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「キャロル嬢」
「エルク様っ!」
夕方が近くなると、エルク様が迎えに来てくれた。
この3ヶ月。週一でキャロル家に来てくれて、陛下たちに教えるための城の往復もエルク様がしてくれて。
私は完全に落ちていた。
座っていた椅子から立ち上がり駆け寄るとそのまま抱き上げられて。幼女役得と思いながらぎゅーっと首に手を回して抱きつく。
『リリーおつかれー』
「イェスラもお疲れ様」
そんなエルク様の肩にはイェスラが居る。イェスラは私が城にいる時はよくエルク様と一緒にいる。エルク様に懐いたと言うより私のために、エルク様と一緒にいてくれてるようだが。
「エルク様もお疲れ様です」
「キャロル嬢もお疲れ様です。殿下方、彼女を頂いてもよろしいですか」
「ああ、今日もありがとうリリー」
「アイザック様はもう少し多めの魔力を固める特訓をなさってください。レナード様は集中を覚えてください。フェルナンド様はそのまま魔力塊を出し入れする特訓を続けてください。ジュゼ様は体内の魔力を安定して出せるようにしてください。1度に出す量のムラが大きいです。カースティン様は密度を濃くする特訓をお願いします。ではこれで失礼致します」
全員にダメだしと言う名の宿題を与えると、全員がありがとうございましたと頭を下げた。
それを見てからエルク様が歩き出す。
「皆さんの様子はどうですか?」
「そうですね、フェルナンド様がいちばん上達されてますが全員とても上手くなってきています」
現状フェルナンド様が私が1番初めに固めた魔力になってきた。
出し入れでつまずき今は消費魔力の方が大きいが、楽しそうにトライしていたので次にあった時はさらに上達しているだろう。
「そうですか…ところで彼らは何故みんなメガネをしていたんですか?」
「魔力を目で見たいと言うので可視化の魔方陣を焼き付けて差し上げました。ねえねえエルク様、可視化の魔方陣を焼き付けメガネとかいいと思うんですがどう思いますか?」
「そうですね…冒険者に売れそうですね。今度街に視察で出た時に聞き取りしておきますね」
「ありがとうございます」
ふと気づくと帰り道と違っていることに気づいた。
どこへ行くんだろう。と思っていると何処かの部屋に着いたらしくエルク様が片手に私を抱き直してコンコン、とノックをした。
『入れ』
廊下で聞こえた声でうへえとした通り、中には陛下がいた。
エルク様ごと陛下の机の前に連れていかれる。
「リリア嬢、今日もお疲れ様。息子らに話は聞いているが魔力操作の方はどうだ?」
「全員安定して学んでらっしゃいます。習うより慣れろ、なものですので皆様個々できちんと復習していらっしゃるのがわかります」
「そうかそうか。やはり大人よりも子供の方が飲み込みはいいようだな。それはそうとリリア嬢、おぬしの母上には話は通したのだが…」
なんだ、本題なんだ。
母様が居ないので丸め込まれないように身構える。
「リリア嬢、おぬしの功績はとてもすごい。この論文だけでもすごいが息子たちでこの論文の裏付けは取れている。これは画期的なものだ、が…」
「はい…」
「正直スゴすぎる。本来ならいますぐ賢者の称号を与えたいところだが、発表と称号はしばらく待って貰えぬか」
ん、とつまり。
母様の予定通りですね。なら何も問題ない。
「構いません」
「うちの息子がある程度無詠唱をものにしてからこの論文は発表しようと思う。それでいいだろうか」
「詳細は母様にお願いします」
「わかった。ああそうだ、これが今月の給料だ」
「ありがとうございます」
じゃらりと金属音がする袋を貰って抱え込む。
話はそれだけだったようで書類に囲まれた陛下は仕事に戻って私とエルク様は部屋を出て今度こそ帰路につく。




