< 06 この世界に就任した神 十一柱目 03end >
一晩の内に川を造り上げました。
まさに、神の御業です。
神の偉大さ触れた人間たちが、神を崇拝する様になったことでしょう。
そう思っていました。
それなのに……。
私のしたことは、笑い話になっていました。
なぜ、こうなってしまったのでしょう。
私が休息している間に、何が起こったのでしょう。
休息と言いながら、10年くらい甘い物を食べ歩いていたのが、マズかったのでしょうか?
そんなことはありませんよね。
働いた体に甘い食べ物は必要です。うん。
人間たちの様子を観察します。
人間たちが神を崇拝する様子は見られません。
それどころか、”うっかり者”と、思われている様です。
「また何か失敗したら、また俺たちが何とかしてやるぜ、がははは。」
そんなことを話す人間も居ます。
どうして、こうなったのでしょう?
分かりません。
困りました。
神力が、なかなか回復しません。
人間たちに、神を崇拝する様子が無いからです。
川を利用した交流のお陰で、人間たちの生活レベルが向上し、私の神レベルも少し上がりました。
その分、私の神力も回復しましたが、まだまだ十分に回復したとは言えません。
もう一本の川を造る計画は、実行出来そうにありませんね。
人間たちの生活レベルを上げる、別の方法を考えましょう。
人間たちの生活レベルを上げる為、少ない神力で済む事を、色々試しました。
しかし、私の神レベルが上がることはありませんでした。
もちろん、私の神力が回復することもありませんでした。
川を完成させた後は、十分な成果を上げることが出来ないまま任期が終わり、異動することになりました。
異動先は、この世界よりも生活レベルが低い世界だと言われました。
トバされると言うことなのでしょうか?
湖を造り、川を一晩で造った私を?
川のお陰で交流が生まれ、生活レベルが向上しました。
功績としては十分なはずです。
私は抗議しました。
「異議があるなら、書面で議会にする様に。」と、言われました。
天界の議会に盾突くのは、得策ではありません。
書面で抗議すれば、その事実が永遠に残ってしまいます。
私は従うしかありませんでした。
< ??? >
力が足りません。
力が集まりません。
世界に漂う、力の欠片を集めるだけでは、足りません。
苦しみから逃れ様とする私に、ある感情が芽生えます。
知識としては、知っていました。
これは、”焦り”なのだと。
その感情を振り払うかの様に、私の心が叫びます。
「何か有りませんかっ。」
「力をっ。」
「神さまのお手伝いをするためにっ。」
「神さまのためにっ。」
「何か有りませんかっ。」
心を落ち着けて、私に出来ることを考えます。
私は、周りに意識を広げます。
世界に私の全てを薄く混ぜる様に。
私の全てを世界に広げます。
………何かを感じます。
私の本能に寄り添うかの様な”何か”を。
私はその”何か”が、うっすらと世界に漂っていることに気が付きます。
私はその”何か”に、慎重に触れます。
その”何か”に、私の本能に近い何かを感じます。
私はその”何か”を、慎重に集めることにしました。
私はその”何か”を、慎重に集めて、気が付きました。
これは、この星の人たちの”想い”なのだと。
神さまが、この星の人たちから想われていることに喜びを感じます。
この”想い”を集めます。
私の力にする為に。
神さまのお役に立つ為に。
私は、集めた”想い”を読み解きます。
「神さんはしょうがねぇなぁ。」
「また何か失敗したら、俺たちが助けてやるぜ。」
「俺たちに任せておけ。」
そんな”想い”ばかりでした。
この星の人たちの考えている神さまと、私の想像していた神さまとは、かなり違う様です。
戸惑います。
しかし、神さまの為に何かしたいという想いを感じます。
この”想い”が私の本能に働きかけたのでしょう。
私はこの”想い”も力に変えて蓄えます。
神さまのお役に立つ為に。
設定
天界の議会が神たちに一番期待しているのは、神を崇拝する人が増える事です。
世界を発展させるのも重要ですが、それだけでは駄目なのです。
神を崇拝する人が減る様な事になってしまうと、トバされたり、クビになったりします。