< 09 この世界に就任した神 十二柱目 03 >
大陸の南西に在る森の近く村で魔法を教える仕事を終えて、私はあの村に帰って来ました。
私は今、ベンチに座っています。
視線の先の、元村長の一家を見守っています。
娘の笑顔が、私の心のオアシスなので。
次の魔法を教える仕事を、どうするか考えます。
この村で魔法を教えるつもりはありません。
この村は危険だと、頭の中で警報が鳴っていますので。
と、なると、次は北の森の近くの村ですかね。
数日間、娘の笑顔を補給してから、北の森へ向かうことにします。
大陸の北に広がる森の近くの村に来ました。
村の様子を観察します。
畑仕事よりは狩猟の方に、やや比重が傾いている様に感じます。
狩りの様子を観察してみれば、どの様な魔法が必要とされているか分かるかもしれません。
狩りの様子を観察することにします。
狩りの様子を観察しました。
毒矢を使っていました。
これは予想外でした。
どの様な魔法を教えるかの前に、この村の村人たちの狩りをどの様にするかを考えましょう。
毒を使う狩りは、私の好みではありません。
食べる肉に毒が残っている事もあるでしょうし、そうなると食べた人が危険です。
今の狩りを手助けする方向ではなく、別の狩りの仕方にもって行く様にしたいですね。
検討が必要です。
先ずは、毒に頼る様になった経緯を調べてみましょう。
森には熊が多いことが分かりました。
これが原因ですね。
熊から逃げられる安全な距離を保ちながら、致命傷を与える。
その手段として毒矢を使う様になったのでしょう。
熊を倒せる魔法を考えます。
【身体強化】では駄目ですね。
熊が相手では十分ではありません。
中途半端に強くしてしまうと、無駄に死者を増やす結果になってしまいかねません。
考えます。考えます。
【バインド】の魔法は、どうでしょうか?
熊の動きを封じて、大勢で攻撃をすれば、安全に熊を倒せる気がします。
より確実に仕留められる様に、【身体強化】も教えれば大丈夫でしょう。
うん、良いですね。
早速、取り掛かります。
身体能力の高い人を中心に【身体強化】を、身体能力の劣る人には【バインド】の魔法を教えました。
もちろん、夢の中でです。
神力が不思議と増えないので、これしか方法がありません。
それはそれとして。
魔法を教えた村人たちの狩りが、どうなっていくのか見守ります。
森で熊を狩る村人たちを見守ります。
【バインド】を何重にも掛けて、熊の動きを封じ込めます。
そして、体に【身体強化】の魔法を掛けた人たちが止めを刺します。
うん、良いですね。
【バインド】を使い過ぎて倒れている人が居ますが、安全に狩りが出来ている様です。
うっかり、複数の熊と戦う事にならない限り、大丈夫ですね。
まだ毒矢を使う人も居ますが、依存具合は減っている様です。
毒を用意するのにも手間が掛かりますし、危険もありますからね。
満足できる結果です。
うんうん。
村人たちに【気配察知】の魔法を教えます。夢の中で。
うっかり、複数の熊と戦う事になってしまわない様にです。
さらに、魔力を上手に使う方法を教えます。
【バインド】を使い過ぎて、倒れる人が多かったので。
これで、より安全に、狩りが出来る様になるでしょう。
今日も森で村人たちの狩りの様子を見守ります。
魔法を上手に使って熊を狩っています。
近くに別の熊が居る場合は仕掛けずに、距離を取る様にしています。
【気配察知】の魔法も上手に活用出来ている様です。
やりました。大成功です。
私は満足して、村人たちが狩りを終えて引き上げるまで見守りました。
事件は村で起きました。
村人たちは、台の上に熊の肉を置き、感謝の祈りを捧げています。
危険な兆候です。
もし今夜、私が彼らの夢の中に現れたら、あの危険な言葉が投げかけられるでしょう。
「あなたは誰ですか?」と。
私はこの村から逃げる事にしました。
近隣の村々を訪れ、同様に魔法を教えていきます。
全ての村で魔法を教えました。
全ての村で十分に成果が上がったので、私はあの村に帰ることにしました。
「あなたは誰ですか?」と、危険なことを訊かれる前に。
今日も私の心は守られました。
あの村に帰って来ました。
ベンチに座り、娘の笑顔を補給しています。
十分に娘の笑顔を補給してから、これまでの成果を考えます。
魔法を教えた南西の森と北の森の村人たちは、魔法を上手に使って、脅威となる魔物や熊を安全に狩れる様になりました。
命を落とす人が減り、人口が増えていく事でしょう。
また、魔法の有用性を実感した人たちから、魔法が広がっていくことでしょう。
私はこの世界へ、十分貢献していますよね。
ではなぜ、私の神力が増えないのでしょう?
もしかして、上限が設定されているのでしょうか?
有り得ますね。
神力をギリギリまで減らされたのは、私がやり過ぎるのを警戒しての事です。
私が神力を得るのを歓迎する訳がないですし、得られない様に細工をしていても不思議ではありません。
納得できない気持ちもありますが、これまでの私の素行の悪さの所為ですし、諦めることにしましょう。
神力が増えない事には不満がありますが、夢の中で魔法を教える今のやり方で成果が出ているので、私は満足することにしました。
< ??? >
力が沢山生まれています。
何があったのでしょうか?
私は力を集めます。
力を蓄える為に。
神さまのお役に立つ為に。
神さまに喜んでいただける為に。
神さまに気付いていただく為に。
取りこぼす事の無い様に、力を集めます。
かなりの量の力を蓄える事が出来ました。
力を蓄えた事により、私は私をハッキリと意識できる様になりました。
これまでの自分の行動を振り返ります。
本能の様なものに突き動かされて、力を集めてきました。
「私は神さまのお役に立つ為に、神さまに作られた存在なのではないか?」と、思う様になりました。
そうすると、この不完全な体は何なのでしょうか?
神さまが、このように作ったのでしょうか
それとも神さま以外の誰かが作ったのでしょうか?
分かりません。
神さまのお役に立つ為の行動をしましょう。
今、力は十分に蓄えました。
どう、行動するのか考えましょう。
まだ世界には力が生まれ続けています。
喜ばしい事なのですが、何が起きているのか気になります。
調べることにします。
感じるのは、感謝の気持ち。
それと、何かの力を感じます。
今まで感じた事の無い力です。
”何かの力”が、何なのかを調べることにします。
”何かの力”は、”魔法”と呼ばれている物の様です。
不思議な力です。
不思議な力に魅せられます。
神さまのお役に立つのに有効な気がします。
私は、魔法について調べる事にしました。