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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
要らないSSRの利用法(第4章)
55/177

11



魔力のより濃い方へ行けば元凶にはあっさりたどり着く。


『魔法訓練場』の前には異国の兵士が倒れていた。


1番近くで1番きつい魔力を当てられ続けた割に、様子を見てみると意識障害以外の問題はなさそうだった。


さすが、魔国の兵士である。


そして訓練場の中に入ると





中ではピンク髪の少年がしゃがみこんで泣いていた。


「っ、りりあぁ…」


すぐに私に気づいたトーマの全身からは魔力は出ていなかった。

だけど、訓練場の中の魔力は受付拒否をしている私でも一瞬めまいがするほど濃かった。


「たすけて、りりあ、俺できない…」


「魔力、戻せないの?」


意識が飛ばないようにゆっくり近づきながら問いかけると困ったことにトーマはボロボロ涙を零しながら頷いた。


今回の問題の原因は簡単だ。トーマが濃い魔力を出しまくったのが原因だ。さすが魔国の王太子、内蔵魔力がとんでもない。


「操作、出来なくて…濃くしたらいけるかなっておもって、気づいたら部屋の封印壊れてて…」


「……おバカ。王太子でしょ?泣いたって解決しないんだから弱み見せないの」



トーマの頭にチョップを落とす。

トーマに吸わせるにも、教えるにもとりあえず泣いてちゃ話にならない。


「ほらほら、泣かない泣かない」


言いながら連続チョップを数回落とすと、思いっきりズズズズと鼻を吸う音がしてパシンっと手を振り払われた。


「いつまでやるんだよ。早くなんとかしてくれ」


偉そうなくせに頼む物言いに思わずぷッと笑うと、トーマの眉がつり上がって真っ赤になった。

ピンクの髪より赤い。目も赤い。子供丸出しな姿が、偉そうなとこも含めておかしい。


「ほら手を貸して」


くすくす笑いながら両手を出すと、怒りながらも素直に手が重ねられた。



手に集中してトーマの掌を通す形で空気中の魔力を吸う。



「……わかる?」


「わかる。なるほどそうか、こうやって動かすのか…?」


「ちょっと違う。こんな感じで…」


「なるほど。こうか」


修正をしながら試させてみると一瞬で理解したらしく、手を離してもトーマは無事に出した魔力を吸えたーーーーーが。


吸えるようになったが、問題がまた発生した。

うん、なんというか言い難いんだけど。


「おっそ」


「うるさい必死だ」


取り込むスピードがあまりにも遅かった。

そういえばフェルナンド様も苦労してたなと思いつつ、このままじゃ日をまたぎそうなので別の解決法を考える。


「とりあえず契約してる精霊に手伝ってもらえば?魔力好きなだけ食っていいよって」


「代わりに何を頼むんだ?」


「別に頼まなくていいでしょ。食べ放題食べてもらいなよ」


そんなこと考えたこともなかった。

そんな顔で驚いたあと、トーマはすぐに精霊を呼び出した。


『この浮遊する俺の魔力を食べてくれ。ああ、のぞみは食べてもらうことだ』


トーマの妖精は中級妖精のフェアリーと真っ赤な宝石が綺麗なカーバンクルだった。

もふもふの毛が気持ちよさそうだなー。


『食べきれないから、おともだちよんでもいい?』


不意にそんな声が聞こえて驚いた。

どうやらカーバンクルの声みたいだ。リェスラとイェスラ以外の精霊の声は初めて聞くのでびっくりする。

あれか、トーマの魔力を吸ったせいか?または濃密な魔力に囲まれているせいか。


『どうした?早くくってくれ』


『だーかーらー、友達呼ばせてってば』


思いっきり話が噛み合っていない。

見た感じトーマは精霊の声が聞こえていないみたいだ。


「リリア、精霊が食ってくれないんだが…」


「食べきれないから友達呼んでもいいか聞いてるよ」


「お前どこまで規格外なんだよ!?くっそ『城に漂う魔力で満足出来る奴らなら呼んでいいぞ』」


『わかったー!おーい、みんなー!』


「その規格外に泣きついて助けて貰ったくせにー」


トーマ憤怒の表情でギロりと睨むあいだにもカーバンクルとフェアリーが部屋中をふわふわと漂い瞬く間に魔力が薄くなった。

そして扉を開けて出ていくと、ちょうどすれ違いで人型イェスラがひょこっと入ってきた。


「リリー?もういい?」


「いいよ、おいでイェスラ。イェスラは漂う魔力食べないの?」


「俺グルメだから、リリじゃないとやだー。というわけでリリ、俺すごい頑張ったからご飯ちょうだい」


成人男性姿でもイェスラはイェスラで、サラリと追加報酬をせびられたがためらわずに魔力塊をあげる。

その胸元のブローチは魔石が1個もへっていなかった。非常食かわからないが、食べたくないのだろう。



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