< 08 この世界に就任した神 十二柱目 02 >
大陸の南西に在る森の近くの村に来ました。
魔法を教える為にです。
村の様子を観察します。
武装した人が多いですね。
魔物の脅威がある村なのでしょう。
この村で”魔法を必要としている人”を探しましょう。
森の中で魔物と戦っている人たちを見付けました。
様子を窺います。
革鎧を着た、五人の若者たちです。
二体の魔物と槍で戦っています。
先に一体を集中攻撃して倒すべきだと思いますが、そういう事は考えていない様です。
三人で相手をしていた一体の魔物を倒しました。
五人でもう一体の魔物を集中攻撃します。
もう一体の魔物も倒しました。
一人が座り込みます。
バテている様ですね。
座り込んだ若者のステータスを見てみます。
全ての数値が低いですね。特にSTRが悲惨です。
これで、MPが高ければ、私的には良いのですが、そんな旨い話はありません。
でも、一応、彼で試してみましょうか。
彼でも使えそうな魔法を考えてみます。
その日の夜。
夢の中で、彼に魔法を教えました。
【身体強化】の魔法です。
素人でも理解しやすく、使い易い魔法です。
クッソ地味で、クッソつまらない魔法ですが、彼のMPで使える魔法で、一番彼の役に立ちそうだったので、仕方が無くコレにしました。
そうです。仕方が無くです。
安全策です。
次の日。
仲間たちと一緒に森へ向かう彼を追います。
二体の魔物と遭遇しました。
戦闘になりました。
昨日と同じ様に戦っていますね。
少し呆れてしまいましたが、怪我をしない様に戦っているのならば、こういう戦い方もアリかもしれませんね。
しかし、今は、彼が上手に魔法を使ってくれるかが、最重要です。
彼らの戦い見守ります。
彼が槍で魔物を突きます。
槍が刺さる瞬間に【身体強化】の魔法を使いました。
ズブッと刺さりました。
よし。
魔物が暴れました。
彼は槍を抜こうと力を入れます。
そして、【身体強化】を使いました。
あ、マズイです。
彼のMPが心配です。
その魔物は彼の仲間が致命傷を与えました。
その魔物が倒れます。
彼も倒れます。
あ~あ。
仲間が彼を背負って引き上げて行きます。
今日は失敗ですね。
ですが、経験を積めば大丈夫でしょう。
それなりに【身体強化】を使えていましたし。
それなりの成果と言って良いと思います。
引き上げる彼らを見て、良いアイデアが浮かびます。
早速、今夜実行しましょう。
さらに次の日。
今日も、仲間たちと一緒に森へ向かう彼を追います。
楽しそうに話をしながら森の中を歩きます。
三体の魔物と遭遇しました。
彼らは三体の魔物を囲みます。
睨み合います。
彼が声を上げて槍を突き出します。
魔物の意識が彼に向きます。
彼の仲間たちが一斉に槍を突き刺しました。
彼の仲間たちの一撃で二体を仕留めました。
残りは一体です。
四人で牽制し、彼が槍を突き刺します。
一撃では仕留められなかった様です。
しかし、他の仲間たちの集中攻撃で、最後の一体も仕留めました。
やりました。
上々の成果です。
その後も、彼らは魔物を狩り続けました。
危なげなく狩りを続け、それは、彼が魔力切れで倒れるまで続けられました。
昨夜、私がした事は、彼の仲間全員に【身体強化】の魔法を教えることでした。
彼の仲間たち全員が【身体強化】の魔法を使える様になれば、余裕を持って魔物を圧倒出来ると思ったからです。
そして、彼の仲間たちには、彼のフォローをお願いしました。
「彼が安全に経験が積める様にしてくれれば、すぐに”お荷物”ではなくなるから。」と。
彼は仲間たちの”お荷物”ではありましたが、仲は良かったので。
それは、気絶した彼を仲間が背負って引き上げて行く様子を見て分かりました。
だから、上手くいくと確信していました。
やりました。
魔法が役に立つ事は、彼らを見れば一目瞭然でしょう。
これを切っ掛けに、魔法が広がることを期待しましょう。
彼と彼の仲間たち以外にも、魔法を教えました。
もちろん夢の中でです。
中には「あなたは誰ですか?」と、危険な質問をしてくるヤツも居ましたが、上手く躱せたと思います。
私の心は守られました。
魔法を教えた人たちには、他の人たちにも魔法を教えてくれる様にお願いしました。
私が教えて回るのには、無理がありますからね。
それに、他人に教えることも魔法の上達に役立ちます。
彼らの中から、偉大な【ファイヤーボール】使いが生まれる事を期待しましょう。
南西の森の近くの村で魔法を教える仕事は、上手くいきました。
私は満足して、あの村に帰りました。