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「ええ、なりましたとも。私は国の未来が大事なのでその為なら王にだって剣を向けますよ」
さすがにそれは見過ごせないのか、兵士たちは迷いながらも王を守る。
「それでいいのかお前たち。その判断でこの国は滅ぶかもしれないんだぞ」
トーマの言葉に明らかに揺らぎ出す。
うーん。話が長くなりそうだなあ。
あ、そうだ。と思って魔力を飛ばしてフェルナンド様とアイラ様を探す。二人は結構近い場所にいたので手招きをするとおずおずとこちらによってきた。
「お二人は魔力封印解除しておきますね。人質になっても困るので」
「う、うん…」
クーデター犯に言われても困るよなあ。完全に困ってるフェルナンド様にえへと笑いかけると人垣から手を挙げた男性が凄い勢いでこっちに向かってきた。
「クーデターに参加した場合この魔力の封じ方は習えますか!!」
「………理論なら、教えられますよ」
「殿下!私も味方になりますぞ!!」
あまりに激しい人で、目の前を通り過ぎてトーマの横に並んだおじさんに……ぷっと笑いが込み上げる。一通り笑ってから頷いてふわりと浮き上がる。
「トーマ、私ちょっと国外追放の指示を取り消してくるからここは任せてもいい?」
「良いぞ。でも俺の魔力も戻せ。ついでにこいつも」
「はいはい。……エルク様は置いていくけど、彼に手を出したらこの国は潰すからね」
トーマとおじさんの魔力を戻しつつ、そういえば……また感情がぐわんぐわんと揺れだした。
エルク様に何かあったら。そんなもの想像もしたくない。
「おう、俺は手を出さないけどリェスラに頼んどけ」
「うん。リェスラお願いね」
『任せて』
ここは任せても大丈夫と判断して。イェスラと共に窓から外へと飛び出す。
目指すはルクセル王城。
呪われてる王様と……私を直さないと。全力のスピードで空を進みながらどうしようかと、思う。
私の呪いを解除しないと、また暴走をすると思う。
呪いによる暴走は私も、エルク様も破滅へ誘うから解除しなければいけないが……。
「イェスラ、私の代わりにルクセル王城まで飛ばしておいてくれる?」
『うん?良いけどどうしたんだリリ。震えてるけど寒いのか』
え。震えてる?
凄いスピードで飛んでいるが、結界に包まれているために寒さは感じない。念の為に止まって手を見てみると…寒くもないのに手はプルプルと震えていた。
なんで、と思うとその手がいつの間に人型になったイェスラの手で包まれた。
「………大丈夫か、リリ」
「…………大丈夫じゃ、無い」
寒くもないのに、震えているのは。
ーーーーーー怖いからだ。呪いを解くことが。
「ねえイェスラ。私、エルクが大好きよね」
「………あぁ」
「この思いは、偽物なんかじゃないわよね」
「……………あぁ」
「…っ、いつから!いつから私は呪われていたのっ…!」
「……俺も今さっきまで気づかなかった」
震えがだんだん激しくなり
イェスラに縋り付くように抱きつく。
呪いは解除しなければ。エルク様を悲しませてしまう。
けれど
解除した先に
果たしてエルク様への気持ちは残っているのだろうかーーー。
歯を食いしばって、身体の中の魔力を感知する。
頭、腕、足…お腹………状況証拠ではあるはずなのに中々見つからない。無くて欲しいと言う願望もある。
呪われてないなら。
この気持ちに偽りはないのに。
残念ながら最後の最後。
心臓に黒い小さな魔力がまとわりついていた。