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おっかしーなあ。
賢者になって名声を得て
神話を売ってお金を得て
領地経営で安定を!これで愛人囲っても大丈夫だよエルク様!
そんな予定だったのだけど何故こうなった…。
「フェルナンド様それを現状維持で。アイザック様、レナード様、そこにはもう魔力はありません。初めからやりなおしで」
アイザック、レナード、フェルナンド皇子に魔法を教えること3ヶ月。
初めはよかった。すごくよかった。
毎日寝る前に魔力放出して使い切って、所持魔力の底上げをしといてください。って言っておうちに帰れたんだから。
「おいリリーわっかんねえよ!また魔力見えるようにしてくれよ!」
「レオ、リリーの負担になるようなことを頼むなよ」
「りり〜、これでいい〜?」
「はい。フェルナンド様その調子です」
ぶうたれる我儘とそれを宥める長男とマイペース三男。
歳が近いせいかこの三兄弟はとても仲が良かった。
だがしかし気軽に『リリー』と呼ばせることを許可した覚えはない。
そもそも名前短いんだから普通に呼べばいいでしょうが!
苛立ちを無表情に隠しながら、レナード様の顔の目の前に手を出す。
「な、何するんだよ」
えーっと可視化の魔法は…
魔力塊で可視化の魔法を刻む。
これは確か罠などがないか確認するための魔法で、シーフなどが可視化の魔方陣が書かれた布をよく持っていると聞いた。
そうだ。可視化の魔法が刻まれたメガネとか売れるんじゃないかな。
布よりコンパクトにできたら持ち運びやすいし、目の前に展開できたら少コストで広範囲でみれるし。
「うわっなにこれすげえ!」
「空に見えるのはこの城を守る魔法陣と、国を守る魔方陣ですね。しばらく見えるのでそれで練習してください」
「わかった!ふん!って、まじかよ俺の魔力拡散はえええええ!」
いや待てよ片眼鏡なんかでもいいんじゃないかな。
ポケットに収納可能で何よりエルク様に似合う…!
そこまで考えて、アイザックとフェルナンドがじーっと私を見ていることに気づいた。
「なんですか…」
「あにうえばっかずるい、おれもー」
「私もあれをかけてもらってもいいだろうか」
「……どうぞ」
三兄弟には初めの方で、私の魔力を見えるようにして見せたことがある。
それで、の要望だったのだろうがそもそも三兄弟と私では魔力の感じ方が違うようだ。
魔力を上手く感じられないから、魔力が霧散しても気づかない。
なるほど、目に見えない物と言われても困るなと反省して近くにいた侍従さんを呼ぶ。
「如何しましたか」
「すみません大至急子供用のメガネを5つほど用意してもらえないでしょうか」
「メガネ、ですか…」
「レンズはなくて枠だけでも構いません」
「ご用意致します」
ぺこりと頭を下げた侍従さんが下がると
侍従さんが去っていった方向から護衛を連れた一団が、来た。
「遅くなって済まない」
「すみません」
ソレは今年10歳になり、学園に入学したという公爵子息ジュゼ・シュミットと宰相の息子で侯爵子息のカースティン・ゼルディスだった。
「…どうぞこちらへ」
なんということは無い。
陛下は息子3人に教えてくれと言って言ったが。
土壇場で、偉いとこの息子が2人ぶち込まれただけのことである。
あーもうやだなー!
でもこれだけの逆ハーレムの状況だが、5人の子息たちは全員真剣に魔法を教わりに来ているだけだった。
てっきり折り損ねた婚約フラグかと思ったが、陛下がエルクとリリア以外の婚約は認めないとまで発言したらしい。
皇子たちがダメでもエルク様も王家だしね。王様としては他国もだが他家にも渡す気は無いのだろう。