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本日数話更新しております。本日更新の1話目は8になります。
内心はともかくとして、表面上は仲良くしながら部屋に入ると。
凍えそうなくらい寒かった。
「え?」
「エルク様下ろしてください」
下ろしてもらって、慌てて冷気の元へ行く。
冷気の元はベッドで、ベッドの上の布団には霜が張っていた。
でもそこには何もいない。
はて?と思いながらベッドの下に潜り込むと、そこに私の精霊たちはいた。
『あー…りり』
ちら、とこっちを見て
リェスラを見て、ぴいと鳴くとイェスラはベッド下から出ていった。
『いじめてやんなよ。あいつ、お前が大好きなんだから』
「うん、ごめん」
這いつくばってずりずりと背を向けて冷気を発するリェスラの元まで行く。
『……』
「リェスラ、朝は突然掴んでごめんね。痛かったよねびっくりしたよね」
『……私は水竜よ。リリに掴まれたくらいなんともないわ』
痛みなんか無いと言うようにパシンと尻尾が床を叩いた。
「リェスラ…おいで」
ごめんねと気持ちを込めてリェスラの背中を撫でる。
ビクッと驚いたリェスラは…呼び掛けに反応して速攻で顔面に飛びついてきた。
『りりいいいい、ごめんなさいいいい、あたし、あた、ケガさせ、ふええええええ』
「完全に悪いのは私だから。リェスラは悪くないよ」
『でも、血が、血がいっぱい…』
狭いので横向きになって。
顔に張り付いたリェスラをべりっと剥がして両手で抱きしめる。
「大丈夫、すぐ治るよ」
『いたかった、でしょ?』
「リェスラも痛かったでしょ?」
『りりぃぃぃぃぃ』
きゅーきゅー泣いて鳴くリェスラを抱えたまま、もぞもぞと後ろ向きに這い出でる。
下から出るとベッド脇にエルク様がしゃがんで心配そうに見ていたのでニコッと笑ってから手の中のリェスラをなでて、慰める。
しばらくすると『きゅぅ…』と鳴いて、リェスラは眠りに落ちた。
『リーリ。おまえなー、リェスラずっと怪我させたって泣いてたんだからな』
「うん、ごめん。イェスラもありがとうね」
リェスラを撫でながら、片手を出すとそこにイェスラが止まった。
イェスラをリェスラの横に並べて一緒に撫でる。
「仲いいんですね」
「この子達は親友ですから」
「羨ましいです」
どさ、と隣に座ったエルク様は珍しそうに私の手の中の精霊を見る。
そうか、魔力がないから精霊と縁がないんだなと思い
なんか自慢みたいに見えちゃったかなとオドオドするがエルク様珍しそうにじーっと二人を見ていた。
そんな視線にたえきれなくなったのか。
ピィ鳴いて羽ばたいたイェスラが……エルク様の肩に止まった。
精霊は基本契約者以外と触れようとしない。命令されれば仕方なく…ぐらいだ。
それも高位精霊になると顕著で、特にリェスラは私以外が嫌いだ。
イェスラはそこまでではないが珍しい行動に目を瞬かせる。
エルク様も驚いていた。
『りりー伝えてー『俺たちのお姫様、大事にしろよー』って』
「え、やだ恥ずかしい」
『なんだよもう、いーじゃんかさー』
文句を言いながら、イェスラがまた鳴くと
ふわりと白紙の紙がエルク様の前に浮いた。
それにイェスラが文字を焼き付けていく。
〔俺たちの姫さん大事にしてくれるなら、ついでにお前も多少助けてやんよ〕
「…大切にします、ありがとうございます」
その文章を読んだ時
エルク様は何故かふいっと反対側を向いた。
魔力が皆無ゆえ精霊と交流したことがないエルク様にとってこの文章が産まれて初めての精霊との交流で。
彼が感動のあまり涙目になったことを、私はさっぱり気づかなかった。
『ぴぃー』
気づいたのはエルク様の肩で楽しそうに笑うイェスラだけだった。




