10(娘を子供にする存在)
一人娘リリアはずば抜けていた。
すこし発育がいいかな?と思っていた娘は魔法、頭脳ともにずば抜けた成長を見せ
わずか五歳児でありながら大人でもそうそう勝てぬ魔力に、侯爵家の領地経営を立派にこなせそうなほどの賢さを手に入れていた。
どんなふうになっても可愛い娘だ。愛してる。
けれどあまりにも早く生き急ぐ姿に不安を覚えていたのも事実で…。
娘の成長ややりたいことを妨げることはせずむしろ望むならばと成長の手助けもしてきたが
まだまだ子供でも居てほしかった。
そんな相反するような願いを抱えて過ごしていたある日。
王城に御呼ばれしたその日。
娘を子供に変える存在に出会った。
真っ赤な顔でうるんだ瞳で、動揺しきったその姿。
もう誰がどう見ても恋愛感情をいだいてます、そんな姿を見せた娘に
殿下をなだめていた陛下も、主人も、私も、惚れられたエルク様もかたまった。
そのまま別室にエルクさまに連れていかれて、ぽろりと大好きとか言ってることに気づかないまま照れまくる娘が可愛くて、可愛くて。
娘が顔を隠していることをいいことに手招きでエルクさまに近づいてもらい
「リリア嬢、お誕生日おめで「リリア!リリア!」」
名前を呼んでもらっただけで感極まり気絶した娘。
「…申し訳ない」
主人が慌てて医務室にリリアを連れて行くのを見送ると、悪くないのにエルク様は謝罪をしてきた。
この方は王宮ではだいぶ微妙な立場にある。
立場にあるが、確かこの方は……
「ねえエルク様。貴方たしか婚約者はいらっしゃらなかったわよね?」
にっこりと、微笑んで捕まえにかかる。
娘の駆け足成長を止められる存在かもしれない。
そんな貴重な存在、うちにほしいに決まってる。
ねえリリア。お母さん、頑張っちゃうわね。