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これにて連続更新は最後になります。
あ、ぼーっとしてた。
慌ててシャキッとして母様達を見る。
「うむ、本人の意思がここまでであるのなら認めぬわけには行かないだろう」
「そう言ってくださりありがとうございます。リリアは我が娘ながらとても利発で賢いので…意にそぐわない婚約を強制したら逃げ出して一人で冒険者にでもなってしまいそうで…」
心配で心配でたまらない。
片手で頬を押さえてそうため息をついた母様は、そっと紙の束を陛下に渡した。
「うむ?…む………」
それをパラパラめくる陛下の表情が疑問から真顔へ変わっていく。
そして読み終わったあと、真っ直ぐに私を見た。
「キャロル侯爵よ。これに書かれていることは事実なのか」
「私はそれを出来ませんのでわかりませんわ。けれど娘は無詠唱で魔法も使えますし色々とすごい魔法も生み出してますわよ」
「キャロル嬢、魔法を見せて貰えないか」
見せろって、何を。
できる幅が多すぎて迷ったけれどとりあえず昨夜散々やった氷魔法でぱっと花を模した氷を作る。
それをパッパっと違う花にしたり葉っぱにしたり、ちょっと気合いは必要だったけど王家の紋を作ったりする。
最後に四角い氷にして、それを炎魔法で包み込む。
炎の中で溶けていく氷…水になり、蒸発して跡形もなく消す。
「こんな感じでよろしいでしょうか」
「まことか……これはとんでもない天才だな」
「でしょう?うちの子は本当に凄いんですわよ陛下。この歳で私の仕事の補佐もしてくれるんですから」
「魔法だけではないのか……ますます皇子達の婚約者にしたいのだが…」
「うふふ、わかっておられないわね陛下。この子がその才能を伸ばし、それを国に還元するのはリリアの望むことをさせているからですわよ。嫌がることなんてしたらリリアを欲する人達なんて国外にも居るでしょうから、逃げられますわよ?」
「功績と引き換えに自由か。それで、具体的な無詠唱の方法のページを抜いて渡したのか」
「確約頂けたら差し上げますわ」
なるほど。情報を小出しにして交渉をするのか。
手札は何枚あってもいいから論文もたくさん作ろうと思う。
神話に、カメラ作りに、領地経営のお手伝いに、魔法研究に論文作り。
忙しいな、どれからやろうかなあ!
「ーーーーリリア嬢。おぬしとエルクの婚約はわしの名の元に認めよう。それで一つ頼みたいのだがこの論文の魔力操作…余でも出来るか?」
「わかりません。私は言葉よりも先に魔力操作が出来てしまったので…逆に私は言葉に魔力を載せることは苦手です」
「陛下、付け足させて貰いますとこの論文…今まで普通に精霊魔法を使っていたものには辛いかもしれません。私も試してみましたが魔力を体の外で維持することは未だ出来ません」
「…ふむ、天才ゆえの成果か未知ゆえの成果かわからんな…リリア嬢。婚約を認める代わりではないがわしの息子達に魔力操作を教えて貰えないだろうか。もちろん褒美も出す。この論文に無詠唱魔法。これはこれからの世を大きく揺るがすものだ。わしもやってみるが息子達にも教えたいのだよ。幸い息子たちはまだ魔法教育は受けておらん」
お断りしたい。婚約フラグ回収は良いけど、私はやりたいことが多すぎて時間が無いのだから。
全力で嫌だが…
魔力操作が出来る人が増えることは色々な可能性を切り開く意味ではいいことだ。
初期の労力投資というか…嫌だけど、術者が育てば私の先生役も免除になるだろう。
「わかりました。とりあえず今回だけは」
「ありがとう、恩に着る。というわけだ、ザックにフェル。そなた等は全力で無詠唱魔法を覚えよ!」
私はエルク先生の生徒になりたいのに!
なんで皇子の先生にならないといけないんだ……。




