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ルクセルの王城に着いた時はもう朝だった。
ご命令通り、地に足を付けずに飛んでまっすぐと陛下の執務室に行く。
道中、私を止めようとした者は全て呪った。
攻撃をしてこようとした者も呪った。
後処理は面倒になるがこれが一番手っ取り早いのだ。
そして、執務室の前に立っていた護衛を薙ぎ払いーーーーーー中に入ると、ロバート国王陛下が驚いてから私を睨んできた。
「何故ここに居る。お前には我が国の地を踏むことを禁じたはずだ」
「踏んでませんよ。飛んでますから」
『精霊ーー』
陛下が精霊に言葉を掛け終わる前に、精霊を風の檻で封じる。魔法無効の結界に閉じ込めれば精霊は暴れていたけれど、さらに重ねて物理無効の結界も重ねれば諦めたように陛下に助けを求めるようにひんひんと鳴き出した。
「ここで魔法を使った意味がわかっているのか!お前のそれは立派な反逆行為だぞ!」
「違いますよ。追放されてますからね、侵略行為です」
ゆっくり、ふわふわと飛んで陛下に近づく。
逃げられないように部屋全体にも結界を施すとーーーーーー入口から慌てた様子のアイザック様が護衛を連れて現れた。
「リリア!!お前何をやっているんだ!!」
「アイザック!その裏切り者を処分しろ!」
中に入ろうとしたアイザック様達が結界で阻まれて入れないのを見てから、再度陛下に近寄る。
「や、やめろ!来るな!」
「リリー!やめてくれ、父上を殺さないでくれ!!」
陛下、めちゃくちゃ怯えてるし。
アイザック様も必死だし。
何なんだろう二人とも。私が人を殺すような人物だとでも言いたいのか。
「殺しませんよ。追放までされて心底迷惑なので、呪いを解かせて頂くだけです」
「追放!?」
「呪いだと!?」
ああ、もう。一々説明をしないといけないわけ?
とても、とてもーーーーーー面倒臭い。
『リリ、魔力めっちゃ出てるぞ。このままじゃソレ魔力酔いしちゃうぞ』
「ん、ああ、ありがとうイェスラ。お二人共質問がありそうなのは結構なのですが大変面倒ですので先に陛下の呪いを解除してもいいでしょうか?」
すごく面倒。やる気とか配慮とかする気力も起きない。
これがーーーー呪いで隠れていた私の性格か。
やりたいことは頑張るけれど。興味が無いことに関しては恐ろしいくらいやる気が起きなかった。
無表情で見下ろすと、だがしかし陛下は私を睨みあげて来る。
「余が呪われてると言うのか!!」
「どう見ても呪われてるでしょう。訳の分からない暴論で人を陥れて、追放しといて。だいたい追放処分の理由は何なんですか?」
「貴様がエルクを余から引き離したからだ!エルクを救うべく私はーーー」
「許可、しましたよね陛下。婚約も結婚も」
「それはお前が余を脅すから、」
「当時わたし5歳児でしたけど。5歳児に脅されたんですか?」
「そう…だな……?」
話していくうちに陛下も、おかしいと気づき始めたのだろう。
初めの勢いはどこに行ったのやら。次第に、呆然としだす。
そしてブツブツと呟き出してから……ぼんやりと私を見上げた。
もう抵抗されなさそうなので、すぐ目の前の足が地面スレスレになるまで高度を落とす。
「とりあえず、確認するために触れますよ」
「ま、待ってくれ!確かになんだかおかしいが誰が!誰が余を呪ったんだ!?」
誰が。誰が。
脳裏に浮かぶのはたった一人。
だけどーーーーそれをそのまま告げれば。彼は罪に問われてしまうかもしれない。
………それは、嫌だと思った。