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じっとその魔力を見る。ふわふわとした魔力は制御されている様子も無く、純粋にただよっているだけらしい。
だけらしいが、その密度の濃さに普通の人は確かに当たりそうだと思った。
だってこれ精霊魔法に使う魔力よりも断然濃い……それこそ、私が作る魔力塊よりも濃い。
なんとなく、わかった。
さてどうしたものか、と迷う。
多分私は、この中に入っても平気だ。
私に入らないようにこの魔力を操ればいいのだから。でもメレは無理だろう。
「どうにかなりますか」
「………イェスラ、城の人達をこの魔力から守ってさしあげることは可能?」
迷って迷って、とりあえず精霊に出来ることを聞く。
イェスラは目を細めて嫌そうに小さく鳴いた。
『出来なくも無いけど、すっごいしんどいよー。リリもやってわかったと思うけど他人の魔力弄るのはめんどくさいんだよ?』
頼めそうだけど、辛そうだ。
確かに人の魔力操作は通常の倍しんどい。
何かイェスラを楽にするか、やる気を焚き付けるものが無いか考えてーーーーー『美味しそう』そう言ったイェスラを思い出した。
「イェスラ、これあげるから頼めないかな?」
『それっエルクにあげるためのやつだろー!いいの…?』
「うん。また作ればいいし。気合いめっちゃ入れて作った上物だよ」
はい。と言ってポケットに入れっぱなしだったブローチを渡す。
しばらく迷ってイェスラは羽をパタパタさせていたが結局受け取って、光り輝いた。
ん?と思ったがまあ放置してたら光がどんどん大きくなって、中から薄緑の髪の青年が出てきた。その胸元には私があげたブローチ。
エルク様より歳上そうな彼がイェスラなのは何となくわかった。
「魔力操作は鳥のままじゃしんどいからねー」
「ありがとうイェスラ」
驚いて目を見開くメレとエルク様を一先ず置いといて、背伸びしてイェスラの頭に手を伸ばすとしゃがんでくれた。
のでなでなでと薄緑色の髪を撫でる。
すると、肩が軽くなった。
「イェスラばっかずるい。私にも頼ってよリリ」
ん?と思うと肩に乗っていたリェスラもいつの間にか擬人化していた。擬人化するのはいいんだけど、リェスラは髪と目が水色なだけで姿形は私と全く同じだった。
双子みたい。
「じゃあリェスラは魔力酔いが重そうな人から魔力を抜いてあげて。エルク様、リェスラと一緒に城の人の容態を確認して回ってもらってもいいですか?」
「構いませんが…それはイェスラと水竜ですよね?」
「そだよー。いっつもクッキーありがとなエルクー」
「リリの大好きなエルクだから1000歩譲って一緒に動いてあげるわ」
ぷいっとツンデレなリェスラが可愛くて、水色のふわふわの髪を撫でると嬉しそうに笑った。可愛いんだけど自分と同じ顔だからなんか複雑な気分になった。
「メレは多分中に入ることは出来ないと思うからここで人の侵入を止めてちょうだい」
「力及ばず、申し訳ありません」
「良いのよ被害者を増やさないのも大事よ。リェスラ、お礼は後であげるからね。今渡せなくてごめんね」
「急だもの、構わないわ」
「んじゃとりあえずやるよー」
私が何をするかは、あえて言わなかった。
エルク様はそれを聞きたそうにしていたけどリェスラに引っ張られて連れていかれた。
リェスラが私以外に触れるの初めて見たなあ。
そんなことを思いながら、私も城の中に入った。
私は多分1人の方がいい。目撃者は少ない方が彼ものちのち感謝するだろう。
そして真っ直ぐ、元凶の元へと向かった。