赤大蛇
ちょいとグロテスク
噂の根源とは実にしょぼい(´・ω・`)ものだ。
だからこそ人は事実より大きく語ってしまうものだ。そして語られた噂は人へ人へ語られるたびその噂は大きく虚実に近づくが、虚実が加わる度信憑性は薄れ最終的には漠然とした噂が残る。漠然とした噂は証明ができないため人に面白がられ今度は逆に語られていく。 それが噂の本質だ。
では悪魔で考えてみよう。悪魔とは人の感情から生まれ、育ち、変化し、進化を遂げる生き物。縮めてポケットデーモン。まあそんなことは置いといて、語られる噂が悪魔だった場合 結論
「後ろだぜェ 夕!」
「避けられない!ああああああああ」
「バカ餓鬼がああ、構えろ夕!」
「痛い痛い痛い痛いいいい。死ぬうううう」
結論から言おう、噂は現実となり悪魔は実現する。
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「放課後どころか真夜中じゃーん。」
「しっー。静かにしろ、ばれたら停学かもしれないぞ。じゃあみんな集まったし行くぞ。」
「ええ、楽しみだわ。」
「噂だよな…。退治しないよなぁ…。」
現在僕らは真夜中の学校に来てていた。昼間話した悪魔みたいな噂についてだ。
具体的な詳しい内容についてはまだ聞いてないが、やけに前に進んでいく様子を見てから詳しい場所とかはわかっているらしい。
「着いたぞ。ここだ。」
仁が連れてきた場所は、体育館近くの第3体育倉庫だ。体育倉庫は校舎から近く普通の一般生徒が簡単に立ち寄れるところにある。僕も実際何度か体育の準備する為先生に頼まれて何度か足を運んだことがある。
「ほんとにここなのか?。何度か来たことあるけど、どこも怪しい点なんて見当たらなかったぞ。」
「それはそうさ、ここの噂はカップルにしか被害にあわないらしいからな。」
「最低だよ仁!自身の好奇心のために私をおとりにする気なのね!。」
「まぁあまてまて、お前が行くとはだれも言ってないだろ!」
「まさか仁 夕とカップルだったのね!この裏切り者!畜生!」
「「そんなわけねぇだろおおおお」」
ぺしぺし。
((この人たちさっき自分たちが言った大声が何やらの話はどこいったのかしら。まぁいいわ、それより…))
「なら誰が行くか決めましょ。ここは公平にくじで二人を選ばない?」
「ああ、みんなで行くっていうのは条件にあわなそうだしな。」
「うん!それだったら公平だよね!」
そうして即席のくじをイヴは作った。まぁイヴが作った時点で嫌な予感はしてたんだが…。
「あー残念だーハズレだよー」
「俺もだ。ってことは」
「私と彼みたいね。」
「ああ。」
まぁわかっていました。明らかにくじに関係ない赤い紐がくじを結んでいた時点で察しがついていたよ。
すると仁が噂について話してくれたあと近づいて耳元で
「なっちまったもんはしょうがねぇ。行ってカッコいいとこでも見せつけてやれ。」
「任せとけ」
そう言った後僕とイヴは2人で第三倉庫に向かう。入る為には体育館を経由する必要があるため少し二人で歩く。
「わかっていると思うけど、もしホントなら覚悟してなさい。」
「ああ、でも噂だろ?ホントにあるのか?」
「わからないわ。でも、仁って言ったかしら、あの子少し普通な人間と違って神気が少しあるみたいだしいる可能性が高いわ。」
「神気って普通の人間にあるのか?」
「あなたみたいな平凡な人間にはないわ。でも何らかの形で目覚めたのか、元から持ってたり持ったりする人間もいるわ。でも実際持っていても役に立つことなんてないわ。」
何その死にステータス。昔からいたけどそんな素振り見せたことなかったけどな。どちらにしろ重要なのはそこじゃなくて、
「僕その悪魔倒せるのか?」
「倒せると思うわよ。こんなとこに沸く悪魔だもの。」
それを聞いて安心した。いきなりのラスボスとかあるからな実際。
そんな話をしていると倉庫にたどり着いた。一見何の変化がないが、奥の方にナニカが動いてる。そんなとき仁が突入前に言っていた噂を思い出す。
倉庫には怨念が込められた蛇がいるらしい。
その蛇は、体育倉庫に入る男女二人を絞め殺してその体液を身に染み込ませるせ身を赤くさせる
そんなことからついたあだ名が赤大蛇。
赤大蛇は体長20mもあるともいわれてることから、大繩に取り付いた怨念じゃないかって噂だ。
体長20mそんなことを言っていたが、動いているナニカはそんなに大きくはない。手に掴んでいる紅蓮を再度強く握ると、奥のナニカはこちらに襲い掛かってきた。
「うわああああああああああああ。噂はホントだった!イヴ二人を!」
「ええ、こちらは任せるわ」
そう言いイヴは2人を避難させるために僕と別れた。
こっちは2人で頑張るしかない。ああ、怖いな。なんだこの縄、紅蓮みたいに表情だけ表すんじゃなくて、縄に直接顔、いや顔というより大きな口がついている。例えるなら巨大な口ミミズだ。
「しっかり気を保てよ夕、楽しいのはこれからだぜェ」
「楽しいものか!、頼むぞ紅蓮。」
「ああ、だが避けろここは狭い!引きながら戦うぜェ夕!」
体をうねうね動かした後、大蛇は僕のいる場所にとびかかる。僕は急いで倉庫から出て、隣接の体育館側に移る。
僕が先ほどまでいた足場は溶かされていた。あの大口から何か出ていたのだ、もし受けていたらと想像するだけで体の武者震いが止まらない。
逃げ込んだ後の大蛇の動きは単調だった。紅蓮が合図しその場にはとどまらず逃げ切り、紅蓮がやつを刻む。見た目のインパクトに対し、簡単に倒せるのではと思ったが何か不安が募る。そしてその不安はすぐに的中してしまう。
「うーん どうしたんだ紅蓮、指示が遅くなってるよ。うわあっと、、」
「ああ、いや何か気がかりでよ。」
「気がかり?」
「あいつの首筋何故か固いんだぜェ、それにあいつはいまだに倉庫から体を伸ばし続けている」
確かに言われてみればそうだ。仁は20mほどだと言っていた。それにしたらなんだか長い。それに固いというというのは普通とは違う異常事態を知らせているのでは?不安が募っていく。
「もう一度あのわんこを倒したように夕、おめぇが刻め。俺様じゃ斬れない」
もともと紅蓮は、武器だ装備して力を発揮するのだろう。でもあの、ミミズに近づくのはちょっとなぁ。怖いよりグロテスクすぎる。悪魔ってなんでこんな気色悪いんだ。そうもグダグダ言ってられず。
「わかった。やってみる。」
「おう、少しは自信が出てきたか?その意気だやってやれ。」
そう言って紅蓮は刀に姿を変える。刀身だけはいまだ紐状態で伸縮しながら、牽制しながら戦ってくれている。隙を作ってくれるつもりだ。紅蓮の合図を待ちながら僕は瞑想する。
あの狼を斬れたのは偶然だ。なぜならそれ以降勇気がなく出せていないからだ。プラプラ退治の時にイヴに言われやってみたがうまくはいけなかった。だけど今は出せなくても出さないといけない場面だ。考えろ、あの時の場面を、そうだあの時は刀と紅蓮と気持ちが一緒になってた。
耳を研ぎ澄ませ紅蓮の声を聴け、斬れないものなんてない筈だ。
偶然を必然にしろ。
「いまだ踏み込め」
「紅蓮一刀流 一刀断」
その一刀は僕がイメージする一刀と同じものだった。ポトリ、大蛇の首が落ちる。大蛇はその場に転がった。
「やっ、やったな夕!!」
「うん、できたよ、出せたよ。」
僕たちが喜んでるとき、悪魔は何を思うのだろう。恐らく抱く感情は 憎悪。
その瞬間、大蛇はほどけていった、僕が断った場所は首ではなかったのだ。倉庫からもう一つの口が伸びてきてたことに僕は気づいてなかったのだ。
「後ろだぜェ 夕!」
「避けられない!ああああああああ」
「バカ餓鬼がああ、構えろ夕!戻ってくるぞ」
「痛い痛い痛い痛いいいい。死ぬうううう」
体が熱い、体が痛い、痛みでくるってしまいそうだ。僕の横腹は大蛇に喰われて溶かされていた。血は湯水のようにあふれてくるように感じる。
「安心しろ、かすっただけだ。軽傷だ。」
そうは言ってもつい先日まで一般人だった僕はこんな痛み体験したことがなく、思い出すのはあの夢の恐怖そのものだった。動けない僕を紅蓮は僕の腹の周りに体を一周させ、遠くの壁にアンカーのように刺して無理やり引っ張り緊急回避をする。大蛇の攻撃を避けられたが、僕は壁にぶつかりその場に横たわる。
まるで夢で見た彼女じゃないか、ああ死んでしまうのか脳裏にそんな言葉がよぎる。
誰も僕を助ける力を持っていない、僕も紅蓮も彼女も。
笑えるよなこの期に及んで僕がまた彼女に戦えよって、助けてって縋るんだ。諦めが悪いのがこの僕の本質なのかもしれない。いや違うな、何もできない弱虫だろ。粋がっただけだ、生きたかっただけだ。
笑えねぇよ。動かないのは傷のせいじゃない恐怖心だ。死んでしまう可能性がこの剣を握った拳を緩めるんだ。
勇気が欲しい。怖いよ。一人で死にたくない。何で誰もいないんだよ。
誰か…
「あら、何をしているの?憧れを持った天使さん」
反対側のドアが開かれ、聞き覚えのある声が体育館全体に響く。えーっと名前は確か…
「お怪我をしているようねりルが治してあげましょうか。いえそれよりも先にこの気味の悪いミミズを退治しなければ。」
GW限定で毎日投稿しましたが、次回更新は未定というよりストック切れました。