3〈面白い人間〉
『ほんと、頑張りすぎよリリは』
『俺がこいつ見かけた時からそうだったよ』
眉間にしわを寄せたまま眠りについたリリ。使用人たちは眠っているリリに笑顔をこぼしてから起こさないように静かにそのまま部屋を片付けて出て行った。どうやら朝まで寝かせるつもりらしい。
リリに出会ったのは実はリリが産まれてすぐだった。
心地よい濃い魔力につられて行くと、そこでは赤ん坊が魔力を放出していた。
なにやってんだ、この人間。
初めはそう思って姿を隠してみていたけれど、毎日魔力が切れるまで放出していた赤子はやがて濃密な魔力塊をつくりだした。
美味そうなそれにちょっかいを出そうとすると、その魔力塊はすぐに赤ん坊の体に引っ込んだ。
魔力塊を出して引っ込める赤ん坊にちょっかいを出して
初めて魔力塊を食べた時は俺はそのうまさに感動した。赤ん坊は突然消えた魔力塊にしょんぼりしていたが。
その後も毎日尽きるまで魔力塊を出したり操ったりをする赤ん坊。
無垢なその力は日々増していった。
こいつ、精霊みたいだな。
そんなことを思ったのは見守ってから数年がたってからで。
精霊は魔力を変質させて色々な魔法を使う。
その特性上精霊は使える魔法を限定される。人が生み出した魔法陣とやらは魔力さえあればだれでもどの魔法も使えるようにした魔力変化の改造版のようなものだ。
魔力を色々と操るのは精霊のお家芸だ。
人だから魔力を変質出来るはずないのに、魔力を色々と操作するその姿はまるで精霊の子供のようで。
『なあなあ、お前の魔力旨いのな。俺と契約しない?』
ちょくちょくつまみ食いをしていた俺は、気づけば小さな少女に心から囚われていた。
その後楽しそうに人に使役される俺を見て、水竜までもなんか懐いたけど。
強い精霊の加護を手に入れても、リリはリリのまま。
毎日魔力の限界まで色々と魔法を使い。今は魔力操作× 魔法陣を組みあわせて精霊顔負けの魔法を使うまでになった。
わずか数年しか生きてないのに、末恐ろしい。
『全くもう、無理しないで欲しいわね』
リェスラがしっぽの先をリリの額に置いて、リリの体の血の流れを整えーーーしばらくすると眠るリリの眉間のシワが消えた。
『手のかかるお姫様だよなあ。そこがいいんだけどな』
くつくつ笑いながらリリの頭に擦り寄り赤い髪に顔を埋めながらーーーリリの身体に風の通り抜ける魔力を流し込み、体に溜まった疲労や頭痛を取り去る。
リリはいつも魔力で強化して疲れを飛ばすが、魔力にはこんな使い方もあるんだぜ。
まあ教えたらより無茶をしそうだから俺もリェスラも教えないがな。
表でも裏でも、俺たちの大事なリリをサポートしないと。
さて、リリの想い人。あいつ本気で仕事以外してないんだけどどうやって情報集めるかなあ。
下位精霊を使うかな。
そんなことを思いながら俺とリェスラはリリに寄り添い眠りについた。