< 02 この世界に就任した神 ~八柱目 >
< この世界に就任した神 七柱目 >
この世界の神に異動になりました。
この世界の住人を助けて欲しいと、天界の議会から頼まれたからです。
この世界の人間が住んでいる星。
この星には、魔物の脅威に対抗できるだけの武器が在りませんでした。
この星の人間たちは、村を柵で囲んだり、罠を仕掛けたりして、魔物の脅威に対抗していました。
しかし、それだけでは不十分です。
魔物への恐怖心が、さらに魔物を強く進化させてしまうからです。
このままでは、この星の人間たちは魔物たちに滅ぼされてしまうでしょう。
魔物を倒せる武器が必要です。
以前担当していた世界での経験を活かし、青銅の精錬の仕方を、やんわりと伝えました。
”やんわりと”なのは、やり過ぎてしまうと、神に頼るばかりなってしまい、すぐに滅んでしまうからです。
人間たちの手で、青銅製の武器や農具が造られる様になりました。
青銅製の武器を使って、魔物と戦います。
魔物の方がまだ強いですが、複数で連携することで、なんとか互角の戦いが出来ている様です。
魔物に殺される人が減り、少し人口が増えてきた様です。
その為、畑も少し増やされました。
鉄の精錬の仕方を、やんわりと伝えました。
鉄製の武器や農具が造られる様になりました。
鉄製の武器を使って、魔物と戦います。
魔物の方がまだ強いですが、複数で連携することで、互角以上の戦いが出来ています。
さらに人口が増え、畑も増やされました。
しかし、村人たちは村に篭ることが多く、魔物に対する恐怖心はあまり薄れていない様に見えます。
魔物に対抗できる武器を造れる様になったので、時間を掛ければ魔物への恐怖心が薄まっていくでしょう。
満足して良い結果だと思います。
”火の精霊”や”土の精霊”に、祈りを捧げる者たちが現れました。
私は、やんわりとした支援しかしなかったので、彼らには認識されていない様です。
彼らの祈りは、私の神力を増やすことには役立っていませんが、私はそれでも満足でした。
私はこの星の人間たちを見守ります。
また別の世界への異動を頼まれました。
この星の人間たちを見守っていたいという気持ちがありましたが、天界の議会に頼まれたのでは断れません。
私は、この世界とお別れしました。
< ??? >
……かみ…さま…おて…つだ………い…。
…わた…し………やく………め…………。
…それ……が……わた…し…の……やく………め……。
……かみ…さま………。
…チカラ…を…かんじる……。
…これを……あつ…めれば…。
…きっと………。
…かみ…さま……。
< この世界に就任した神 八柱目 >
この世界の神に就任した。
天界の議会に頼まれたからだ。
この世界の人間たちに魔物との戦い方を教えろとのことだった。
早速、この世界の人間たちの様子を見てみる。
森の中で魔物と戦っていた。
その様子を見る。
五人で一体の魔物を囲み、槍で突いて弱らせてから、止めを刺した。
「つまらん戦い方だ。」
「俺様が、本当の戦いと言うヤツを見せてやろう。」
森の中を歩く五人の前方に、魔物が二体居た。
五人が慎重に近付いて行く。
俺は、その五人の前に姿を現す。
「俺は神だ。」
「貴様たちの戦い方は、まるでなっていない。」
「俺様が本当の戦いと言うヤツを見せてやる。」
俺は愛用の両手剣を魔物に向かって振るった。
魔物は二体とも真っ二つになった。
周囲の木も十数本倒れた。
スカッとした。
俺は振り返って言った。
「これが、戦いってヤツだ!」
五人は恐怖で震えていた。
そして、走って逃げて行った。
俺は知らなかった。
魔物より強い存在など居ないと思われていることに。
その所為で、俺は魔物と思われてしまっていた。
五人は村に逃げ込むと、村中に触れ回った。
「森にとんでもなく強い魔物が出た。」
「ヤツは”神”と名乗った。」
「あの魔物はヤバイ。」
村は大騒ぎとなった。
高い場所からその様子を窺っていた。
「…失敗した。」
「まさか、魔物と思われるとは。」
「ちゃんと、神だと名乗ったのに、なんでこうなるんだ。」
「はぁ…。」
村人たちの様子に戸惑ったが、俺は対策を考えることにした。
対策を考えた。
魔物扱いされた俺の本来の姿の分身を作り、それを別の姿になった俺が倒す。
そして、村人たちを安心させた俺が、村人たちに戦い方を教える。
「………。」
下種なやり方だが、効果はあるだろう。
「まさか俺様が、こんなことをすることになるとはな。」
「はぁ…。」
気に入らないやり方だったが、俺は実行に移した。
俺は姿を村人風に変えて、手に槍を持ち、村を訪れた。
武器が槍なのは、村人たちの知らない武器を使うよりは、安心してもらえると思ったからだ。
村人たちから話を聞き、「魔物とやらは俺が退治する。」と、言った。
早速、俺は森に向かった。
数人の村人が、距離を取って付いて来ている。
村人たちの前で、俺は槍を縦横無尽に振るって、俺の分身を圧倒して倒した。
村に戻ると、俺のことを盛大に迎えてくれた。
俺の戦い振りを見ていた奴らが、俺の強さを大いに宣伝してくれた。
村長に頼まれ、この村で戦い方を教えることになった。
しばらくこの村に滞在し、戦い方をみっちりと教え込んだ。
村人数人で連携して、確実に魔物を狩れる様になった。
一人ではまだ魔物を倒せないが、二人でなら互角以上に戦える様になり、大いに自信を付けてくれた。
種は撒いた。これからの更なる成長に期待しよう。
しかし、槍での戦い方しか教えられなかった事に、俺は不満だった。
俺が森で見せた戦い方が、強いインパクトを与えてしまった所為だ。
男だったら両手剣だろうに…。
この村で戦い方を十分に教えたので、俺はこの村を離れることにした。
「他の村も俺を必要としている。」
そう言ったら、納得してくれた。
助かる。
別れの宴を開いてくれた事には、ちょっとだけ鼻水が出た。泣いてなんかいない。
翌朝、村人たちに見送られて村を後にした。
その後、全ての村を回った。
最初に槍での戦い方を教え、小剣と両手剣での戦い方も教えた。
どの村も魔物の脅威にさらされていたので、みんな真面目に取り組んでくれた。
そのお陰でどの村も、魔物を必要以上に恐れない様になった。
戦い方を教えた結果、魔物の駆除が捗り、村人たちの行動範囲が広がり、村と村との交流が盛んになっていった。
村と村との交流が盛んになった結果、武器や農具が改良されていくことになった。
他にも、畑で穫れる作物の育て方の情報などの意見交換が行われ、収穫が増えるという嬉しい効果があった。
想像以上の成果だった。
さらに、最初の村にも、他の村から両手剣の良さが伝わり、両手剣を使う者が現れた。
俺はとても嬉しくなった。
男だったら両手剣だよなっ。
十分な成果を上げ、俺は任期を終えた。
神とは魔物の一つだという誤解を解くのを忘れていたことは、次の任地に行った後で気が付いた。
< ??? >
…わたしが…神さまの…おて…つだいを…。
…それがわた…し…の……やくめ…。
…もっとチカラを……そうすれば…やくめを……。
…チカラを…あつめ…なければ…そうすれば…やくめを……。
…神…さま…の…おて…つだいを…。
もっと…チカラを。
もっとチカラを。
もっと力を。
集めなければ。
もっと力を。
次回投稿は、10/01(一週間後)18:00を予定しています。