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「いい加減謝ってるだろ!」
天然カップルと私たちに無視され続けたピンクがついに我慢の限界を迎えたのかテーブルを叩いて立ち上がった。
「なあなあ、2重詠唱気になるだろ?教えるし、エルクだったか?お前にも謝るし、なんならオレの嫁にしてやるから無詠唱教えてくれよ!」
「嫌です」
「だから僕が教えるってばトーマー」
「お前の教え方わからねえんだよ!魔力なんて見えねえし!」
その一言で一時期の皇子たちのように見えないが故に感覚が掴めないことを察した。
そしてそれと同時に見えなくても感覚を掴めていたフェルナンド様との相性の悪さも知ったが。
黙ってエルク様の入れてくれたお茶を飲んで、黙って茶菓子を食べる。
「うーん、見えるようには出来るけどー。僕のこのメガネ、アイラの髪色と同じで気に入ってるからあげれないからなー」
ちらっと見ないでくださいフェルナンド様。
それから喜んでいるアイラ様には申し訳ないが、アイラ様に出会う前から貴方ピンク色好きだったでしょ。
「俺は、俺は、魔国の王太子だ…!若ければ若い方が良いって言われる無詠唱、出来ないなんて言えないんだよ…!」
『リリただいまー』
「おかえりイェスラ」
ピンクのシリアスな空気をぶった切って、窓から入ってきたイェスラが私にすりすりと頭を寄せてからすぐにエルク様の方に乗った。
「おかえりなさいイェスラ」
そしてすぐに茶菓子をひとつとって慣れた仕草で餌付けするエルク様。
「な、なんで高位精霊が無器に懐いてるんだ!?」
そんな微笑ましい私たちの日常をピンクがそう突っ込んだ瞬間。
イェスラが風の塊をピンクに飛ばして、ピンクが椅子から落ちた。
「いい加減口に気をつけてください。精霊は人間たちと違って権力のしがらみはありませんから、お気に入りを害されたらそうなりますわよ」
「…悪かった」
不機嫌になったイェスラを抑えるためにも渋々忠告をすると、意外にもピンクは素直に従った。さすが魔国の太子、精霊というものはわかっているのだろう。
はあ、とため息をついてこれ以上の茶番は面倒なので終わらせることにする。
「トーマ様、私は来年から学園で無詠唱についての教鞭をとる予定なので教えを請いたいのでしたらどうぞ来年留学してきてください」
「ほう…!」
「学園では魔力を可視化するメガネを配布する予定ですので殿下の行き詰まってる問題もそれで解決するかと」
「そのメガネ、いますぐ買うことは出来ないのか」
「メガネの入手が御希望でしたらエルク様にどうぞ。現在可視化メガネの発注は国の依頼を受けたエルク様が受け付けていますので」
「頼めるかエルク」
作ろうとすれば一瞬だが、作りたくない私の意思がわかったのだろう。
ポンポンと頭を撫でられる。
メガネに関しては教材として準備してくれと学園に言ってあり、学園から国に依頼し、国からエルク様を通して発注が来ている状況だ。
国からの依頼は侯爵家と城を行き来しているエルク様が大部分を任されている。決して、私がエルク様の頼みを断らないからでは無いが…その辺はたぬきな陛下のすることなので怪しい。
「お一つであればすぐに在庫で用意は出来ますよ」
「そうか、ならば一つ……いや、千は欲しいな。可視化メガネとやらが魔力を見れるなら重要だ。これからフェルナンドがうちで無詠唱を教えていく上でも必要なので輸入したい」
「それはすぐに御用意出来ませんのでまず国交省の方にご相談ください。ですが、生産を増やせるように業者には頼んでおきますよ……リリア、どうかな?」
「……職人を増やすようには言っておきます」
「なんだ、くだんの魔道具職人の元締めもお前なのかリリア」
気安く呼ばないで頂きたい心底。
再び殺気立った私をなだめるようにエルク様がまたポンポンと頭を撫でてくれた。




