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貴族向けでもなんで良かったけど、とりあえずオススメされたエリアに一緒に行ってみる。
「これは台座に光魔方陣を埋めたペンダントでな、これがサンプルになるんだがこうやって輝くんだ」
「きれいですねー」
そう言って実演してみせてくれたのはガラス玉が嵌められたペンダントだったが。
なるほどただ光を放つだけなのになんか綺麗だ。
はっ…この技術を転用して映写機風写真とか良いんじゃないだろうか。候補のひとつに入れよう。
「こっちは最近人気の商品でなこの小箱には風の魔法陣が書かれていてここにお気に入りの香油を垂らして発動すると全身に香油の香りが纏えるって代物だ。社交場でよく使われてるぜ」
「これは見た事がありますね」
ほえー。ただの香水じゃダメなんだろうか。
よくわかんないけどこれは興味ないな。
他にもなんか色々と実演も混ぜながら説明をしてくれたけどなんか、実用性にかけるというか。さすが貴族向けだなって感じでちょっと萎えた。
特に欲しくないけど、ここまで接客されたらなにか買わないと行けないかなと思いふと目に止まったそれを見る。
それは黒いペンだった。
まるで万年筆見たいな見た目で艶やかな黒色でーーー蓋の縁どりが金色だった。
よくあるペンの色だろうが、それに惹かれて手に取ってみる。
「お、それに興味があるかい。そいつも人気商品でね、なんとこれは魔素水インク対応のペンなんだ。間違って魔力を込めても中の魔素水まで魔力が届かないから誤爆をしないで済むぜ」
効果は、割と興味ない。
でもこれをエルク様に使って欲しくてーーーー。
「あの、これくだ「毎度ありいいい!今包みますねえ」」
これ下さいと言おうとした時には、
エルク様が既にお金を払っていた。
ヒョイ、とペンは店主が梱包するために持って言った。
「なんで買っちゃうんですか」
「え?欲しかったんじゃないんですか?」
「せっかくエルク様に似合うと思って、いつもお世話になってるプレゼントにしようと思ったのに」
お給料は護衛にちゃんと持たせている。
少し高い貴族向けのペンではあるが余裕で買える値段なのに。と、ムッとしていたけれど。
「私は魔道具を使えないから意味ないですよ」
そう言ったエルク様は
寂しそうに笑った。
その笑顔でハッとする。
魔力がないこの人を魔道具屋に連れてくるなんて、無神経だった。
大多数のひとが大なり小なり魔力を持つこの世界で。
魔力を持ってないんだ。
そこまで考えいたって、さあっと血の気が引く。
私は今までこの人の前で
何度無神経にも魔法の話をして。魔法を使った。
「…ごめんなさい。すぐにお店出ましょう」
「え、大丈夫ですよキャロル嬢。生まれつきのことなので気にしないでください。貴方の魔法の話は楽しいので今まで通りお願いします」
情けない顔を見せたくなくて、しがみつくとポンポンと頭を撫でられた。
そして約束するまで、ね?と重ねられた。
「わかり、ました…」
カメラなんて、後回しだ。
論文も、神話もどうでもいい。皇子は元からどうでもいい。
絶対に、絶対に。
エルク様でも使える魔道具を作ってみせるーーーー!
「はいお待たせしました。って仲良しですねえ」
「ありがとう。ではまた」
「はいはい、またのご来店をお待ちしてまーす」
そして店を出てふと気づく。
「エルク様、鉄製品に魔方陣を書き込むと何回ほどで壊れるかわかりますか?」
「鉄、ですか?そうですね…鉄の質にもよりますが2回から5回の間ですかね」
あ、やっべ。
皇子たちにあげためがねやっべ。
その日の夕方。
城でマジ泣きしたレナード皇子とフェルナンド皇子に呼び出され5本分のメガネの作り直しをさせられた。




