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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
友達の作り方編
114/177

9

昼になると、いつものごとくトーマが個室に突っ込んできたので三人で食事をとる。


「魔法が全てじゃないのに農作業が嫌だって地方の町や村の過疎化が酷くってな…」


「どこもそんなものですね。何か名産を作って人を呼び込むか、税を軽くするかして…」


最近はエルク様もよくトーマとお喋りをする。というか仮定の議論をする。もっとフランクなトークでもすればいいのにと思うも、私とトーマの会話も大概なので突っ込むことはやめた。


というかフランクな話題ってなんだ。


最近の流行りとか…?

観劇はまだ見たことがない。そういえばコンサートとかあるんだろうか。

見れば面白いのだろうが、見に行こうという気は自発的には一切湧かない。ドレスや服装も基本的に家にあるもの任せだからなあ。

エルク様に贈る服は逆にこだわりがあって、流行りものとか興味無いしなあ。


「リリアは?農地の過疎化をどうすればいいと思う?」


「ん?まず農作業をやりやすく改良をしたりとか、逆に農作業をやりたい人の募集と、現地に行く場合の補助とか?」


あまり話を聞いてなかったので適当に答えるがふむふむと二人とも頷いた。


「あとは視察の回数を多めにして現地の声を聞いたりすると御領主様のために頑張れるって言ってた」


「お前んとこの領民の話かい。いやでも、そうだな。実際に現地を見ないと分からないこともあるからな……」


真面目な顔でトーマが悩み出すとエルク様も一緒に考える。

優しいなあエルク様と思いつつ、私は別に考えない。

頑張れトーマ。王太子の底力を見せるんだ。


そう思いながらスープを飲んだ。







放課後はソルトに呼ばれているので魔道具ギルドに来た。すると思いもよらないことを言われた。


「なんかショールディン公爵領から異常と言うほどの好条件でうちのギルドの支店を作ってくれと依頼が来たんだが、お嬢なんかしたか?」


「…何もしてはいないけど…」


「そうか。じゃあ裏があるな。納税が五年間の間無しで、建物も準備する、家賃も五年間はいらないし公爵領の鍛冶師を紹介するとか誰だってわかるほど胡散臭いぜ」


それは誰がどう見ても詐欺臭い。

ソルトに提案書を見せてもらったが、五年以降の家賃も……そう高くない。税も同じだ。しかも指定されたココって、公爵領で1番栄えてる街じゃないだろうか。

建物も寮が完備で炉の準備もするとか誰がどう見ても胡散臭い。

どう見ても怪しいが。


「……公爵子息がうちにいるから、これちょっと確認とってもいい?」


「ああ、いいぜ。まあ支店を作るにしても現在うちはもう人材不足で無理なんだけどな!学校を作ってくれた御領主には感謝しかねえが、育つのが待ちきれねえぜ」


「優秀だからって、さらっていかないでね?」


ソルトは確か魔道具ギルドとして出資もしているし講師の派遣もしている。さらに確か本人自ら教鞭もとっていたはずだ。


そう思い、念を押すとニヤリと笑った。


「侯爵家にばっか良い奴は渡せねえぜ」


「まあ正攻法で行くのなら正々堂々と受けて立つよ」


私も同じ顔で笑ってから、ぷッと吹き出して二人で笑い合う。

私はくすくすと淑女らしく笑ったが、ソルトは大口を開けて豪快に笑った。


「そういやお嬢、ダディがボヤいてたぞ。お嬢のデビュタントのアクセサリー作りたかったって」


「ああ。コーディネートに関しては従者に一任してまして。申し訳ないですが張り切って作ってくれてるので今回はそちらで」


「ああ、選ぶのはお嬢だから構わねえが全身が出来たら一度やつに見せてやれ。それで売り込むなり、諦めるなりするだろうよ」


「わかりました」


となると、ふむ。ちょうどロケットペンダントも欲しいしついでにこの後ダディさんの店に行ってみるかな。

最近あってないし、顔見せも兼ねて。


「イェスラ、ダディさんに今から行きますって先触れ出してもらってもいい?」


『まかせーろ』


「なんだ、今行くのか」


「ええ、おねだりしたいものもあるので」


「じゃあこれ持ってってくれ。今月の魔道具ギルドの会報だ」


一応、領主令嬢なんだけどなあ。

まあどうせ行くし良いかと思いながら受け取ると、じゃあこれ土産。これサンプル。これ提出書類といったふうに次から次へと私の上に物を積み上げられた。

いや、さすがにこれは…


苦笑いがこみ上げるが、諦めて抱えると大きな荷物をエルク様が持ってくれた。そのまま魔道具ギルドを出て、エルク様と護衛と並んでダディの工房へ向かう。


街並みも人も賑やかで。


あの看板も。ああ、あっちの看板も。

文字が光ったらカッコよさそう。と、電光掲示板について当たりをつける。

もちろん街のあちこちにロウソクを仕込まれた街灯が光っていたが、魔光灯の需要は案外高そうだ。というかロウソクの消費を考えたらそもそも魔光灯はいいものか。


魔石もそろそろ一般販売をしてもいいかもしれない。

アイザック様に打診をして、魔術棟に行った時に賢者たち(おじいいちゃんず)にも販売認可の協力を頼んでーーーー。


そんなことを考えていると、不審者を見つけた。



「うわあああああん!!」


「お、おい、坊主泣きやめよどうしたんだよ坊主!」


大泣きをする少年(服装平民)と

オロオロして相手をする青年(服装貴族、大荷物の従者付き)


どこからどう見てもイベントと言うか、厄介事フラグにしか見えない。

しかも青年を見てエルク様が「あの方は……」とか言っちゃってるから確実アウトだろう。エルク様の知り合い=貴族だ貴族。


ちらっとエルク様を見て助けますか?と様子を伺うとエルク様は真顔で頷いて、即座に青年に近づいた。


「どうされましたか」


「おうっ、あ、ああ、この坊主が私に突っ込んできて、大泣きを始めたのだ。どうして泣いているのかも教えてくれず困っていてな」


それを聴きながら私は少年に歩みよる。歳の頃は10行かないくらいか。とにかく恐慌状態で話が通じそうもない。そしてうるさくて話にもならない。

とりあえず泣き止ませないと。


「カール、黄色い魔石1個ちょうだい」


『ん?んー、はい』


受け取った魔石を手の中でぐにぐにともんで。


「ああああああああ!」


少年の後ろを指さして大きな声を出した。

一瞬、少年もエルク様達も通行人も全員が黙り込む中、少年の後ろに手を伸ばして何かを捕まえるフリをする。


「ねえ、見てみて?お星様が貴方を心配して降りてきたから捕まえちゃった」


そして、星型に光らない魔光灯を差し出す。

後ろと私をキョロキョロ見ている少年が、魔光灯に触れるとーーーーピカッと魔光灯が光った。


「うわあ!」


「ほらね。お星様が泣かないで、だって」


驚いて魔光灯を空に掲げる少年は、もう泣いてはいなかった。

すごい!すごいと喜ぶ少年を見て、内心でため息をく。



光り物は、子供相手にはとても有効のようだ。


「それでどうして泣いてたの?」


「と、とーちゃん居なくなって……」


「ダイス!!」


大声のせいか、親御さんは直ぐに見つけてくれたようだ。

親御さんは魔光灯を返そうとしてくれたが、少年はとても大事そうに握りしめていたので『お星様』はそのままあげた。


「いつかお星様が消えてお空に戻る時まで、大事にして上げてくださいね」


「はい!ありがとうお姉ちゃん!」



そしてこちらの事件を解決してふりかえると。

エルク様は頭を抱えて。


「会えて嬉しいぞ、リリア・キャロルよ」


青年はニヤリと笑っていた。

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