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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
令嬢の戦い編
122/177

4



「ほらお嬢様!もっとしっかり身体強化魔法を使ってください」


「ふひゃあああああ!!」


「エルク様に赤子のようなつるぷに肌を披露するためですよ!」


「いやエルク様は私が幼児の時から知っ……いだ、いだだだだ!!」


誕生日の時の惨劇は、それからも続いた。

昼間は教職を。夕方から夜は家で領地経営と商会経営を。


そして夜、寝る前には毎日肌が真っ赤になるまで皮膚を固いスポンジでゴリゴリと擦られた。


レティシア曰く、今流行りの美肌療法らしい。

古い肌を削り取って身体強化魔法で身体を活性化させて美しい肌を作り出すそうなのだが。



魔法使わないとできない美容療法って、なんの美容整形ですか。


そして息も絶え絶え、お風呂で体力と魔力を大量に消費したあとは夜寝るとき用のコルセットで腹を締められる。


「デビュタントは近いんですからね」


そう言って笑ったレティシアの目は血走っていたので何も文句が言えなかった。

黙って言われるがままに締められ、香油を髪どころか肌まで揉み擦られ、最後にエルク様の部屋に放り込まれる。


「リリア、大丈夫かい…」


「数回死んだ気分です」


私を見るなりぎょっとしたエルク様によろよろしながら手を伸ばすと、慌てて抱き上げられベッドに運ばれる。

角質と共に削り取られたメンタルを回復するため、エルク様の肩に額を預けてスーハーすると甘い香りが胸いっぱいに満ちてちょっと癒される。


最近のエルク様の香水?ボディソープ?は甘やかな香りのものが多い。そのとろける優しさと相まって、非常に最高です。


「御婦人の美容に対する熱意は本当に凄いね。私もリリアに見捨てられないように頑張らないと」


「エルク様はそのままで!そのままで素晴らしいですが……」


「ですが……?」


「これは早急に何か対応策を作らねば、私の身はもちません。

エルク様の横にたっても見劣りしない美貌は欲しいですが、正直毎日がこれだとメンタルが持ちません」


「ああ、そっちか。ちょっとびっくりしたよ」


てっきり私に不満があるのかと思った。とかエルク様冗談きついです。エルク様に不満なんてミジンコほどもありません。


「というわけではい、作戦会議!議題は身体と心を痛めない美容作戦!」


パンパンと手を叩いて、精霊たちを三体ベッドに呼んで五人で作戦会議をする、が。


『ブラッシングをこまめにすればいいんじゃないー?』


「全身もふもふじゃないから却下!」


『砂浴びと水浴びで汚れを落として、油線から出る油を羽に塗れば…』


「羽もないから却下!」


『少し固い石で鱗の表皮を削ってピカピカにすると気持ちいいわよ?』


「鱗ないけどやってる事今と変わらないから却下!」


「そもそも、その作戦会議は人間女性同士でやらないとダメじゃないかな」


「さすがエルク様唯一の真っ当な意見です。ですが真っ当な人間女子の考えた末の美容法が現状です」


史上初、これほど先が見えない作戦会議となった。

まあメンバーが男性、竜、鳥、獣な時点で聞いた私も悪かった。


エルク様は真面目に考えてくれているが、精霊たちは自分に全く関係が無く面白くなさそうだからかそうそうに寝場所を作り出す始末。


諦めて、自力で考える。


例えば先程の固いスポンジゴリゴリ。

痛みなく肌が赤くなるまで擦れれば、いいんじゃないだろうか。

となると痛覚麻痺の魔法か、薬品を使うか。


ーーーーー確か、スライムの中位種に麻痺毒をもったスライムが居たような。

無論そのまま使ったら毒であるので障害が残る。が!

解毒薬も一緒に使えば。もしくは回復魔法……は、削る前の皮膚を回復したら本末転倒だから、状態回復(リカバリー)を使うか。

いやでも、対他者相手の回復魔法陣(ヒール)状態回復(リカバリー)は基本的に神聖魔法の使い手しか使えない………身体強化で多少の自己回復は出来てもその程度……そこまで考えてふと気づく。


そうだ、そうだ。


エルク様を見ると、彼は真剣な顔で美容法について考えていてくれていた。


彼が、怪我をしたら。

エルク様に何かあったら。


なぜ私は魔法を学んでいたのに、回復魔法は学んでいないのか……!!


「ねえリェスラ、回復魔法ってどうやるの?」


『え……ええっと、魔力を相手の体に流し込んで、生命力にして急速回復をはかる……だったかしら?ようは身体強化を別の人がやるのの、応用よね』


『そうそう。相手の魔力に馴染ませないといけないからリリアには無理だと思うぜ。リリの魔力、すごい個性的だから』


出オチだった。

神聖魔法は特殊だという知識はあったが、頑張れば何とかできると思ったけどなんともできなかった。

ベッドにうつ伏せに転がり、頭を埋める。それでは緊急時にエルク様の治療ができないではないか!


『んでもー。赤い姉ちゃんなら相手の魔力で出来るんじゃないのー。固体化した魔力も操れるんだしー、体内の魔力もいけるんじゃないの?』


カールのその一言にムクっと身体を起こす。

そして正座をして、カールを目の前に座らせる。


「カール、ちょっと人型になってくれるかな?」


『いやいやいや、嫌だよ?この流れって、僕絶対に実験台だよねー!?』


『そうだな、ぶっつけ本番で人を相手取るのは危険だからな。行けカール』


『いやいや、何逃げてるのにーさんにねーさん!ちょ、ちょっとエルク!止めてよー!』


「カール、リリアの相手になってくれ」


『僕の味方いないー!?』


そして寝る前に一時間ほど精霊体実験を試した結果。


他者の体内魔力の操作も出来ることが分かった。

ので、これからは自己回復魔法の特訓を重ねて、他者も癒すことが出来るよう訓練を重ねよう!と


ぴーぴー泣きわめくカールをなだめながら決意した。


『なんか体の下で勝手に何かが動いてる感覚がまだあるよーう』


「もう操ってないよ」


『違和感あるのはしょうがないだろうなあ。実際に勝手に操られてるんだし』


『泣いてないで根性見せなさいよ』


『そうだそうだ、俺も通ってきた道だぞ』


『兄さん…!』


とは言え、回復魔法も使えるようになりたいが現在は目先の問題だ。

とりあえず毒麻痺はリターンの割にリスクが大きい。

酸液のお風呂も考えたけど万が一目に入ったら失明するから却下だ。

うーん。考えれば考えるほど、美容って恐ろしい。


「一応地方によっての民間療法とか、調べておくね」


「ありがとうございます…」


乳液と、化粧水と、保湿クリームと。

それくらいしか知らないんだよねえ。それは前世も今世も似たようなものがあるし。


あとは飾る方法を変えるとか。

化粧はおしろいと紅くらいしかないので、アイシャドウとか……マスカラとか行けるんじゃないか。

はっ、化粧下地とか…!

アイシャドウは肌に優しい色素を植物とかからとっておしろいに混ぜればいけるんじゃないだろうか。化粧下地は乳液とおしろいを混ぜれば何とか……。


簡単に出来そうだが、これは臨床試験がたくさん必要で長期の戦いになるだろう。

粗悪な素材での化粧による、肌荒れや肌の爛れなど起きてしまってからでは遅いのだから。


でもそれを言ったら。


この世界の化粧品ってそもそも大丈夫なんだろうか。

なんだか、とても不安になってきた。

今度その辺の辺りをエリース様にでも聞いてみよう。


そんなことを思いながら、他にも数点パーティで使えそうな細々したものを考えた。

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