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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
友達の作り方編
110/177

5


「リリア様!これって夜だけ点くんですか!?キャロル領の魔道具はすごいって聞きますけど何回くらい点灯できるんですか!?」


はしゃいで興味津々なのは意外にもルチルの方だった。

先程までの緊張はどこに行ったのか、凄い!凄い!と感動しきりのルチルと難しい顔で考え込むジャック。


「光源察知ではなく魔力察知ですので今は昼でも点いてしまいます。ですので昼は点かない様にここの部分に専用の蓋をしています。点灯回数は今調査中で、少なくとも試作として設置してから3ヶ月経ちますがまだつかえていますね」


「3ヶ月……凄いなあ、こんなに明るいなら夜でも刺繍が出来そう…」


「あら、ルチルさんは刺繍が得意なんですか?貴女の先輩は色々なデザインや刺繍も得意なお針子でもあるので仲良く出来るかもしれませんね」


「本当ですか。それは楽しみです」


嬉しそうに笑うルチアはどことなく打ち解けてきたようだ。

私より少し背の高い彼女は先程と違いウキウキとしているのが見ていてわかる。


「まあ……今はかなりの修羅場なので、仲良くなる暇があるかどうかはわかりませんがね」


先日、エルク様の写真入りのアクセサリーをデビュタントに着けていきたいと言った時のレティシアの笑顔と、速攻逃げようとして捕獲されたネルを思い出す。

いやアクセサリーは専門分野のソルトに頼んでも良いんだけど。

紹介するよ、と言ったのにレティシアは今回だけは私たちに!と言って決して引かないので任せたんだけど。


なんか日に日にレティシアはやつれていくけど大丈夫かなあ。


「貴女の仕事は夜でも無茶な仕事をするリリアを止めることでもありますよ」


「エルク様!」


「話し声が聞こえているのに誰も来ないので迎えに来ましたよ」


奥からパッパッパっと電灯を点けながらエルク様が来たので、駆け寄ると自然な仕草で手を差し出された。

その手を、迷いなく握って軽く二人を振り向く。


「ルチル、ジャック、こちら私の旦那様のエルク様です。エルク様、メイド見習いのルチルと従者見習いのジャックです」


「「よろしくお願いします!」」


「よろしくお願いします。リリアの側仕えは大変ですが、頑張ってくださいね」


ここで話を振り返ろうか。

二年もあれば、色々と出来た。


実際に商品化して、売られているものから。

何かに問題があって市販できていないもの。

または市販量産するために、試作最中のものとか。


それらのほぼ全て使われている場所。






それこそリリア執務室(魔境)だ。





広い、教室ほどの広さの執務室の壁にはズラっと棚が置いてある。まだ空いている棚もかなりあるがそこにも今後資料が置かれていく予定だ。

そこにはメルトスと、マイクが黙々と書類とにらめっこをしており机もとりあえずいまは七つ置いてある。


「お嬢様、そちらが新しい従者見習いとメイドですか」


「ええ。忙しいところを抜けてごめんなさいね」


「とりあえず二人は預かりますのでお嬢様は続きを」


暗めの茶色の巻き毛がキュートなメルトスの目が笑っていない笑顔(仕事しろと要求)を受けて、はいはいと笑いながら席に着いて、机に積まれた書類を見る。



「メルトス、ジャックとルチルだ。二人とも何かわからないことがあったら彼か私に聞くといい。ああ、ジャックは明日から学園はどうやって行くかい?私とリリアの馬車に同乗でもいいかな?」


「はい、それでお願いします」


「わかった」


書類にサッと目を通して、依頼された魔道具の詳細を書くために手で白紙の紙を……3枚かな。3枚放る。

それを直ぐに風魔法で浮かせてそれぞれの前にプリントアウトを使いポンポンポンと焼き付ける。

そのまま風魔法で手元に戻して、机にいたリェスラがクリップでそれをパチンと止めた。


それを予備含め3セット行い1セットはメルトスの机の上に飛ばし、2セットは従者見習い行きの置き場に置いた。ここに置いておけば見習いが分類別に仕分けて片付けてくれるのだ。メルトスの方は、先方……恐らく魔道具ギルド行きになるのだろう。


次の書類は領地にある学校からの備品購入の依頼だった。特に目立ったおかしな所もない。

必要数も生徒数とさほど変わらないし、要求金額もまあこの備品なら順当だろう。

ルーズリーフの値段は知っているので、資料は見なくてもいい。

というわけで許可のサインをしてメルトスに回す。



空中に紙をふわふわ飛ばしながら、黙々と作業を進めていると突然ゆったりとした音楽が聞こえた。窓際でイェスラが『発音機』の1つをいじって記録してある音楽を流していた。

私の意識がそちらに向いたのを確認するとイェスラが飛んできて、私と同じく紙を空中に浮かべて先程頼んだ事の報告書をスラスラと焼き付け始めた。


「ありがとうイェスラ」


『ほーい』


イェスラからの資料を見て、先程保留にしておいた書類を再度手に取り違和感を感じたところが不備だったので丸をつけて再提出行きにする。これは城からの注文の見積もりだったのでエルク様に回す。



「なんですか、あれは…」


「あれに慣れてください。あれが、リリア・キャロルです」


「あの、メルトス様…あのお嬢様の仕事を止めるんですか…?」


「ええそうですよ」


「あんなすごい速さで紙を飛ばす人相手なんて無理です!」


「そうでも無いですよ。リリアを止めるのは簡単ですよーーーーーリリア、お茶を淹れるので飲みませんか?」

「飲みます」


エルク様に声をかけられて、即座に紙を机の上に置いて反応をすれば何故か新人ふたりが呆気に取られた。


即断で反応した私を見て笑いながら、エルク様は……現在量販準備中の逸品!高温石版(ホットプレート)の上に置かれたお湯が入った水差しから、ティーポットにお湯を入れた。


この高温石板は石全体が低温、中温、高温になる仕様で、火の調整が難しい暖炉に変わる逸品として売り出す予定だ。

厨房や野営などで使えると売り込む路線の物になる。


……なお、超低温で広範囲(床暖房)も現在作成しようかと隙を狙っている。

床暖房、良いよね。

残念ながらこの世界は床に直に座るのは行儀が悪いが、ベッドなどで利用可能だと思う。



寒い地方だと重宝出来ると思うんだが、そうなると石のサイズがネックだ。貴族向けに石のまま作るか、それとも布で…ホットカーペットにするか。悩ましい限りだ。まだ考えが纏まりきっていないのでこの案は私の雑記の中だけの案だ。


「そういえばリリア、新人二人にアレは渡さなくていいんですか?」


「ああ。二人ともちょっとこちらに来てください」


私の机の前に二人を呼んでから、引き出しの中から新入りに渡そうと思っていたものを取り出す。


「これからメモをとることがあると思いますのでこちらのスケジュール帳とペンと、試作のペンと、試作のインク落としを差し上げますね」


なお、スケジュール帳も試作品だ。

アイザック様の無茶ぶりで知り合ったルクタール伯爵との現在共同開発をしているものだ。

日付が書かれた小冊子。一応これは最新改良型だ。


また試作のペン。これは温度変化の魔法陣を2つ利用した、インクを使わずに焼き付けで書いていくことが出来るペンだ。芯の部分は高温、外の部分は熱くなったら持てないので冷却の効果が出るようになっている。


これだけ発表をすると、インクで書くペンの需要がガクッと落ちるかもしれない。

そう懸念して試作したのはインク落としだ。

ペン形状のそれは先端がスポンジのようになっており、水魔法が仕込まれている。


起動すると、水魔法がインクの水分を戻し浮き上がらせてペンの中にインクとなって戻る仕様だ。


既存のペンは消せる存在として。

新作のペンは消せない存在として棲み分けをして売り出していこうと企んでいる。



またインク消しは染み抜きなどにも使えないかなーと思案中だ。


それらを説明してから渡すと、新人二人は間抜けな顔で口を開いて固まった。



「というわけでこちらは試作品ですので、今度使用感を教えてくださいね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 推敲 >「話し声が聞こえど来ないので迎えに来ましたよ」 ↓ 「~すれど」として使う助詞としての「ど」「ども」は「~といえども」などの慣用句化した一部以外は、現代ではほぼ文語なので(小説の場合…
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