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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
友達の作り方編
112/177

7


そういえばこの世界はカーテンがないな、なんてことに今更気づいた。


小さな頃はずっとリェスラとイェスラと一緒に寝て、部屋の明るさなんて気にしてなかったから。

エルク様と寝るようになってからは、それどころじゃなくって気にして無かったから。


カーテンが無いこと。

そしてこの世界の夜空がとても美しいことに今日、初めて気がついた。



見上げた空はとても暗い青色で、星がたくさんキラキラしていた。

その真ん中に浮かぶ金色の満月。


そして空を楽しそうに飛び回る、風の精霊たち。鳥のようなものもいれば小人のようなもの達もいる。

時折光る精霊や火の精霊も見える。


綺麗な月の光の下、楽しそうに遊んで輝く精霊たちの姿はどこか幻想的だった。



『こんな月の綺麗な夜は、遊ばずに居られないんだ』


そっと肩に止まったのは、イェスラだった。


『森や空気の綺麗な空を羽ばたいて、仲間と一緒に飛び回って遊ぶんだ。普段は姿を隠している精霊も、こんな日は月の灯りを纏って遊んでるからなんか綺麗だろ』


「うん、すごく綺麗で可愛い。イェスラは行ってこなくていいの?」


「俺、でっかいからこんな街中の空で遊んだら色々と大変だよ?」


急に人の姿になったイェスラは窓周りの物をずらし始めて。

そしてよし!と頷くとそのまま窓の前の広い空間でもっふぁーとして大きな鳥の姿で座って『ほらおいで』と呼んだ。


惹かれるままに、床に座り込んでイェスラのもっふぁーに埋もれる。

これは契約主の特権だ。


「さすがガルーダだねえ。イェスラもこんなに大きいとかっこいい鳥頭だし神々しいね」


『リリも随分大きくなったよな。初めは俺の脚の指くらいだったのに』


「もう10年近く経つからねえ」


くちばしでちょいちょい場所を修正されて、抱卵スタイルで抱き込まれる。

ちょうど体の下にはイェスラの脚があって、その指は巨大だった。爪もすごい大きい。床だって絨毯が敷かれているから全然痛くない。


『……なあリリ、リリにとってこの世界は楽しいか』


「すごく楽しい。毎日が夢みたいであれもこれもやりたくて止まれない程度には」


『やりすぎに注意な。精霊だって働きすぎたら倒れるんだから』


「体力を可視化できて、ここまでが行動力とか分かったらいいのに」


『そんなものなくても普通は行動限界とか制限とか出来るだろ』


たしなめられるようにコツリとくちばしで頭をつつかれた。

そんなくちばしに頭を寄せると、そのまますりすりと頭を擦り合わせる。


『なあ……リリは違う世界を知ってるだろ』


「知ってるよ」


『やっぱなあ。たまーにいるんだ。でもみんな大きくなる前に昔の記憶を忘れるんだけど』


スンスンと匂いを嗅がれたけれどそんなのさっぱりだ。それどころかくすぐったくて面白い。


『リリは早くから早熟すぎるくらい早熟だったからな。記憶が残っちゃったのかな?』


「でも、薄れてきてるよ。当たり前に覚えてたことはまだ自然とわかるけど、記憶の端から消えていってる感じ」


『それは普通そうだろ。俺だってどうでもよかったことは忘れていくよ』


「……まあ、そっか」


『当たり前だろ』


「当たり前か」


ふふふ、と笑って他愛ない話をする。

イェスラの夏毛、そろそろむしってもいい?とか

おっきなイェスラの背中に乗って空を飛びたいとか。

私の魔石のアクセサリー、欲しいとか。

精霊たちでの記念写真だって欲しいとか。



明日はどうしよう。来月は、再来月は。

デビュタントは、フェルナンド様の結婚式は、



エルク様と私の結婚式は。


『リリとエルクの子なら、俺絶対愛する自信がある』


とか自信満々に言われて笑みがこぼれる。


今日も明日も、来年も、その先も。



ずっと一緒にいようね、イェスラ……そんなことを考えてウトウトしていると


慣れた馴染みのある温もりに抱き上げられた。



もちろん。リェスラもカールもエルク様もその時は一緒にいて欲しいなあ…






翌朝いつも通り夜が開ける前に目が覚めると、後ろからエルク様前からリズに抱きつかれていた。

あれ、昨日の夜の光景は夢だったのか。あのすごく綺麗な精霊たちが踊る夜空は。


気になるし、起きたいけど。

さすがにこうも前後をがっちりガードされてしまっては起きれない。



仕方が無いので、体の中の魔力を操って操作の特訓でもする。


体内に満ちている魔力を右腕、左腕、腹部、右足と順次なめらかに移動をし。

細かく見ようと思えばそれだけで感覚が細かくなった。

魔力の吹き出す穴を順次感じて回って、付着物がないことを確認してから。

そのまま空中に魔力を出す。

するとそれは濃いモヤとなった。


リュートと違う、向こう側が見えない濃いモヤ。これが私が行った場合の呪いだ。

私の呪いはリュートより濃い魔力のせいか、モヤが触れて呪われると一切の魔力の行使が出来なくなる恐ろしいものだった。


コレのことは、さすがにやばいと思って黙っている。研究してること自体も秘密だ。


ーーーー生涯これを使う機会が無いことを、祈っている。



この濃霧状の魔力も何か他に使えないかなあ。

そんなことを考えようとして、そういえば今夜はきっとメルトスに『おほしさま』について聞かれるだろうから使用案をまとめないと。


これはただの光魔法だ。特に特筆すべき点もない。


が。


電光掲示板とかどうだろう。店名を光らせるとか。

あと暗闇を怖がる小さな子用の照明器具の代わりとか。まあ、そんなもの普通に存在するか。


だとしたら自動点灯器ほど面白味はないか。



んーんー。

特にやる気がないと、特にいい案も出ないので。


諦めて目の前の白銀の可愛い妹をむぎゅっと抱きしめて堪能して、時の経過を待った。





「じゃあジャックはトーマと同じクラスなのね」


「はい。と言ってもシャルディン殿下とは親しくありませんが」


「そう。まあ私のそばにいたら接する機会も増えるかもしれないわね」


「仕事の方はついていけそうですか?君とルチルも」


「はっ、私も彼女も食らいついていく所存です」



学園までの移動の馬車。そこそこ広いゆったりとした四人乗りのはずの馬車だったのだけれど。



狭い。


現在乗車しているのは御者台に護衛と御者。


私とエルク様が隣に座り向かいにジャック。その横にカール。

私とエルク様の膝の上にはリェスライェスラ。


人三人+精霊三人は何となく、密度が濃い。

もう少し大きめの馬車の注文をするか……いやでもこの馬車ならエルク様にピッタリくっついてもなんの問題もない…いや広い馬車でもなんの問題もないのだが、悩ましい。


いやでもジャックに見られているとなんか気まずくてエルク様と少し距離を開けて座らざる得ないので、こう、車のように同じ方向を向く四人乗りの馬車とかどうだろう。


悪くは無いと思うが、そこまでいいとも思えない。


車には全くこだわりも無かったからか馬車にもこだわりはないんだよね。



新しい馬車もいい案は出ないし、現状維持かジャックだけ別の馬車を準備する方が良さそうか。


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