10
ファサー
「あら涼しくていいわね」
ファサー
ファサー
ファサー
ファサー……
真顔で魔法陣起動した母様はすぐに魔法を切り、また起動を繰り返して。
10を超えたところで眉間にシワがより。
20を超えたところで口も引き締まり。
50を超えた時はまた頭を抱え込んだ。ちなみに記録は72回で壊れた。
パキィンと割れたブローチの心配よりも母様のご機嫌の心配で、顔色を伺うも頭を抱えていた。
「リリア、こっちに来てくれる?」
「はい」
おいでおいで、と手招きをする母様に近づくとそのままお膝の上に抱っこされて頭の上に母様の顔が乗っかった。
そしてもう一度わかりやすくはあ。とため息が出てきた。
「リリアしばらく私の仕事の手伝いはしなくていいわ」
「母様っ!?なぜっ」
「最後まで聞きなさい。リリアこの魔法陣はすごいわ。既存の高級魔道具でも使用回数は精々10回だもの。これは今までにない画期的な発明になるし…これがあれば、精霊魔法だけでなく魔法陣魔法に頼る人も増えるでしょう。そしてこれがあれば日照りの時は水を作れるし、辺境には結界を展開し続けることも出来るでしょう」
日照りの時の水…と思い浮かべて蛇口あったら便利だな。
パイプで片側に魔法陣を焼き付けたもので封をすれば簡単に出来そうだ。
それに結界と思い浮かべて、父様は火属性の精霊持ちで守りは弱いから結界発動の何かをあげたら喜ぶかな、何て思った。
どちらも簡単に作れるものだ。
「故にリリア。しばらく仕事の手伝いは良いから一般人にもこれを作れるようにしなさい。そしてそれは侯爵家お抱え品として王家へも献上し、販売するつもりなのでそう思いなさい」
「ふぁっ」
「これは一刻も早く誰でも作れるようになった方がいいレベルのものです。明日には侯爵家お抱えの職人を呼びますから職人たちとーーーー何とかしなさい。あなたは子供なので、プライド高い職人には侮られると思いますから」
ひとり好き勝手にやるのとは違い…一般人にも作れるように。これは難易度が高い。
どうしよう、きつい。
頑張って量産するから許してくれないかな…と了承しないで黙っていたけどーーーーーーしばらく硬直状態が続き、渋々と頷いた。
「頑張りなさい、リリア。この結果が出たら貴女には話があるわ」
最後に母様はそう締めくくって、私を部屋から出した。
話ってなんだろう。予告されるとなんだか怖いな。
怯えながらも私は職人たちが普段どうやって金属製品を作っているのかを確認しに書庫へ資料を取りに行った。
母様が求めるものをまずまとめよう。
・一般人に作れること
・恐らく一般家庭でも使えるようなもの
・量産可能なもの
とりあえず思い浮かぶのはこれくらいだ。
まず一般の金物職人について調べた。
我が国のアクセサリーなどの小物は一つ一つ手作業で彫っているみたいだ。
だがこれは中々きついと思う。
私基準で言っている訳じゃないが先程ブローチに刻んだものは…本当に小さいのだ。小さくて細かで、肉眼でやっと見える複雑な文様。
それを彫れって言って量産するのも辛いのに…実際は金属を溶かして形取る。
彫るのも辛いのにそれを溶かして作るなんてもってのほかだろう。
それを、量産。
一般家庭でも使えるとなるとコストも大事なので魔法陣は多少大きくても行けるが小ささも大事だ。
書庫で調べれば調べるほど頭がこんがらがって。
とりあえず書類を部屋に持ち帰って、その日はイェスラとリェスラと話し合いながらみっちり作戦会議をした。




