遭遇
確かに今声の主は天使といった。間違いない。聞き間違いなものか、階段下からはあのナニカが放っていたような警告の気配を感じたんだ。
「いいこと?あなたは特別。本来ならあり得ないことよ、だからこそあなたも天使だということもなるべく隠さなければいけないわ」彼女の言葉を思い出す。
そうだ。僕は正体を明かしてはいけない。ばれたら何が起こるかは薄々イメージがつくが最悪死ぬだろう。彼女が言った、二人とも死ぬとはそういうことなんだと思う。
((て、違うだろまずはこの状況をどうやって乗り切るかだ))
「早く言いなさい、りるには時間がないの。」
今りるって言ったか?女の子?よく聞くと声は彼女に似たとてもかわいらしい声だった。とりあえず女の子なら勝機はある。こう見えても理紗相手には、仲良くやってた。それと同じようにすれば…。
「やぁお嬢さん(キュピーン)」
「…。」 そこには逆立ちをしてどや顔をした夕が立っていた。
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そうあれは、幼少期 初めて理紗に会った時の話だ。
神代 夕 幼少期 夏。
「兄ちゃんももう少し手加減しろっていうの」
僕は兄貴がつけてくれる稽古から逃げて、山のふもとの川沿いを歩いていた。すると、何やら誰かがすすり泣く声が聞こえてきた。声のする方へ駆け寄ってみると、そこには一人の少女がうずくまって座っていた。夕日のような美しいオレンジ色の髪で真っ白なワンピースを着ていた。僕はその少女に目を奪われていた。すると少女がこちらの気配に気づいて
「誰…?。お母さん…?」
悲しそうな口調でこちらを訪ねてきた。僕はあわてて
「違うよ、僕の名前は夕。村一番の剣士だ」
「おかぁあさんじゃない。うわああああああん」
((え、えっとどうすればいいの??わからない、怖い。うッ…))
「え、え、え、うわああああああん」
僕までも泣き出してしまった。初めて見る女の子の泣いてる姿に自分は何もできずに、取り乱したのをよく覚えている。そして少女は言ったんだ。
「何であなたも泣くの??」
「わかんない…ぐすん。どうすればいいかがわからないから」
「だったら、何か面白いことしてよ…うえーん」
そう。女の子と悩んだのことで悩んだとき、男なら笑わせるのだ
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「え、引くわ」
可愛い声して残酷で冷淡な言葉を吐かれた。渾身のギャグは空振りに終わった。
「それより誰あなた。りる見たことないし、早く答えなさい」
「僕は秘匿の命令が課されているので、黙秘権を使用させていただきます」
そう、嘘をついてこの場から一刻でも去ろうとした時だった。
「嘘ね。」
そう言って僕の隣の壁に焦げ跡がつく。なんだ一体、彼女の手の中の箱から電気?稲妻が走って傷つけた。
「いやいや、ほ、本当だよ」
額に汗をかきながらも、僕は逃げ道を探す。こんな相手勝てるわけない。というよりどうして嘘がばれた。そもそもここまでの経緯を話せない現状騙すしか道がない。
「言っておくけど、りるは嘘を見破れるの。この神具がそれを証明してくれるわ」
なるほどそういう原理か。心までは読まれないのはいいが、厄介だぞ。
「あらリるがいつ心を読めないとでも言ったかしら」
!?まずい最悪だいきなり詰んだ。
「お前心が読めるのか」
「さぁどうかしらね。次は死なない程度に炙ってあげるわ。はやく答えなさい」
どうする、考えろ。心を読まれ…うん?心が読めるなら何故あいつは答えろと言うんだ?。そうかあいつは心は読めてない!だったらまだ逃げられる。作戦を考えろ。
頭が冴えている。どうしてだろう。あぁここで捕まったら死ぬかもしれないのか。
でもこの作戦がうまくいくとは限らないし、怖くて足が震えているしもう無理かもしれない。
負けるのは構わない。勝てないもの。でもせめて…生きたいな。ここで死にたくない。捕まったら殺される。そしたら、そしたら彼女までも…。
だから生き残れ。臆病者の僕。夢の中のような勇気をもう一度振り絞れ
必要なのは強さだ。逃げ切る為の強さだ。
「僕は、、に、に、、逃げる!」
「対象を捕獲する」
電撃が展開される直前僕は思い切り飛び出す。逃げるために十段飛ばしで駆け下りろ。
膝が痛いがかまうな、上から注いでくる電撃は垂直に先ほどまで夕のいた床に降り注いでいた。
((狙いが定まらない))
本来ならよけられない電撃も学校の階段の性質上、折り返し階段な為、電撃が一番下の階まで届かない。
それに加え幸運なことに本日、天使りるは悪魔退治の業務を終えた後であり、疲弊し電力も弱まっていた。
「一階!!あとは廊下を抜ければ」
しかし遮蔽がない廊下では、電撃はよけることはできないかに思えた。
が、それを夕は把握していた。
「残念だったわね。眠りなさい」
そう言い彼女の放った電撃は夕には当たらなかった
「!?」
((電撃なら、もしそれが彼女の思い道理に動かせないものだとするならそれは、電気の性質上、金属に向かっていくはずだ!!。))
これは賭けだ外れたら力ずくで頑張るかけだ。でもあの焦げ跡、彼女の放つ電撃は対象に向かってまっっすぐ飛んでいた。だから下駄箱の近くなら金属で引き寄せ…。
が、壁が焦げるほどの高電圧。金属製の下駄箱で引き寄せられるも、電撃は別れその場を一体に広がり放電となった
「あああああああああああ」
「うぐっううう」
二人の悲鳴が廊下で反響する。
逃げ切れば勝ちだ。足よ、動いてくれ痺れながらも玄関を出ていく
「待ってください。あなたは、あなたは私たち天使の敵ですか??」
背後でそう聞く少女の声があった。
僕は天使の敵なのか?確かに僕の存在は天使にとって悪かもしれない。でも僕は僕の心の正義の心を信じたい。夢の中の僕が動かした心。それに憧れたから頑張れたのだ。抱く心が正義なら
「僕は正義の天使に憧れた、天使だ」
人でなくなった僕はこう答えた。そしてよろよろになりながらも僕は、彼女のもとに向かっていった。