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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
友達の作り方編
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11


別れ際に兄上が「さらば秘宝よ。またの出会いを切望する」と言うとエルク様は微妙な顔をしたけれど。


「兄上さらばです!」


「うむ、リリア・キャロルよまた次会うまで秘宝を守るが良い」


「はい!!」


「いやこれ俺の兄だからね。何お前の兄さんみたいな扱いしてるの」


「ブラコンですかトーマ」


「ちげえし!てかその目やめろ!」


ドン引きしてトーマを見るとぷりぷり怒りながらバタン!と馬車の扉は閉じられた。冗談の分からないヤツめ、と笑いながらエルク様にくっついて屋敷に戻る。


「随分嬉しそうですね」


「ええ。エルク様の魅力がわかる同士という物は嬉しいです!!」


「広めないでくださいね。後生ですからお願いします」


「こんなに素敵なのに」


「リリアに独り占めされたいんですよ」


だから、お願い?と頭を撫でられると即座に頭が自動的にコクリと頷いた。

エルク様のお願い以上にすべきことは無い。

そのまま玄関前で抱き寄せられて、ぎゅっとされて幸せを堪能しながらふと思う。


そういえば兄上の名前ってなに………?





「リリア様こちらショールディン公爵様からのお手紙です」


帰宅するなり真っ先に渡された手紙。

真っ直ぐ執務室に寄り、飾りの少ない封筒にペーパーナイフを入れて中身を読む。


一通り読んでから、事務作業をしていたジャックを見る。その様子は真面目そのもの。企んでいる様子はないが…


「ねえジャック、貴方公爵閣下に何か言った?」


「父から魔道具ギルドは誘致すべきか、という文が来たので何がなんでも誘致すべきとは答えましたが」


「なるほど。それでこれで、あれか」


「如何しましたかお嬢様」


「読んだ方が早いかな」


はい、とメルトスに閣下からの手紙を渡して上着を脱ぐとマイクがそれを受け取って掛けてくれた。同じくエルク様の上着もやってくれて、自分の机に座るとルチルがお茶を差し出してくれた。


それを一口飲んでから、学園に行っている間に溜まった書類を軽く見る。

ああ、と思って先程ソルトに言われた話もさっと焼き上げてメルトスの元の飛ばすと、それも受け取ったメルトスが頭を抱えた。


「リリア様、この話はお受けなさるのですか」


「今の魔道具ギルドじゃこれ以上の支店も大口の仕事も無理よ。かと言って人材を送られても機密漏洩が怖くて無理だから当然断るわよ」


公爵閣下からの手紙は魔道具ギルドの支店を公爵領にも欲しいから口添えをして貰えないか。

というものと

こったデザインじゃない一般向けのロケットペンダントと、他にも色々なものの作成依頼の、仲介願いだった。


前者も後者もおそらく、情報の見返りのつもりなのだろう。確かにお受けすれば多大な儲けが魔道具ギルドを通じて入ってくるが。


現状では、キャロル領で新たな生産ラインの増加は時間がかかる。

開発した品々がどれも他領で売れているので、そちらの生産で手一杯なのだ。

新たに一から人を集めないといけないのだ。そして今も一から生産ラインを作っているものもいくつもある。故に私のアイディアはメルトスの手によって順位づけられている。

制作方法、予算、細かな設定まで終えた状態の魔道具はいくつも作成済みだ。


恐るべしはメルトスだ。そんな状況であっても、私の発案は全てしっかりまとめあげてある。

すぐに実現できないなら後で書けばいいと思うのだが、こういうのは閃いた時が1番輝いている、との事だ。



メルトスはしばし悩んでから「恐れながら」と言って手を上げた。

こくりと頷いて先を促させる。


「現在のキャロル領での生産はもうこれ以上は大幅には増やすことは難しいでしょう。ですのでこれを機会に生産ラインの分割化をしてはいかがでしょうか」


「……機密に関わらない物を外で作るの?それとも既存のメガネのように肝心な部分はうちで作ってよその工房に売るの?」


言いながらも、何となく後者の方が良いことはわかる。


「後者の方がその後の販売ルートの問題なども楽かと。わざわざ完成品で売る必要もないでしょう」


「……考慮するわ」


つまり下請けを作るということだ。

何を偉そうなことをと思うが、生産能力に限界がある以上部分をチョイスして利益を上げる……しかないのだろう。


まず母様と魔道具ギルドに打診をして。そのために詳細を纏めないといけないか。


机の上に紙を置いて、ペンを持つ。

販売は魔道具ギルド内のみか否か。機密制作じゃなければ自由にしてもいいと思う。領外どころか国外からも来るかもしれない。


「イェスラ、魔道具ギルドのギルド内税率一覧と国の税率一覧取ってきて」


『うげ、探してくる』


「ルチル手伝って来なさい」


「は、はい!」


同ギルド、領内外、ギルド外、国外。

それぞれに別途の税率をかける。領内が飽和した場合その他の税率を下げればいいのだ。


そして、それだけのものを運ぶための運送屋。

これもしっかりした業者を使わねばならない。少なくとも、領内では完璧にこなせる。腕っ節のいい存在。あと大荷物を乗せられる馬車の開発か。


運送屋は冒険者上がりとかどうだろうか。実際ギルド依頼で護衛任務というものもあるし。

領外の販売なら先方に運送屋を雇わせよう。

となるとあれかな。魔道具ギルドには生産のみを頼んで運搬 販売を担当する新商会を作った方がいいかもしれない。


ざっざっざっと走り書きをして、乱雑に書き綴る。

途中イェスラとルチルから資料が届いて既存の税率を元に各所の税率を計算し。


実際に分割作業にした場合の、機密部位と汎用部位の分割サンプル。工場や孤児院、工房などへの割り振りサンプル。


とにかく思いつくままに書いて、微妙なら上からぐちゃぐちゃっと書き消して。

ありとあらゆる可能性を書き出して、注意事項を書き込んで。

何枚も何枚も、空きスペースが無くなる程紙を使って書き込んで。


その結果できた草案は、紙を二十枚以上使う物であった。

それを数部づつコピーを作る。



「エルク様、メルトス意見を」


「マイク、ジャック、ルチル、寝るならこれが最後のチャンスです。寝ても構わないので好きにしなさい」


「お嬢様より先に寝る訳には行かないですよ」


「ショールディン領のことであれば俺もお役に立てると思いますので」


「わ、私も、出来ればうちの領地に仕事が欲しいです!」


「わかりました。けれどこれで明日の仕事や授業に支障を出してはいけませんよ。特にジャック」


エルク様の声掛けにも全員が残ったので、メルトスとエルク様に読んでもらってる間に現在のショールディン領の関税や主要商人、鍛治工房や工場などについてを聞く。

ルチルはドーリン伯爵領について詳しくはなかったらしく、今ジャックが答えたことを明日までに調べます!と言いきってくれた。


「リリア、ここの税率だけど…」


「輸出税ですか」


「領を跨いで作ってもらい、さらに領を跨いで販売するとなると二重の税で割高になってしまうから販売価格の高めのものを販売した方がいいと思う」


「侯爵家として設定している輸出税は最近は外に出る流れの物が多いので割と高めですからね。輸出税が低い領に売り込みをかけるのがいいかと。また初めから大商会の手続きを取った方が良いと思います。登録料はかさみますが、輸出税がだいぶ変わります」


その後も討論を重ね、改良に改良を重ねて。

何度か眠気を感じ、それを超えてハイテンションになるのを繰り返したが。

結局私は夜明け前に紙を握りしめて寝落ちをした。



目覚めた時、エルク様に抱かれて職員室に入るところだったもんだから変な悲鳴をあげたのは仕方がないよね。

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