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毎日魔力の特訓をしていたら、いつの間にか空気を吸うように魔力の出し入れができるようになり。
毎日書庫で本を読んでいたら『言葉』よりもさきに『読み書き』が達者になり。
書けるようになった前世の漫画のストーリーとかの書きだしを始めて。
細やかな令嬢教育を受けだした三歳と数か月になったとき。
そうだ私はゲーマーだったと思い知った。
「かあさま。ごしつもんよいでしょうか」
「なあにリリア?」
一緒に晩御飯を取っているとき、私は読みふけっている書類からとても気になることができた。
「南のちはおいしいくだものがとれるとききます。しょうえんを増やせばちんぎんもあがり冬を過ごすことができるのではないでしょうか」
領地南の僻地の税の軽減の嘆願書は、毎年来ているみたいだ(書庫に纏められた書類にあった)
そして数年おきに軽減だけでは足らず援助金の申請もきている。
収穫量に不満があるのなら畑を増やせばいい。畑を増やしてとれる作物を増やしたら出来ることも色々と増えるだろう。農園げーの基本だ。
私の質問に母様は目を瞬かせてから
すっと表情を変えた。甘い母親から厳しい領主へと。
「増やせばいい、と言いましたがそれは誰が増やすのですか?森を開拓するのも人手や賃金がかかるのですよ」
「みなみのちは、冬は内職でかせぐとあります。それを侯爵家主導のこうきょーじぎょうにして農地開拓をすればよいのでは?しょきとうしはかかりますが、えんじょきんやほじょきんをかんがえたら数年で取り戻せるかと」
一瞬ぽかんとした母はすっと目を閉じた。
「リリア、その根拠は何ですか?」
「えっと、昔のかいたくにかかったひようと、ここすうねんの税の軽減からかんがえました。ふゆのしごとがあれば税の軽減やしゅうかくふりょうにさゆうされないかと」
しばらく無言で黙っていた母は
厳しい目で私を睨んだ。
「リリア、提出される書類はすべてが真実とは限りません。裏付けなくことを進めることは大変危険です。またもしその案が採択されたとして今まで内職で作られていた物資の新たな入手方法も考えないといけません。しかもあなたの情報は圧倒的に量が足りません。彼の地には色々と事情があるのです」
「はい…」
「ですがリリアが領地に興味を持ってくれたことは素直に嬉しいし、色々な情報を調べてきてくれたことも嬉しいです。リリア、後程南の地の資料を渡しますので一緒に対応策を考えてくれますか?」
「は、はい!かあさま!」
「ふふ、さあ食事を済ませましょうか」
思えばその時、私の運命は決まったのだ。
母様は私を領主の後継者として強く意識したんだと思う。
そしてそれらは、牧場ゲームと育成ゲームを兼ねていくような感じで
魔法とかと同じくらい、楽しかった。
「むー」
南の地の資料を母様に回してもらって、現状を知った。
南の地はここ10年ほど毎年税の軽減、と数年おきの援助要請しか私は知らなかった(見ていた資料がそういうのだけだったから)
だがふたを開けると、実のところここ数十年南に居ついた鳥形魔物のガガポ被害がひどいそうだ。
空を飛んでいるため有効な罠が無く、見張っていても高いところになっている果実を平気で持っていかれるようだ。
見張っていてもとっていくということはかかしはダメだろう。
となると鳥よけネットとかはどうだろうか。
うなれ、前世の記憶!日本の偉人たちよ!
たしかえっと…ナシ園とか…囲うようなネットに覆われていたはずだ!
ガガポに対してネットは効果があるのか。わたしはすぐに部屋を飛び出して、書庫の魔物図鑑を見に行った。
「ふむ。冬の間の内職で『鳥よけネット』をつくり、それを設置する。ですか」
「はい。資料によるとみなみのちのないしょくでは、麻袋をつくっているとききました。そのあさいとであらい目のネットを作りかじゅえんをおおうのです」
「…つまり材料はもともとあるもので自給自足ができる。うまくいけば、翌年の収穫に即座に影響するですね…リリア、とりあえずその鳥よけとやらがきちんと対策になるのか実験をしてから試してみましょう」
「ではかあさま…!」
「試用の価値はあります。凄いですねさすが私の娘です」
ガガポの生態系、どんなものなのかの絵、光や空気を通す形状のつくりかたから素材までを書いたまだまだ荒い原案書。
それを受け取った母様は優しい母親の顔で私を抱きしめた。