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たっぷりみっちり作戦会議をして、挑んだ翌日。
小広間には4人の職人たちが集められていた。
若いお兄さん、父様より怖い顔のおじさん、普通のおじさん、凶悪な顔のおじさん。
怖い顔の人達が大きめの丸いテーブルの席に着いている。
そこに混ざるのは怖かったけど母様の直々の依頼なので勇気をだして部屋に入る。無論両肩には心強い相棒と親友だ。
「初めましてリリア・キャロルと申します。お忙しいところお呼びだてして申し訳ありません」
4人の職人は、私の入ってきた扉をしばらくじっとみて、誰も来ないと判断してから私を見た。
「こんにちはお嬢様。僕達に何か依頼かな?」
明らかな作り笑顔を見せて話しかけてきたのは若いお兄さんで。
おじさんたちは全員こっちを見てもいなかった。
お兄さん含め全員、明らかに小娘に呼ばれたことを不快に思っているのがありありな様子で、誰も名乗りすらしない。
まあ、しょうがないか。と諦めてそこは開き直る。
「依頼と言っては依頼なのですがこちらのブローチを見てもらってもいいですか。この中の誰かの作品だと思うんですが」
そう言ってパッと出したのは、母様にこんな物が作れる侯爵家お抱えの職人よと差し出された大きめの細かい細工が丁寧に彫り込まれた紅玉が嵌ったブローチだ。
見せても誰も反応しない。
おっさんたちも一瞬こっちを見ただけだ。
「うんうん、こんなのが欲しいのかな?」
「いえ、これをこうして」
予め作っておいた魔素粉を魔法でブローチで包み込み
「こうやって」
それに無属性魔法の結界の魔方陣を焼き付け
「こんなふうになるのを作ってもらいたいんですが」
魔素粉を瓶に戻して、ブローチの魔法陣を発動させる。
「御協力いただけますでしょうか?」
なんてわかりやすいのだろう。実演販売をしてみせると全員がこっちを見てポカーンとしていた。
「そのブローチ、見せてくれるか」
「はいどうぞ」
「こりゃあ発動してみても良いか」
「良いですよ、今1番効果の高い粉を使ったので50回以上は発動できると思います」
どうぞ、とわたすと4人全員ブローチを表も裏も見て特に裏の魔法陣を見て触って何回も結界を発動させていた。
「これお前の作ったのだろうアジ」
「ああ、俺のだがこれは魔道具じゃなかったはずだ」
「どう見ても魔法陣はこれですね」
「……」
3人はあーだこーだ言いながらブローチの魔法陣について語る中
それまで黙っていた凶悪な顔の人が一言呟いた。
「で、俺たちに何をやって欲しいんだ」
その一言で全員が黙ってこっちを向いた。
かかった。
「最終的には量産して販売することです。ですが私のこの作り方は真似できる人がいないと思いますので皆さんと一緒に作り方を考えていきたいと思っています。協力してくれるならばこれの仕組みを説明させていただきますがどうしますか?」
「とりあえずこっちに座ろうかお嬢様?」
バンバンとお兄さんが空いた席を叩いてそこにちょこんと座る。
「これは確かにすげえと思うがな嬢ちゃん、こんな何回も使えるすげえやつお前1人で作って売った方が儲け独り占めじゃあねえのか?なんで俺たちに?」
「これは私が趣味でやっている事なので正直、誰かに作らせたりとか考えてなかったんですが…」
すっと息を吸う。
そうだ正直魔道具作成は全て私のしたいことをしたいようにするために作ってるだけで
母様みたいに領民に還元とか全く考えてなかった。
「母様に頼まれたからやってるが10割、愛する人への魔道具制作のヒントになるかな?が8割、物作りの同志に凄いでしょ!と自慢したいが2割の理由で皆さんにも作ってもらおうと思ってます」




