何もできなかった。夢
君は天使を見たことがあるだろうか。
僕は見たことがない。当たり前だろう、なぜなら非現実的な生き物であり、空想上の生物だとGO●gle先生も言っているからだ。
だけどいると信じている。僕はいまだにサンタを信じているし、丑三つ時にお化けが出ると信じている。
信じたらいつか出会えると思っているからだ。信じる者は救われる、そうあの時までは思っていた。
これは僕が信じた天使とは全然違った天使に出会う話だ
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「じゃあな、また明日」
そう言って親友の仁に別れを告げいつもの裏道に入っていく。
学校の授業を聞き疲れ、体育で適度に運動し、帰り道は2人で帰る。
そんな日常の風景の片隅そんなはずだった。
いつもの静かな裏道っではなく。どこか騒がしい。
聞こえる…誰かが呼ぶ声が。誰かが叫ぶ声が。
僕は声が聞こえる方を目指し、駆けだした。
ビルとビルの間の角を曲がると、目の前の景色に映りこんだのは、翼の折れたエンジェルと称してもおかしくはない容姿をした傷ついている女の子の姿だった。
彼女の容態は酷く腹部からの大量の出血に加え、背中に生えた?翼が変な方向を向いて血が出ている。
「大丈夫ですか、」
そう駆け寄ろうとしたら、僕の体は急に止まり物陰に隠れてしまう。
恐らく防衛本能だろう。彼女の向かい側に浮かぶナニカに僕の体は心より先に反応した。
なんだあれ…。黒髪の女の人?いや違う少し口が裂けてる。それになんで空宙に浮かんでいるんだ?
雰囲気暗いというより禍々しくて気味が悪い。
ビルの壁に寄りかかって倒れている彼女に化け物は寄っていく。恐らく殺すつもりだ。
殺人現場なんてみたことないしわからないけど、あの目、悪魔の目とでも称そう化け物のあの赤い目はとにかくやばい。
僕は物陰からその様子を見続けるのだろうか、目の前で殺されゆく天使のような女の子を?
「冗談じゃないぞ…」
小さく呟く。自慢ではないが喧嘩なんて勝ったことないし、武術なんて実家の剣術だけで何にも役に立たない。
それでも心だけはいっちょ前に正義感が高い、臆病者だ。
だからこそ僕は今立っている場所に自分でも嫌気がさす。だからこそ渾身のくさいセリフでも吐く
「おい、待ちな化け物。彼女をこれ以上傷つけるんじゃねぇ」
「何でここに人間が…?」
瀕死な彼女がかすれた声で囁く。ああ僕もそう思うよ。何で臆病者の僕があんな化け物から彼女を庇っているんだと。
化け物は薄っすらと笑みを浮かべていた。
((何嗤っていやがる。この化け物。ん?なんだか口周りが赤い??))
クプッ え?なんだこの音。それになんだか暖かい。そうお腹周りが特に。
視線を下に向けると僕は真っ赤なお風呂に入っていた。いやそれは正しくはない。
僕のお腹は半分なかった。喰われたのだ。
あぁ…理解した。僕はここで死ぬみたいだ。
天使のような彼女を庇って死ぬ。なんて光栄な臆病者にしては栄誉ある死だ。
あぁ…誰かが呼んでいる声がする。彼女の声みたいだ。なんて可愛らしい声なんだ。
惜しい人生だったな。親友の仁になんて詫びようかな。家族になんて言えばいいかな。
「あなた、、、私が、、死な、、、い」
優しい彼女の声を聴きながら、眠る少年 神代 夕という人間は栄誉ある死によってその日死んでしまった。