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物凄く仕事が忙しくなってしまったため唐突に更新を不定期にさせていただきます。
事前連絡のないまま更新を止めてしまい申し訳ありません。
「さあ?私には誰が呪ったのかはわかりませんが……呪いで魔力を封じられたエルク様と、呪いでおかしくなった陛下と、クーデターを起こしたという王弟殿下……これだけおかしなことが続いているのならば、身近に居たのでは?」
ふっと笑いながら陛下の頭に手を伸ばす。
呆然と抵抗をしない陛下の頭に触れてーーーー目を閉じて彼の体内に魔力を流す。
「まさか、あの女……!!」
何かに怒る陛下の声を聞きながら……やはり黒い魔力があちこちに詰まっているのを見つけた。
それらを順番に取り除いていく。
時間がどれだけかかったのかは分からないが、頭から始まり腕、足、身体と一周してみるが念の為にもう一周確認をした。
陛下の金の魔力が今度は澱みなく綺麗に流れている。
もう、大丈夫だ。
そう思って目を開くと
真っ青な顔をした陛下がそこには居た。
やらかした記憶はあるだろう。
リュートに呪われた時の私もそうだった。
おそらく陛下も、凄まじくやらかした過去に感情が追いついて居るのだろう。
「………御気分は如何ですか?」
「身体はすこぶる良い……なんて言う、事だ……」
「父上…!」
もう大丈夫そうなので結界を解除するとアイザック様と護衛が一気になだれ込んできた。
とりあえずまだ危険かもしれないから護衛の呪いはそのままにしておく。
アイザック様は椅子に座って頭を抱え込んだ陛下の元に座り込み、陛下を見上げる。
すると陛下は苦痛の表情を浮かべてアイザック様の頭の上に手を置いた。
「お前にも迷惑をかけたなザック……よくぞ、私から深緑の賢者を守ってくれた」
「……目を覚まされたのですか…!?」
「ああ。リリアにも…ガイにも、他にも色々と迷惑をかけたな」
すっと私を見上げてくる陛下の目にはもう、憎しみは無かったけれど。
だからと言ってやらかしたことは無には帰らない。
「現在進行形で迷惑しておりますわ。とりあえず、国外追放を取り消して頂かないととても困るのですが」
「ああ。すぐに撤回をしよう。散々迷惑をかけた詫びももちろんする」
ふむ、と考える。
今この状況ならば無理を言っても通して貰えそうだ。
詫び、と言う名目で私がやらかしたことの責任も丸投げできないだろうか。
「では陛下、此度の国外追放云々で魔国には非常に御迷惑をお掛けしました。出来ましたら私の分まで国家間の賠償の責任をとっていただけないでしょうか?」
「ああ、そうだな……すぐに先方に大使を派遣しよう。リリア・キャロルよ。魔国で何があったか教えてくれないか?」
何があったか、か……
過去形ではなく。
クーデターは現在進行形で進められているだろう。
えへ、と笑うと何かを察したのかアイザック様の顔も真っ青になった。
・魔国国王から親書で国外追放を聞いた。更にはトーマとの婚姻をするように言われた。
これを説明すると陛下は真っ青に。アイザック様は唖然とした。
が、それに続いて
・魔国の首都の結界を消した
そう言うと陛下が唖然としてアイザック様は頭を抱え込み
・さらに首都の人々の魔力を封印した
そう言うと、二人とも頭を抱え込んで周りの近衛の方々まで顔色が悪かった。
「リリー、お前、なに、やらかして…!」
「これが昨夜の話でついでに言えばトーマに王様になれって言いましたね。その際にトーマに色々と交換条件を付けられたのでそのへんもアイザック様が入ってくれると助かります」
迷惑かけられた詫びでやってくれるよね?
そんな思いでにっこりと陛下を見ると、陛下は天井を見上げてアイザック様は髪を掻きむしった。
「父上、私は今すぐ魔国へ行きます。先方の処理は致しますので父上は国内の処理を頼んでもよろしいでしょうか!」
「ああ…今回の件についてはお前に任せる」
半ば怒りながらそう言うとアイザック様はカツカツ!と私の元へ来て乱暴に手首を掴んだ。
「という訳だ!今すぐ馬車を用意するから魔国へ行くぞリリー。当然お前も来い!」
「……もちろん、あちらにはエルク様がいらっしゃいますので戻りますが……馬車では時間がかかりますわ、アイザック様」
ニコニコと笑って。
アイザック様も空中に浮かせた。
結界の中に入れて結界を風で浮かせただけなのだがそれだけでアイザック様は驚いて座り込んだ。
うん、そろそろいい加減エルク様が心配だ。
「ちょ、ちょっとまて…!!」
「では参りましょうか?」
『リリめっちゃごういーん』
ケラケラ笑うイェスラの声を聞きながら、私はアイザック様ごと城を飛び出した。