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「誰か!キャロル嬢がお怪我をなされた!手当てが出来るものをお願いします」
慌てたエルク様が使用人を呼び
首に巻いていたスカーフを傷口に巻いてくれる。
しゅるりと、首からスカーフを外す仕草がこれスチルですかバリに最高で血の気が昂り出血がましてスカーフを赤く染めあげる。
『リリ、リリ、やだ本当にごめんなさいごめんなさい』
『リェスラ落ち着け!リリの血を止めろ』
慌てふためく精霊たちが傷口に近付き一生懸命何かしてくれるが私はもう限界が近かった。
萌えすぎてやばい。
なんだか頭もくらくらしてきた。15歳でこの色気とは、エルク様恐ろしい子!
興奮だか痛みだかわからないがポロポロ涙がこぼれてきて、すると慌てたエルク様が駆け寄ってきてめちゃくちゃ頭を撫でてくれた。
あ、ああああ
な、なでぽおおおおおお!
やめてエルク様、このなでなでは落ち着くどころか興奮MAXだから!私の心拍数は48万です。
「大丈夫ですよキャロル嬢。すぐにお医者さんに治療してもらいますから、もうちょい頑張りましょうね」
いやもうリアル医者よりエルク様とお医者さんごっry。
「ふぇ、え、えっく」
興奮とテンパリが最高潮に達して、それによりエルク様があわあわと頭を撫でてより興奮しての悪循環を繰り返していると
「リリアー!お、お、お前ー!」
バーンと部屋の扉が吹っ飛んで、
部屋の真ん中にあった机にあたり、昨日寝落ちるまで書いていた神話のコピーが大散乱して、
怒り狂った父が飛び込んできた。
「どけっ、リリア大丈夫か侍医を今呼んだからな」
父様はエルク様を突き飛ばし私の前に来ると、スカーフを外して状態を見てきつくスカーフで傷口を縛りあげて私を抱き上げた。
「ふぇっ、えっ、とお、さまぁ」
「リリ、落ち着きなさい。水竜に出血を止めてもらいなさい」
『やってるわよ!』
そして突き飛ばされて床に尻もちをつきながら呆然とするエルク様をギリッと睨んでから、私は別室にさらわれた。
名残惜しくてエルク様に伸ばした手は当然届かなかった。
「まあ2週間もすれば傷口も残らずに消えるでしょう。バイ菌が入らないように日に2回は薬液で消毒するように」
「わかりました。ありがとうございます」
母様の精霊に呼ばれて駆けつけてきたお医者さんは治療を終えて出ていった。
すると怒り心頭の父様が「俺はあいつを認めない」と恨み憎しみが詰まった声で呟いた。
「あらあなたまだそんなこと言ってるの。貴方のはリリアが盗られそうで面白くないだけでしょ」
「だが!リリアはあのガキが絡むと怪我をしてばかりだ!」
「王家の方に対して不敬罪ですわよ。まあリリアが怪我をしてはいますが…」
申し訳なさでしょんぼりしてる私を見て、母様はため息をついた。
有能な母のため息は自分の未熟さを痛感して辛い。
「リリア、正直に言いなさい。この怪我は気絶と同じように貴女の暴走の結果かしら?」
「はい、そうです…」
「ならばエルク様に罪はないわね。悪いのはいい子に出来なかったリリアよ」
「リリアはいい子だ!」
「親バカで目をくもらせないでちょうだい、貴方」
ビシッと父様を黙らせると母様は真顔でもう一度私と向き直った。
「リリア、貴女は侯爵家令嬢よ。まだ子供でもあなたは貴族なの。周りに与える影響をきちんと考えて行動なさい」
「はい…」
「まあ反省してるなら良いわ。さあ貴方もリリアも朝ごはんを食べましょうか。エルク様も待っているわよ」
予定変更で10月12日は12時から2時間後との更新にします。




