言葉は伝わるの?」


『無理だよー』


「じゃあ私が精霊の言葉を風魔法で伝えたら?」


『そもそも喋れないでしょ、精霊の言葉』


確かに。私に聞こえる言葉は精霊声だが、私は普通に人間の言葉を使っている。つまり精霊は人間の言葉を聞き取れるということか?喋れないけど。


難しい。でも他国言語とかそういう問題ですらないと思う。



「とりあえずあれだ。私の魔石つけた集音器を使って、それでイェスラの言葉を聞いてみようか」


『集音器ってどうすんだ?』


「言葉もようは風の振動でしょ?風を引き寄せる魔法陣とか…」


『それ、耳がゴーゴーしないかしら。普通の風音で』


めっちゃしそう。耳元で扇風機しそう。すごいうるさい未来しかしない。

しばらく迷って。1度部屋に戻ってイヤカフ取ってくる。

そして超超超濃密の爪ほどの魔石を作ってイヤカフに取り付ける。

そして魔石の表面に傷を入れる。


とりあえず試作、魔石つけただけイヤカフだ。

魔石から魔力が漏れ出ていたら、ラッキーで精霊の声が聞こえるかもしれない。


声が聞こえる手がかりの原理がさっぱりなので、とりあえずなんでも試してみるしかない。



それを椅子に座ったエルク様に取りつける。

書類の合間を狙って付けたおかげかエルク様は抵抗もせず笑って受け入れてくれた。


「リェスラーイェスラー喋ってー」


『りりの部屋にエルクの写真が既に30枚超えている』


『リリはいつでも試作品カメラを持っている』


「ちょっとなんの密告してるの!」


乙女の秘密を暴露するなんて最低だ。

聞こえたら恥ずかしいじゃないかと思いながらエルク様の様子を見るとーーーーーーエルク様は目を見開いて固まっていた。

え、嘘。まじか。


『あれー?これ聞こえてんじゃね?おーいエルクー』


『ちゃんと反応しなさいよ?』


「………聞こえて、ます…」


うっそまじか。魔道具史上初のただ魔石を填めただけだよ。

そんなお手軽でいいのかとエルク様の様子を窺いみるも、しばらく呆然としたあと嬉しそうに笑った。すかさずカメラをこっそり発動する。


「リリア、私の写真今何枚ほどあるんですか?」


きっちり聞かれてらー!

とりあえず、誤魔化すためににへらっとわらってイヤカフを没収しようとしたけれど

同じくにへらっと笑ったエルク様に伸ばした手を取られた。


そのまま引き寄せられて、おでこ同士を合わせてごっつんこして……。


「ありがとうリリア」


改めてお礼を言われた。その尊い笑顔で私はおなかいっぱいです。

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