< 03 この世界に就任した神 ~十柱目 >
< この世界に就任した神 九柱目 >
「なんだ、この星は…。」
この世界の神に就任した俺は、人間の住む星に来て呆れた。
呆れた理由は、大陸のほとんどが荒野だったからだ。
ほとんど平らな大陸には、あまり雨が降らない様だった。
「山脈が必要かな?」
空気の流れを読みながら、どこに山脈を造るか考える。
大陸中央の北寄りの位置に、東西に伸びる山脈を。
大陸の南東に、北北東から南南西に伸びる山脈を、それぞれ造ることにした。
神力を使って、二つの山脈を造った。
一晩の内に。
「かなりの神力を、使ってしまったな。」
「しかし、神の御業を目の当たりにした人間たちが、神を崇拝する様になるだろう。」
「そうすれば、神力も、すぐに回復するはずだ。」
そう思って、特に気にしていなかった。
俺が山脈を造った場所は、人間たちが居る森からかなり離れていたので、誰にも気付かれなかった。
「………。」
失敗した。
神力がほとんど回復しなかった俺は、山脈に雨が降り、山脈のふもとに森が出来ていくのを、黙って見て過ごした。
森の近くに人間が移り住み、村が出来た。
豊かな森のお陰で、人間が増えてきた。
人間が増えたことにより、俺の神力が、少し回復してきた。
しかし、十分に神力が回復しないまま、俺の任期は終わった。
俺がこの世界でした事は、地面を盛り上げて、二つの山脈を造っただけだった。
無念だった。
< ??? >
私は力を集めていました。
本能に従うかの様に。
大きな力を感じました。
その力を集めます。
力を集めたお陰なのでしょう。
私は、私を認識できる様になりました。
私は、私と言う存在について考えます。
私は何なのか。
私は力を集めていました。
本能に従うかの様に。
何の為に力を集めていたのでしょうか?
私は、私の本能に問い掛けます。
私は、私が神さまのお役に立つ為に存在していることに気が付きました。
< この世界に就任した神 十柱目 >
この世界の神に就任しました。
あまり、パッとしない世界らしいです。
私は学校での成績が悪かったので、こういう世界にトバ…げほんげほん、任されたのでしょう。
私に出来る事をやりましょう。
出来ない事はやりませんが。
人間たちの住む星に来ました。
人間たちの住む大陸を上から眺めます。
大陸中央と、南東と、南西の三か所に大きな森が在ります。
中央の森へ行き、人間たちの様子を観察します。
森のそばに村を作り、狩猟と農耕を併せた暮らしをしている様です。
近くの村々と交流を行い、物々交換をしている様です。
貨幣はまだ無い様ですね。
彼らの畑を見てみます。
麦を育てています。
作物の品質は良くない様です。
森の中を調べます。
食べられる果実の成る木は無い様です。
これまで、この世界を担当していた神さまたちは、植物の知識が無かったのでしょうか?
そんなはずはないですよね。
ただ単に、やる気がなかったのでしょう。
私もあまり詳しい訳ではありませんが、なんとかしましょう。
私の出来る範囲で。
先ず、主食らしい、麦の品質を改良しましょう。
実を大きく、多く改良しました。倒れ難い様に、茎も太くします。
次に、森の中に果実の成る木を植えました。
他に、何か有りますでしょうか?
あとは、野菜ですね。
食べられる植物を探してみます。
葉っぱが食べられる物が、三種類ありました。
少ないですね。
実を付ける植物は、一つも無かったですし。
実を付ける植物を植えましょうか。
森との境に実を付ける植物を四種類植えました。
これらが育ったら、村長の夢の中で、食べられることを教えてあげましょう。
私は、新しく植えた植物が育つのを待ちます。
楽しみです。
楽しみです。
…………。
……ぐう。
いつの間にか寝てしまっていました。
はて? 寝る前は何をしていましたっけ?
ああ、何か植えたりしてましたね。
様子を見てみましょう。
私の植えた植物は、上手く育っていませんでした。
何がいけなかったのでしょうか?
まだ、起ききっていない頭で考えます。
森の中や森のそばなのですから、土の性質には問題無いと思います。
畑でも、麦が一応育っていましたしね。
品質はイマイチでしたが。
幸い、主食の麦は、そこそこ育っていたので、別の、実を付ける植物を三種類、新たに植えて様子を見ます。
育ってねー。
育ってねー。
…………。
……ぐう。
起きました。
前回植えた植物の様子を見てみましょう。
やはり、私の植えた植物は、上手く育ちませんでした。
麦は、そこそこ育ったのですが。
何かが、足りない様です。
考えます。考えます。
気が付きました。
虫です。
虫が少ないのでしょう。
それで、受粉が上手くいっていないのです。
たぶん。
神力を使い、ハチを作り出します。
小さく、毒を持っていないハチを。
ハチを放って、植物が実を付けるか確認することにします。
ハチさん、がんばれー。
ハチさん、がんばれー。
…………。
……ぐう。
起きました。
えーっと、寝る前は何をしていましたっけ?
何か植えたんでしたっけ?
取り敢えず、畑を見てみましょうか。
おお。畑を見たら麦が豊作でした。
それを見て、寝る前にハチを作ったことを思い出しました。
おおー、やりました。
成功です。
他の植物も見てみます。
私の植えた植物も実を沢山付けていました。
上手くいきました。
やりました。
森の中に植えた果実の成る木は、まだ実を付けていませんが、そこそこ育っていますので、こちらも希望が持てます。
村長の夢の中で、植物の実が食べられることを教えてあげました。
これから、食料事情が改善していくことでしょう。
この村での実験が成功したので、他の村でも同じことをしてから、私は寝ました。
起きました。
起きたら問題が起きていました。
最初に植物の実験を行った村が、周囲の村々と揉めました。
原因は作物の物々交換に応じなかった事です。
この村の作物だけ品質が良いですからね。
他の村の作物を、「いらない。」と言うのは理解できます。
うーん、失敗でしたかね?
他の村でも同じことをしたので、一時的な問題なのですが、そのことを知っている訳がありませんしね。
それぞれの村の村長の夢の中で、事情をやんわりと説明して、事態を収めてもらいましょう。
村長の説得に応じない過激な者が現れました。
村の若者たちを集めて夜襲を掛けて、最初に私が実験を行った村を支配してしまいました。
あれれー。
困りました。
どうしましょうか?
許せないと言う気持ちは、もちろん有ります。
しかし、支配者が農民たちを保護する関係になっていけば、いずれ国の形にまで発展しそうな気がします。
どうしましょうか?
対応を決められず、時間だけが過ぎました。
…寝てませんよ?
他の村々は、敵対を避けることを選択した様です。
自衛と警戒に人数を割く様になりました。
改良した麦のお陰で、食料の自給は出来ている様です。
その為、村と村との交流が減りしました。
畑を広げる動きが、他の村々でも出てきました。
育てる品種を増やすつもりの様です。
物々交換で手に入り難くなった物を、育てる事にしたのでしょう。
その為、村と村との交流が激減しました。
支配した村と、支配された村。
この二つの村は、食料の生産力が下がっている様です。
支配した村は、支配するのに人を使っている為。
支配された村は、働き手が殺された為。
このままでは、共倒れも有り得ますね。
どうしましょう。
決断をしなければならない事態になりそうな気がしてきました。
支配した村と、支配された村。
共倒れの可能性が高くなってきました。
私が期待した、”支配者が農民たちを保護する関係”にも、なりそうにありません。
私は、支配された村を助けることにしました。
【雷撃】で支配者たちを始末しました。
支配されていた村人たちは、解放されたことを喜びます。
しかし、すぐに報復を恐れて、村の防御の準備を始めました。
村の周りに柵を作っています。
また、隣の村に応援を要請する為に、人を派遣しました。
隣の村は応援を拒絶しました。
自衛も自給も出来ていますからね。
わざわざ、関わる必要なんて有りません。
断って当然ですね。
解放された村への報復をする部隊が、村に近付いて来ました。
これも、私が【雷撃】で始末しました。
支配されていた村は、完全に解放されました。
私は、解放されて喜ぶ村人たちに、「あなた方を助けたのは神です。神に感謝の祈りを捧げなさい。」という夢を見せました。
使った神力を、少しでも回収できたらいいなと思ったので。
疲れたので、私はのんびりと寝る事にしました。
その後の村々。
支配していた村と、支配から解放された村は、細々と村の再建に努めた。
支配していた村は報復を恐れ、村の防御を固めながら、再建に努めた。
支配から解放された村は、「神に守られている。」と言って、防御を後回しにして、畑作業に精を出した。
「神に守られている。」と言う村人たちに、他の村の人たちは呆れた。
「攻め込まれて支配された事を、もう忘れたのか。」と。
支配から解放された村は、早く再建できたが、山賊に襲われ消滅した。
支配していた村も、その後すぐに、同じ運命を辿った。
他の村々の人たちは、自分の村は自分で守らないといけないと、強く思う様になった。
また、”神”なんて言う、あやふやなものにも頼るべきではないと思った。
起きました。
たっぷり寝て、良い目覚めです。
大陸中央の森の近くの村々の様子を、久しぶりに確認します。
あの二つの村が無くなっていました。
あれれー。
解放した村の人たちが、神に感謝して、私の神力が少しでも回復すればいいなと思っていたので、残念です。
あの事件に巻き込まれなかった村々は、規模が少し大きくなっている様です。
食料の生産力が上がった事で、良い影響が出たのでしょう
人口が増えて行くことで、私の神力が回復することを願いましょう。
食料の生産力を高めようとしただけなのに、まさか村が二つも無くなってしまうとは…。
上手くいかないものですね。
うーん、次は何を試してみましょうか。
考えましょう。
うーん。
うーん。
…………。
……ぐぅ。
はっ。
また、寝てしまっていました。
起きたら、もう任期が残っていませんでした。
< ??? >
私は力を集めます。
神さまのお役に立つ為に。
しかし、力を集めるだけでは、どの様に神さまのお役に立てれば良いのか分かりません。
知識も集めることにしました。
人間たちの会話から知識を集めます。
人間たちは、自立の意識が高い様です。
神さまに頼ろうとしないのは良い事だと思いますが、神さまが、”あやふやなもの”扱いだったり、”魔物”扱いなのは、釈然としません。
しかし、神さまの存在やお力に触れれば、きっと考えも変わることでしょう。
私は、神さまのお役に立つ、その時の為に、力と知識を集めます。
設定
神さまたちのやる事が偏っているのは、やりたい事しか、しないからです。
神さまたちは、概ね万能です。
たぶん。(←おい)
次回投稿は、10/08(一週間後)18:00を予定しています。