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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
友達の作り方編
117/177

12


寝不足で授業がない時間に仮眠を取り、何とか教師としての仕事を終えて。

帰宅すると、ソルトとアジが玄関でマイクとジャックと共に待っていた。


「遅いぞお嬢!ほら今朝の文書の回答を持ってきたぞ!」


「魔道具ギルドの現在の料金表からメンバー一覧、生産能力一覧も持ってきたぞ」


「…遅くなりまし…アジさんはお久しぶりです」


「おう。俺は補佐だからな。それより早く読め」


「読ませるか引っ張るかどっちかにしてください」


荷物を従者に渡す間もなく突っ込んできた二人は、分厚い紙の束を渡すと手を引いて歩き出した。

荷物と書類と、さらに手を引かれて歩く以外のことが出来ない。


「おうおうそうだな。じゃあお嬢の執務室に行くぞ」


「場所知ってるんですか?」


「知らん!」


「こちらです…」


見兼ねたのかエルク様が私から荷物を取りジャックに渡して、その間にマイクが道を先導して…居たのに。


「なんじゃこれええええええ!」


「お嬢、これは、これは!」


少し歩くとちょうど自動点灯器(オートライト)の蓋を外すメイドがいて、パッと自動で着いた照明を見て二人が興奮した。

そして少し向こうの明かりが消えた既に蓋が外れている所まで走り出して、パッパッパと明かりがつくととても興奮しだして正直書類どころじゃなくなっている。


そのどさくさで手も解放されたので先に執務室入ってますからね、と声をかけるとソルトは真顔でジャックから書類を奪い取って、何かを書き足してまたジャックに押し付けると再びアジと一緒に照明に張り付いた。


執務室に入って上着を脱ぎ、ソルトから貰った書類を読む。



魔道具ギルドでの素材の買い取り、生産、販売までを行うには人材や場所の問題でそろそろ限界があるため作業工程の分割化及び販売を専門の別商会に任せることは賛成だ。

そう書かれた書類の下にでかでかと、『ただしこの照明作らせてくれたら』と書き足されていてどんだけオートライトに惹かれたのかと笑いが込上げる。


読み終わったタイミングで母様からの書類も渡されて、魔道具ギルドと話を詰めてからでならとGOサインが書かれていた。


となると商会を立ち上げて。

ショールディン領に魔道具ギルドの支店を作り、そこに機密部品を売りつけるかまたは機密以外の部品を買い付けるか。

現在生産しているどの部品をバラすか、バラしてどれを新作として作り出すか。


現在問題なく実用化待ちの部品はいくつもある。

けれど、ソルトとアジが望むのはオートライトなのか、魔光灯なのか。どちらにしても魔石を使っているために販売許可を国に仰がないといけない。トーマと一緒にアイザック様にも頼んでみるかなあ。


とりあえず魔道具ギルドへの返事はそれからだ。

そう思いながら新しい商会の人員募集や拠点などを私の資産と照らし合わせながら細かなところを決めた。




なお、オートライトに満足したソルトとアジが執務室に入ってくると、再びギャーギャー喚き出したのは別の話。




翌日の学園帰り、魔術棟に行く頃には寝不足でだいぶグロッキーになっていた。正直に言うと、強化してない状況では体力は全くないのでエルク様に抱かれて移動を甘んじて受ける。受けるというか、抱かれながら眠って少しでも多くの時間を睡眠に費やした。


エルク様もあまり寝てないので、魔術棟から帰ったら彼には今晩寝てもらおう。

そう心に決めながら、寝ぼけながら周りに浮かぶ『赤い華』に触れる。

すると、仕込んであった魔法はきっちりと発動をした。

発動するそれを見ながら、徐々に寝ぼけていた頭が冴え出すとタイミング良く魔術棟の中に入った。



「りりたんどうしたんじゃ!具合が悪いのか!?」


「眠いだけですよ」


「まさかエルク貴様!りりたんに夜な夜な…!」


「仕事を一緒にしてるだけですよ」


賢者たちの邪推に苦笑を浮かべてからおろしてもらう。

そして賢者たちにエスコートされて応接間に行くと、そこには既にトーマとアイザック様が座っていた。

私に気づいて会話を止める二人に礼をすると直ぐにこっちに座れと呼ばれたので言いつけ通り二人の向かいのソファにエルク様と座る。


「それで、なにをやらかした」


「なにをしたいんだい」


さて何から説明をしたものか。

ヤバいあれと、商会設立と、魔道具制作工程の分割と、魔石魔道具の制作許可。

許可を貰いやすいようにヤバいあれをチラつかせようかなあ。


「リリア」


「ありがとうございます」


カールから書類の束を受け取ったエルク様が私にそれを回して、私がクリップで人数分束ねられたソレを賢者たちとトーマとアイザック様に渡す。


「この資料に書いてあるとおり、キャロル領の生産が飽和しつつあるので他の領などに基礎部品を販売する方針にシフトチェンジを行う予定なんです。それに伴って基礎部品の販売と輸送を兼ねた商会を設立する予定です」


「まあ、まだまだ作りたいものがあるなら当然だな」


「ええ。とりあえず魔道具ギルドとは話し合いこの件は決定済みであり、現在生産している魔道具などの一部は分割化をします。それに伴い、作成余裕が増えるので魔石を使った魔道具販売の許可を頂きたいのです」


「魔石、か……」


資料の五枚目には現在のキャロル領、学園での魔力塊の成功者の人数が年齢別に書いてある。

彼等に有型の魔法を使わせれば魔石はすぐにでも生産できるだろう。


「それを考えている間にこちらの魔道具の効果をご覧下さい。紅蓮の賢者様、エルク様に向かって攻撃魔法を放ってください」


「ほう…本当にええんじゃな?ならばエルクよ、立ってこちらに来るが良い」


「いえ。座ったままの方がわかりやすいかと」


うーん?と悩んだ賢者とは対照的に、トーマは何かに驚いた。さては可視化で見たな。何かを言いたげにしているが、一応は話の腰を折らずにいてくれている。


エルク様が私の肩を寄せて密着する。ああ、余波の心配か。そういえば私は範囲外ギリギリだからなあと思いむぎゅっと抱きついて花に囲まれた中に収まる。


『彼の者を燃やせーー火球』


紅蓮の賢者が精霊を使って握りこぶし程の火球をこちらに放ったーーーーーが。

実験通り火球はフッと消えた。


「なんじゃ!?」


『彼の者を取りまけ…ファイアウォール』


そして私たちの周囲に突然火が出てきたがーーーそれもフッと消えた。普通ではただ消えたようにしか見えない。だが可視化を使ってみると、

エルク様の周りにいくつも浮いている魔力塊で作った赤い花がふわりと輝くのが見えた。うん、問題は無さそうだ。

全員が凄い目でこっちを見ていた。


「魔法が到達する瞬間、何か魔法が発動していたようじゃが…」


「それまで魔法の気配はなかったのにのう」


「んで。その花はなんだリリア」


トーマがジト目でそう言った瞬間、さっとどこからかメガネを取り出した賢者達も、ついでに可視化を使った様子のアイザック様もようやく花に気づき出した。


1番近めにいたアイザック様が身を乗り出して赤い花に触れようとするーーーが、その手は通り抜けた。当たり前だ、これは実態のあるものではなく魔力の塊なんだから。


「これが研究の末にたどり着いた最新の魔道具……対呪いように開発した自動魔力無効結界オートマジックキャンセラーです。呪いというか魔法全てを消しちゃう代物ですけどねえ」


そう。これこそがオートライトの元になった元凶だ。

常に張り続けていると魔法が使えない既存の呪い対策。

常時はるとなると魔力の消費も多く、また魔法が使えないというのはなかなか不便ゆえ。


魔道具と半固定化した複数の魔力塊を繋ぎ、魔力塊には回路が繋がっていない魔力無効の魔法陣が刻まれている。それに魔力が触れると魔法陣の回路が繋がって魔道具の魔石を燃料に魔力無効の魔法が発動する仕組みだ。


自宅のオートライトの方は人の体にやどる微弱な魔力でも魔法陣が繋がって発動するようになっている。


魔石を使い、発動していない時は魔力を消費しないためコスト効率も良い。また魔力塊の個数も間隔も実験に実験を重ね、呪いが隙間からも入れないようにした。


魔法を使う時は手を前に出して花と距離を開けて指先から魔法を使えばいい。これだとエルク様は指輪タイプの魔道具しか使えないけれど、元々そんなに使う方では無いので問題はなさそうだ。

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