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エルク様のためにとりあえず、基盤を作ろうと思う。
といっても現在所詮五歳児。
小学校入学前で鼻垂らしてる子供だ。子供が何をやっても子供。母様は異例として私を取り立ててくれてはいるけど、そのほかの場所では難しいだろう。
部屋の鏡台の前に座ってみると、知ってはいたけど子供子供した自分の容姿に少しがっくりする。
父譲りの真っ赤な髪。母譲りのまつ毛バシバシの蒼い眼。
ぱっちりした猫目は嬉しいが、黙っていれば威圧感のある……美幼女だ。ほっぺもぷくぷく、にのうでもむちむちがまだ抜けきっていない悲しいくらい可愛い幼女だ。
『リリどうしたんだ』
鏡台の前で二の腕をもみもみしていると、イェスラが残念な子を見る目で声をかけてきた。
「ああ、そうだ。イェスラ今日は仕事……」
今日はお休みだから、イェスラに手伝ってもらう仕事はない。
そう伝えようとして気づく。
そうか基盤は大事だけど、自分が矢面になる必要はないんだ。
幼女だと軽んじられる。だが、年齢不詳の人が書いた文章はどうだろうか。
だれかわからなくとも、高位精霊が名代になっていればどうだろうか。
そうと決まれば!!
「仕事はないから!エルク様の情報を調べてきて!好きなタイプとか好きなものとか」
『…なあ、俺高位精霊なんだけど。なんでそんな可愛らしい恋愛の情報収集…もっと国を傾ける隠密とか裏組織の情報とかじゃないの!?』
「しらべてもいいけど、それはプライベートでおねがいします。とりあえずエルク様の情報を!」
ぴーぴー囀るイェスラを窓を開けて魔力塊と一緒にポイっと追い出す。
そして机に向かって白紙の紙の束を取り出す。
「……」
すこし考えて。
書き溜めていた資料も引っ張り出す。
前世の作者さん、ごめんなさい。
貴女がこの世界に来ていたら、きっちり印税払いますので。
そして私は記憶をもとに、カリカリとペンで白紙の紙を埋めていった。
異世界転生において、前世の記憶で大活躍★しようにも
残念ながら私にたいした知識はない。だが私はすごいゲームのストーリー、漫画、小説を知っている。
きっと、あの神のストーリーたちはこの世界の人たちにも受け入れてもらえるものがある。
そう思い私は、一つ一つ
前世で読んだ小説の再現を始めた(※作者様が同じ世界にいる場合は盗作はだめですよ!)
第一話を書き上げるだけで、手がプルプルして来た。
ついでに頭もガンガンしてきたので、体内の魔力を循環して体力を強化して疲労回復をする。
が、しかし頭痛の方は和らいだだけで収まりきらなかったのでとりあえず盗作活動はいったん休止して。
気休めに魔力塊、魔法陣、無詠唱についての論文を作成する。
これは体験談をもとに色々と書けばいいだけなので割とらくだ。
魔力を放出しても、存在できるように密度の高い魔力を練り。
練った魔力をさらにねりねりねるねして、高純度の魔力塊を作り。
魔力塊をながーくうすーく細ーく伸ばして、魔法陣を作ってはい完成。
これで貴方も無詠唱でバーン★
そんな感じの文章を真面目に書き上げて、ふと気づいたことがある。
魔法陣は本来床や紙に書く。
つまり、二次元に作成しているのだ。
だがしかし魔力塊は三次元…立体構造だ。
魔法陣を改造したり色々とくみ上げたりしたらどうなるんだろう。
そうと決まれば、私はペンをポイと放り投げて書庫で保管されている魔法陣の本を探しに走った。