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「おいエルク、ここで魔法の特訓とか開発をやってもいいか」
「今日の私の仕事は殿下方のお相手ですのでどうぞ」
「というわけだリリア。エルクの許可は貰ったからそこで好きにしていいから俺の魔法特訓も手伝え、友達だろ」
まず内蔵魔力の特訓。
紙に書かれた魔法陣の上に魔力塊を置いて、陣を発動する。
「おい、聞けよお前!」
するとことりと赤い透明度のある石が落ちた。
それをイェスラもリェスラも興味深そうに見に来た。
「どう思う」
『美味しそう』
『リリの魔力ね』
ふむ、と思って紙にもうひとつ送風の魔法陣をプリントアウトしてそれに赤い石を当てたーーーーーーフワッと緩やかな風が出てきた。
これは内蔵魔力になる!!!!
「友よ!ありがとう!友よ!君の魔力の密度が足りてないからそんなんじゃ魔力塊にならないよ!イェスライェスラ、あれ取ってきて!ああどうしよう、どうしよう!」
『任せろ!魔素粉だな!』
「あ、あっちの試作品の箱も!!」
「なんだよくそありがとう!」
すぐに飛び出したイェスラを見送り、エルク様にむぎゅっとだきつく。
突然の奇行にもエルク様は動じずに、私の頭を撫でながら首を傾げた。
「リリア?どうしました?」
「エルク様、エルク様、大好きです!」
「ありがとうございます」
「俺の前でいちゃつくんじゃねえよ!」
「トーマーしゅうちゅーしゅうちゅー」
いつか内蔵魔力が成功した時のためにたくさん、たくさん魔道具は作っていた。
エルク様が望みそうな物を。喜びそうなものを。
喜んで欲しい。その一心で。
4年がかりの願いがようやく叶いそうなのだ。
イェスラが持ってきたものの中で迷わず小瓶のペンダントトップの魔道具と……少し悩んで、わかりやすく水を生み出す魔法陣が刻まれた魔道具を取り出す。
そして先程の有形の魔法陣は紙が壊れたので新しくプリントアウトしーーそれを見なれないピンク2人がおお!と声を上げてーー魔法陣の上で小瓶を持つ。そして小瓶に魔力塊を入れて魔法陣発動するとーーーー一瞬で小瓶の中に赤い宝石が出来た。
「エルク様、これつけてください!」
「は、はい」
大人しく私に言われるまま首には小瓶がついたペンダントを。
胸に水を生み出すブローチをつけて貰う。
「リリア?」
「エルク様、小瓶を触ってみてください」
そして
恐る恐るエルク様が小瓶に触れるとーーーーーーーブローチの魔法陣が発動し、目の前に水球が現れた。
目を見開くエルク様の前でどんどん大きくなっていく水球。
エルク様が驚いて小瓶から手を離した瞬間、水球はびちゃっと落ちて床を汚した。
しまった違う魔道具がよかったか、
と反省しながらエルク様を見るとーーーー
彼は呆然としながら、涙を流していた。
「え、エルク様!?」
慌ててハンカチを取り出して背伸びして彼の涙を拭うけれど涙は拭っても拭っても溢れ出した。
「あ、え、リリア…」
「な、泣かないでくださいエルク様」
喜んで欲しくて作ったのに泣くのは完全に想定外で。慌ててパタパタとハンカチで拭き続けると、不意にエルク様に抱きしめられた。
強く強く、今までにないくらい強く抱きしめられて。
「ありがとう、ござい、ますーーーー」
泣きながらお礼を言われた。
そんなの、こんなの
こんな喜び方、想像してなかった。
私も力いっぱいエルク様を抱き返した。
そんな私たちに気を使うように、3人はそっと部屋を出ていった。