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「…それでね、リリー…申し訳ないんだけどお願いが…」
「……なんでしょうか」
それまでのホワホワがなりを潜め、まるで悪さをした子のようにモジモジとしだすフェルナンド様。
エルク様と見つめあって首を傾げて先を促す。
「あのね…僕、今ここで王宮魔術師として働いてるんだけどね……」
まあ、この国で生きていくならばそうなるだろう。
しかし王宮で魔術師をしている。となれば同僚は先程の人達で……
「先輩や上司や後輩に当たる人達がリリーと話がしたいって…」
「それ、普通に全員ですよね」
やっぱりか。ガックリとして、うーんと悩む。
交流は深めないで行く予定なんだけども、結婚してこちらで正式に暮らしていくフェルナンド様に餞を送りたい気持ちもある。
「ちょっとだけでも、ダメかな?」
「……夜会で紹介を受ける程度なら」
「ありがとうリリー!」
これはまあ仕方ないか。フェルナンド様の師匠でもあるし避けきれなかったと言うことで諦める。
その後も結婚祝いとして光るブローチや髪飾り、他にも細々した雑貨などをプレゼントして会話を楽しむ。
そして迎えた夜会の日。
ルチルに身支度を整えてもらいエルク様のエスコートで会場に入る。
魔国の会場は凄かった。
空中に精霊が可愛らしくとんでいて、とても可愛らしい。
そしてその向こう。天井自体に魔法陣が描かれておりそれが灯りとして光っていた。
恐らくこれの動力も空気中の魔力だろう。
精霊たちは飾り兼魔力を振りまく動力というわけだ。
精霊自身も負担が無いようでとても楽しそうだ。
「リリア」
「これは、トーマ殿下」
「なんか父上が呼んでるぞ」
「あら、なんでしょうかね」
じっと天井を見ていると、王子様らしい王子様に呼ばれた。
事前に連絡などは無かった。なんの用だろうなあとエルク様と首を傾げながらトーマの後について行く。
ちなみに自国での夜会と違って、魔国の夜会は精霊同伴が推奨されている。なので三匹ともおめかしをして私たちにくっついている。
沢山精霊が居るけれど…やっぱりうちの子たちが一番可愛い。
そこまでは、平和だった。
そこまでは、まだまだ余裕で大丈夫だった。
すっかり油断していたとも言う。
自国の王、ロバート・フォン・ルクセル陛下。
思えばサロンで大人しく引いていたのに違和感を感じて居たのに。
まさか、異国である魔国で。
「ああ、来たか。リリア・キャロルよ。ルクセル国王からの伝言だ『二度と我が国の地を踏むことは許さない』だ、そうだ。魔国はそなたを歓迎するぞリリア」
追放処分を聞くことになるとは、さすがに予想してなかった。