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「かあさま!?!?」
「うふふー。原本はもう魔法で王宮に送っちゃったからリリアでももう止められないわ」
冷静に躱して冒険者や孤高の領主になりたかったが先手を打たれた。
まあ現実問題で考えたら力も財も身分もあるだろううちが、男が多い王家と縁づくのは王家からしても好都合だろう。
だが
だがしかし
どうでもいい皇子たちならともかく、エルク様ーーー!
柔らかなカーペットにがくりと崩れ落ちる。
どうでもいい(2回目)皇子たちならば適当に相手になって種で子供を産んだら後は愛人でも作って貰って適当に好きにしてもらえばいいから妥協は簡単だが。
いくら『オレの嫁』に激似とは言えリアル旦那様なんて、なんて
『今帰った』
『おかえrブハッ』
エルク様を出迎えただけで萌死する気しかしない。
ましてや、こ、こ、こづくrい
ベットの上で濡れた髪で恥じらう上半身はだkーーーーーー
「り、リリア!リリア!どうしたの」
我が人生に一片の悔いなし。
その日私は、安らぎきった微笑みで2度目の気絶をした。
「リリアはエルク様が大好きなのだと思ったけど、違うのかしら?」
「もちろん愛しています(推しメンとして)けれど歳も離れた小娘のわたくしでは彼の君を幸せにできる自信が全くございません。わたくしは彼の君には幸福な恋愛をして幸福な結婚をして頂きとうございます」
最近気絶がお家芸になってきたような気がする。
気付け薬を持ち歩くことを決めて、目覚め第一声で心配そうに声をかけてきた母に婚約辞退を願い出た。
なおここは母様の執務室で、私はソファに寝かされていた。
部屋の隅にはいじける父様が見える気がするが気のせいだろう。
「幸福な結婚、ね……残念ながら、それは無理よ。エルク様は貴女と結婚出来ないのなら生涯独身で終わるでしょうね」
「なぜですか」
「エルク様は悪くないわ。エルク様は悪くないのだけど…彼の御両親、王弟殿下とその奥方はね…反逆者として処刑されているのよ」
貴女はまだ理解できないかも…と言いながら厳しい表情をした母は、教えてくれた。
王弟夫婦は王位を狙ってたくさんの貴族を巻き込んで大きな反乱を起こし
それは失敗に終わり王弟は処刑。協力した貴族もたくさんお家取り潰しになった。
エルク様は王弟妃が虜囚になった後にお腹にいることが判明し、子に罪はないからとエルク様が産まれるまで王弟妃の処刑は中断し
彼の君が誕生した翌日、処刑されたそうだ。
エルク様は揉め事の種にならぬように王位継承権を消された上で王家預かりの身。
王家の血を引くとはいえ、かなり大事になった反乱の首謀者の息子の彼は子をなすことも婚姻を結ぶことも全て王の決め事…つまり政略結婚以外は許さない。そう決まっているそうだ。
それが、貴族には周知されているそうだ。
まるでゲームの設定みたいだな、とぼんやり考えながら内心ため息をつく。
「陛下は子供の世代に争いの芽を残さないためにエルク様を結婚させる気は無いと仰っていたわ。だけどリリアを王家に…この国に繋ぎ止める為ならば皇子でもエルク様でもなんでも使うと仰っていたわ。私はならば貴方が恋したエルク様をと進言したけどダメだったかしら?」
母様は私の精神年齢が幼くないのはわかっている。
理解した上でこの話をしたら…エルク様との婚姻を拒めなくなるとわかっているのだろう。
実際に、私は婚約を拒むことに罪悪感を感じている。