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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
二人の戦い編
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8

Renta!様でコミックの配信が開始されました。とても可愛らしいリリアに興味があればぜひ見て見てくださいな。


日が昇りだした頃。私が朝食を食べる時分よりも少し早い時刻。

王宮から一台の馬車が出た。

意識を寄せると、馬車の中には完全に近寄ることが出来ない空間がある。

恐らく、トーマの結界だろう。


だが確認は取れないので、念の為にパン!と手を叩いてその音を馬車の中に送った……が。

ほぼ密室の馬車の中に音を届けるには、波紋を小さくしたせいで音が小さくなるのを感じた。


『今、呼んだか?』


『いえ、殿下が呼んだんじゃないんですか?』



それでも反応はあった。

恐らく窓が少し開けられたのだろう。トーマと誰か……推測するに恐らく御者で従者だろう。の会話が聞こえた。


トーマと確認が取れたので、窓が締められる前に言葉を送り込む。


「窓は少し開けといてトーマ」


『!!り、リリアか!?』


衛星放送のように少々のタイムラグはあるものの。

波紋の調整が単発音と違いかなりめんどくさいけど、会話ができる程度の音声のやり取りが可能だった。


とはいえこの面倒くささ。10分ほどが限界だと思われる。


『お前、何やってんだ』


「まずは代わりの先生ありがとう。でもそんなことよりも相談があるんだけど」


『いやそんなことよりも、うちの精霊が、この声の精霊の力を感じないって言ってるんだが、お前何やってるんだよ!!』


「そんなことよりも………す、すきなひとが出来たんだけど…!」


『どうせエルクだろ。んな事より、お前どこで喋ってるんだよ』


「家だけど。って、なんで知ってるの?」


『お前のエルクバカなんて今更だろ。で、そんなことよりも、この会話はどうやってるんだよ』


「説明めんどくさい。そんなことよりもエルク様に好きになって貰うには…」


『どっからどう見ても両思いだろお前ら。むしろなんでそんな考えに…』


『……トーマ様、おひとりでどうしたんですか…』


『あ、ああ。少し本日の授業の予行演習をな』


『……そうですか。』


急に会話に割り込んだ従者の声。

完全不審者扱いに思わず笑いが吹き出した。


「ぷッ、ひ、ひとりご…ふ、ふふふふ」


『そこまで聞こえてるのかよ……』


やーい不審者と言おうとして。

後ろからぎゅっと抱きしめられて、ガキっと固まる。

そうだ、時刻は朝食を食べる頃。

学園に出勤予定のエルク様は、当然起きている時間じゃないか……!


ゆっくりと後ろを振り向くと

そこには身支度を整え終わったエルク様がキラキラした笑顔を浮かべていた。


「おはようリリア。朝から何をしているのかな?」


「な、なんでもないです」


「そう。じゃあトーマに、もう朝食の時間だから終わりって伝えてくれるかな?」


「はい…」


私が言うよりも早いだろう。

エルク様の朝食の時間だから、終わりの部分だけの音声を送り付けて、集中を解いた。

すると私が作った空気が霧散して、普通の空気と交わってただの空気になるのを感じた。再度集中しても『私の作った空気』はもう集められず、ふっと笑って二人を抱っこしたままエルク様と立ち上がる。


「イェスラも、リェスラもおはよう。ほら食事に行くよ」


『おはようエルク』


『おーっす』


見つめあって、どことなく照れながら笑いあって。

エルク様がリェスラを片手で抱えて、自分の肩に置くと、イェスラは自ら羽ばたいて私の方に留まった。

そして自然な成り行きで手を繋いで、その温かな温もりに安心すると共に手汗を焦る。


手汗でべちゃったら恥ずかしいレベルなんてものじゃない。


手汗!出るな!


そう念じながら赤い顔で握られた手を見つめる私を、とろけそうな蜂蜜の瞳でエルク様は見ていることに


私は全然気づいていなかった。



しかし、どっからどう見ても両思いか。

いいこと聞いた。

いや好かれてるのはわかってるんだけど、恋とかちょっとよく分からないからテンパったんだ。



ムフフーと笑いながら食堂に行った私は。



泣きじゃくったリズから、油断してる状態で不意打ちタックルをくらい、また吹っ飛んだ。






「姉様と一日遊んでいられるんですね!!」


「……お勉強もするからね、リズ」


今日一日魔法訓練でもするかなーと思っていた私の考えを見透かされたのか、リズに吹っ飛ばされたあとで摂った朝食の最中に、母様に一日リズの相手をいいつけられた。


するとそれまでぐずっていたリズは、まるで雨上がりの虹のような輝く笑顔を見せた。

純粋に向けられる好意をむず痒く感じながら、リズと一緒にエルク様や父様を見送る。


「とりあえずリズ、何をしたい?」


「お外で遊びたいです!!」


外遊び。元気いっぱいに、私を先導するように先を走るリズには悪いが、私は既に体力面でリズに負けている。

リズの好きな遊びは鬼ごっこだ。

負ける気しかしないが、姉として簡単に負けてもプライドが傷つく。





少し肌寒い空気の漂う庭に出て、さてどうするかと思案する。


「姉様!!駆け鬼をしましょう」


肉体強化で相手をするか。いや、毎日してるリズと私では圧倒的に不利な上に、即座に筋肉痛になる気しかしない。

肉体を強化しないで、素早いリズの相手……


その時、さわっと髪を揺らす風が私の身体を通り抜けた。


ーーーーそうだ、風だ。

風を操って、風に乗れば、肉体を強化せずとも何とかなるんじゃないだろうか。


ふわりと風を作り出して……身体を押してみると、トコトコと早足で歩く羽目になった。

そうか、移動が早くても足が着いていたら、やはり筋肉痛必須か。



ならば、足がつかなければいい。


足元で強い風の流れを作り、同時に地面には影響を与えないように配慮してーーーふわりと浮く。


人体が浮くほどの風だ。それは突風と呼んでも差支えのないもので。

つまりあれだ。ふわりと浮くと表現したものの実際は……


スカートは完全に上にめくり上がり、下着も足も丸出しのショッキング現象が起きた。リズの前で。リズの前で。


「ね、ねえさま……?」


「ごめんなさいねリズ、ちょっと出力をミスってしまったわ」


手で瞬間的にスカートを掴み下ろして、淑女の笑みを貼り付けて笑う。

内心はとんでもない恥を晒して正直死にたかった。リズの笑顔も引きつっているし。



真面目に考えれば、空を飛べる超野菜人さん達は髪が逆だっているし、ズボンだってあれはブーツインしてたね……


少し悩んで、物理防御の結界を身の回りに展開して、そこに強風を与える。

今度はスカートも髪もそのまま、浮くことが出来た。

ただ音がゴウゴウと強風の音がするので、音の波紋も調整して音も小さくする。


「こんなものかしら」


見た目は大事だ。

優雅に、可憐に。

けれど動きや魔力消費も注意して、空中に制止するよりもふわふわと漂うことにした。


「ねえさま!!なにそれすごいわ!!姉様はお空を飛べるのね!!」


「今試して見ているだけだけれどね」


「私も飛びたい!!」


それは一瞬の出来事だった。

子供の向こう見ずな行動を予測していなかった私の、完全なミスである。


音はしなくとも、私の周りには私を浮かせられるだけの風が吹いている。


そんな私に、少女がジャンプして突っ込んできたらどうなるのか。


「リズ!!!!」



一瞬で吹き上げられるリズの身体。

慌てて手を伸ばすも、捕まえることは出来ずに空高く舞い上がった小さな体はーーーーー




『あっっぶねええええ!!』


どこからかすごい勢いで飛んできたイェスラによって捕獲された。

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