中々中・作【ムッチ打ちの少女】及びその他。
レビュー、それは四百文字で魅力を伝え、読み手に興味を抱かせる技。有る意味小説よりも難易度の高い行為である。今回はその枠をぶち破り、中々中氏の小説とその魅力を伝えられれば……幸いです。
ヒトは常に悩み、そして答えを探している。小説等と言う古風で因果な表現方法に魅せられた者もまた然り。
だが、時にはそのような思想の連鎖の軛から逸脱する者や……物語も確かに存在する。或る者は非合法の化合物を摂取し幻覚を見つつ、また或る者は多量のアルコールに依る酩酊状態になることで……。
しかし、そのような命を削るようなことをせずとも軛を外す者は居る。
……今回はそんなことを夢想したくなるような作品をレビュー、いや再レビューいたします。
その名は「ムッチ打ちの少女」。中々中氏の作品(現在更新停止中)である。
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「センセ!この前の釣り、すっごく楽しかったです!また連れていって下さいね!」
彼女にそう言われた俺は、内心は物凄くやっちまったなぁ……と思っていた。
①貸し与えた釣り道具の持ち主である三次元嫁から「私の釣竿を勝手に貸すな!てか何で編集者と二人で釣りなんて行ってるのよ!」と怒られた。その怒りを鎮める為にどれだけ腐心したことか。
②これは勝手な妄想だが、この後で下心満載で再度行くことになったら、「彼にもやらせてみたいんですぅ♪」的な感じになりイチャイチャを見せつけられて死にたくなる展開しか予想できない。彼女に彼氏が居るのか確認したことは無いが、きっと居るに違いない。いや居ない方が逆におかしい。だって可愛いから。
③自らの手でハードルをガッチリと高くしてしまったようだ。もう俺に彼女を楽しませるような舞台を用意する知識は無い。田舎ナメんな何もないから。
「……センセ、聞いてます?」
「あ、あぁ!勿論だとも!……で、今回のレビューなんだけど……」
結局、俺は自宅兼書斎兼事務所から離れてレビューの打ち合わせをする為に選んだ場所は、超無難な喫茶店だった。
地元に古くから存在する店で、たぶん市内唯一の純喫茶形式を保存している……所謂、田舎のサ店。
ショーウィンドーにはコーヒー豆をそのまま入れたコーヒーカップ、そしてアイスメロンソーダの模造品……何故かウィンドーの端にはハリセンボンの提灯が吊るされているような、そんな店である。
「何とも言えない雰囲気ですね……あ、占いマシンだ!初めて見たかも!?」
カシュカシュとレバーを引いてみる彼女は現代っ子らしく、スマフォを取り出して写真を撮っている。ちなみにそれ、吉と凶しか出ないと噂されているぞ。
【秋山エルザ。某出版社新人編集部員。黒髪ロングを束ねたメガネ巨乳の美人。ほんの少しだけアヒル口だが、そこが実に辛抱堪らんタイプ。アルコール耐性高し。】
彼女の正面に座りながら、俺は今回のレビュー対象の題名が二回続けて微妙且つインパクト有り過ぎなことに、(どーしよーかなー、でも決まりは決まりなんだしなぁ)とほんの少しだけ悩む振りだけをしていた。
【稲村某。只の小説好きが高じて書く方になった痛い奴。副業が休みの日は一日十時間近く執筆する家庭ブレイク野郎だが、残念ながら妻子持ち。】
「……タイトルは【ムッチ打ちの少女】!……なんだけど……大丈夫?」
「えぇ、別にいいんじゃないですか?18禁の作品じゃないんでしょうし……(彼女の所属先の出版社はそうした扱いの書籍は取り扱っていない)」
……心配無用だった。 うーん、俺の不安やら何やらは何だったんだろうか……いや、それよりも彼女の耐性が上がったことは喜ぶべきことなのか?もしかして陰で(うちの担当してる作家、毎回ド変態なタイトル引っ張ってくるのよ!絶対にアイツ、変態よね!?)とか言っているのでは……い、いかん何で俺はそんなことを妄想して悦んでいるんだ?……まるで変態じゃないか!(ハイ、仰有る通りに変態ですが何か?)
「……ちなみにセンセ、前から不思議に思っていたんですが、その順番ってレビューした作品の順番と違ってますが、何か意味があるんですか?」
ずび……とアイスコーヒーを一口啜ってから、小首を傾げつつ秋山嬢が尋ねてくる。ヤダこの娘ったらメッチャ可愛い……まぁ、毎度だが。
「あるよ。実はレビューした作品の作家さんにメールを出して、返信順に再レビューしていてね。四回目の中々中氏は四番目に返信が来たんだ。だから一見すると順不同なんだけど、俺はその方針を貫いている。そして売名行為を排除する為に、感想等を要請するメールも一切出していない。【こんな風に再レビューしました!是非読んでください!】的な物も出さない。折角許可を出して頂いた作家さんには失礼だと思うし、相互レビュー的な事は嫌いだからね」
「……意外に淡白と言うか……売り方が下手なんですねぇ」
「まぁそうかもね……俺はツイッターやFacebookもやっていないし、小説の魅力以外で有名になったとしても、それに何の意味も無いと思うし……」
「まぁ、それがセンセの良い所かもしれませんね。きっと奥さんもそんな所に惚れたんじゃないですか~?」
「それはないなぁ、たぶん……」
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「さて、それじゃ作品の魅力についてだが……実はこの作品は現在更新されていない。理由は……作家さんに聞いてみなければ判らないし、俺が聞くようなことじゃない。だから、このレビューは本当の意味で作品の、そして作家さんの魅力を掘り下げる話になると思う」
「随分と投げっ放しな扱い方なんですね……でも、更新停止中の作品をレビューする意味って有るんですか?」
「勿論あるよ。この作品は相当な【ネット特有の現在進行形小説】だったんだ。何せ更新される度、感想欄に大量の感想が上がり、それに全て作者自身がコメントし、時にはその流れが作風に生かされる……読者と作家が一体になりながら更新され続けた作品なんだ」
「じゃあ、今現在は何も感想は無いんですよね……何だか寂しいような気もしますね……」
そこまで二人で話し、俺は離れた席に移ってキャメルに火をつけ、秋山嬢はアイスコーヒーのお代わりを二つ注文する。やがてアイスコーヒーが運ばれてきた後、俺はタバコの火を消し席へと戻った。
「センセ、そんなに気を使わなくていーんですよ?父親や同僚にも喫煙者ですし」
「そうかもしれないけど、何だか悪くてね……彼氏もきっとタバコとか吸わないんでしょ?」
「ヤダっ!!センセったら……私、彼氏が居るように見えますか……?」
「……うん、見えるに決まってるじゃん……もし居ないなら君の同僚とかは全員女性か修行僧に違いない」
「アハハハハハハハ!!おぼーさんの居る編集部ってどんななんですか!……まぁ、確かに女性が多い職場なんですけど、ねぇ……」
一瞬だけ、明るい笑顔を絶やさない秋山嬢の表情が翳ったが、俺はコーヒーを飲む振りをして見なかったことにした。付け加えれば後の全員は既婚者なんだろう。きっとそーだそーに違いない。
「……それはともかく、今でもこの作品は読むだけの価値が十分にあるよ。例えばさっきの感想欄なんだけど、実際に話の流れの中に感想欄から派生した流れを見つけられれば【あ、これがこうなったんだ!】と理解できるし、それはそれでリアルタイムでは無いものの、ネット小説ならではの連帯感を共有する疑似体験みたいな雰囲気があるんだ」
「それはなかなか面白いですね。でも、タイトルの【ムッチ打ちの少女】って、童話のマッチ売りの少女から取られているんですか?」
「なかなか鋭いね。あらすじを読めば判るけど、これはとある小説サイトが開催した童話特集開催時に発表された作品だから、作者さんが何らかの意識を持って創作したのかもしれないし……関係ないかもしれないね」
「うわ……投げちゃった……ちなみにこの作品の魅力ってどんな所にあるんですか?」
「魅力?うん……身体ムチムチな少女が神託の結果、自らに宿した【ムチ打ちの能力】に戸惑いながら技術向上に励み、そんな彼女を見出だした保護者的存在の紳士が、実は変態紳士だった……そんなお話なんだよ。実に魅力的じゃない?」
「……センセ、酔ってます?」
「……勿論酔っていませんし、この作品に満ち溢れるエネルギッシュな変態紳士の紳士的な変態度が魅力の一つなんだよね」
「……やっぱりセンセ、変態なんですか?」
「……まぁ、ハッキリ言ってしまうと否定は出来ないけれど、そもそも変態って何なんだろうねぇ……自分自身の欲求に対して正直に行動することが変態だとするならば、人間の大多数は変態だと言えるし、自分が変態ではないと否定するならば、その人物は限り無く魅力に乏しい傀儡のような存在でしかない、とも言えるけど」
「……センセ?」
「秋山クン、君は自分が自らの欲求を抑制出来る、誰の目にも明らかな聖人然とした淑女であると誓えるのかな?」
「……そんな極端な人物じゃ、確かに有りませんが……」
「そりゃそうだよ。誰だって眠くなったら寝るし、空腹を覚えたら食事をする。色恋沙汰に悩めば、枕を涙で濡らす夜もあるだろうさ」
「格好良く仰有いましたけど、要は三欲有っての人間だと言う訳ですよね?」
「ま、そう言うこと」
そこまで語り合い、何故か二人してアイスコーヒーを同時に飲み、そしてお互いを見合って、タハハ……と力なく笑ってしまった。
「でも、センセのレビュー、この作品に関しては【問答無用で読め!】みたいな強引さはあまり無い感じがしますね」
タブレットを眺めながらストレートに尋ねてくる秋山嬢に、書いた本人は暫し悩んだ後、
「……実はこの作家さん、とあるネット小説サイトで、この前の作品で一万以上の評価ポイントを獲得しててね。俺としては【わざわざ俺がレビューしなくても別にいいじゃん】って卑屈な考えをしてしまってね……レビューする人間としては恥ずかしい限りだけど。で、その後のこの作品を読んで、自分の器の小ささに気付かされてさ……気がつけばレビュー欄に思うまま書き連ねていたって感じだね」
【※これは全年齢対象です(キッパリと)。……ですが、全編が脳内変換推奨作品♪……つまり、読者の【裏のオトナの力】が試される……そんな素敵でウフフ♪な小説ですよ?……さぁ、読んで哭け!「アオォオン!!」と。※
主人公はしっかりと天然少女です。
何処が天然か、って?
……典型的ツンデレ幼馴染みの何万分の一程度のラブ要素も含有していない頭の中は、「お金持ちになりたい!」しか有りません。勿論なり方なんて知りません。故に天然。
しかしタイトル通り、彼女のスキルは【鞭】。……只の無知じゃ、有りませんよ?振るえば如何に屈強な男共だろうと涙腺から涙が迸り、食いしばった口からは慟哭の鳴き声が響き渡る……
。そう、彼女は《ムッチムチ》。身体もスキルも頭の中も鞭無知ムッチムチ……な、少女。
……でもちゃんとテンプレ的ダンジョン探索系小説の体はしっかり整っています。うん……そこは揺るぎない磐石の構えなんだよ、しっかりと、ね……確信犯的に。
さぁ!皆さんでこのムッチムチで無知な鞭打ちの少女をメジャーにしよう!!
……まぁ、映像化は……限り無くないけれど、なったら……面白いんじゃない?だからみんなで応援しよう!!】(ムッチ打ちの少女・レビュー欄から抜粋)
「……前言撤回です。良く読んでみたら何なんですかこのレビュー!!読者の脳内変換推奨!なんてタイトルが付いてるわ、【読んで哭け!アオォオン!!と。】とか意味判んないし!!オマケに無知なムチ打ちのムチムチな少女とか……やっぱり18禁作品なんじゃないんですか!?」
「……全然違うけど?」
「じゃあ何で視線が泳いでるんですか!!こっちをちゃんと見てください!」
(……いや、君みたいな可愛い女性にそんな言われたら……マジでヤバイっての!)
「……あー、うん……ほ、ほら……秋山クンだって若くて……スタイル良いし……主役の女の子みたいだから、その……ねぇ?」
「……わ、私は別に鞭なんて使いません!それに……何も判らない訳じゃないし……そ、そう!そんなにスタイル良くないですから!……ぽ、ぽっちゃり系なん……じゃ、ないかな……?」
……俺は彼女の控え目な態度に、ほんの少しだけ苛立ってしまった……若い女性は直ぐに自らを【太っている】と過小評価しがちである。実に良くない文化であり、問題視するべき風潮だと思う。
何故か?それは……実データからすると、ふくよかな女性の方が、痩せた女性よりも《受胎率が高い》らしい。つまり、不要なダイエットに因り子供が出来難い体質になる女性が増えているにも関わらず、洋服のサイズを在庫が嵩むから、と言う理由で店頭に置かなかったり、痩せたい願望ばかりを取り上げて【今年の夏こそぽっちゃり体型から脱却!!】のような特集を組む雑誌の何と多いことか……不要なダイエットを強制するばかりの世間に流されて、女性らしさの希薄な、必要性の全く無いモデル体型なんて……まぁ、仕方の無いことだが。
「……ぽっちゃり系?……おおいに結構じゃないか!!太古の昔から女性の美の一つは《女性らしいふくよかさ》だったんだ!素晴らしいことだよ!」
思わず秋山嬢の手を両手で掴んでしまうと、逆に彼女の方が視線を泳がせながらあたふたしている……前から思っていたけれど、この娘ったら……押しに弱いんじゃないのか?
「で、でもセンセ、それはともかく変態紳士とムチ使いの少女以外のキャラはどんな人が登場するんですか?」
「うーん、幼馴染みの熱血漢、無口な朴念仁、パトロンの義理の息子、貴族の倅……一杯出てくるけど、大抵鞭でしばかれる。そして何だかんだあって……良い声で哭く……」
「……何だか頭が……女性キャラは?」
「超高飛車な貴族の末娘は、上記の男性キャラの一人のパトロンになるんだけど、これがまたいい感じでツンデレかましてくれるんだよ。読んでるこちらがキュンキュンする位にね」
「どこらへんですか?……ん?……あ、これは……うわっ!!……た、確かに……すっごくツンデレ……しかも、本人が物凄く戸惑ってます!!」
「うん、主人公を食っちゃうくらいにね」
「……はぁ、いいですね……何だか♪……で、結局、この作者さんの魅力ってどんな所なんですか?」
「……フリーダム、この一言に尽きるよ」
「ふ?……つまり、自由な作風?……確かにムチ打ってキノコが育つとか……普通なら書きませんね」
「基本的に物語の大半は、地下迷宮や冒険者の登場する世界観なんだけど、掌からウ○コ出る能力有ったり、最強能力と最高顔面偏差値なのに中身は会話も成立しないコミュ障だったり……つまり、一癖も二癖もある奴ばっかり……なのに、話はちゃんと成立してる。逆にそんな内容なのに物語が成立している事が凄くない?」
「うーん、確かにそうですね……でも、中には強制的に近い勢いで終わらせてたりしません?」
「うん、作者さんが次の作品を書く為に、エタらせたくないからさっさと終わらせちゃうこともある。上記の一万以上の評価ポイント作品も、サックリと終了させちゃうし、潔いね、ホント」
「……それにしても、何だか……この作家さん、小説の端々にエッチな感じしてませんか?」
「うん……まぁ、そこらへんは俺の作品に影響与えた作家さんだからね……」
秋山嬢はタブレットを使って中々中氏の他の作品を読んでいたのだが、突然眼を細めて暫く沈黙し、それから突然タブレットからガバッ!と勢い良く身を起こし(ついでにチチも勢い良く揺れたが)、
「……うぉっ!?な、何この作品!!……子作りの話じゃないですか!!」
「……一応、18禁じゃないんだけどねぇ」
「……何この作品!!ヒャッハァ~ッ!!って言う意味は判んないけど明らかにその……その……アレ、してますよねッ!?」
「……まぁ、文脈の前後を読み解けば、主人公は脱童貞してますね、えぇ……(状況説明で読み手は容易に主人公がそうなったと理解できる)」
「……結局、ムッチ打ちの少女以外の男性主人公の話は大半が脱童貞話なんですね……全部じゃないけど……」
「うん」
「……自由、ですね」
「そもそも俺みたいなオールドSFの愛読者から見れば、海外作品の大半は《お楽しみ回》が必ずあったし、逆にその程度の表現位でヒーハー言ってる日本の小説界の方が幼稚に思えるけど?人間は脇の下かキャベツ畑から生まれると説明せよと言うのかい?」
「いや、それは違いますが……でも、そこはこう何と言うか……上手くオブラートに包んで表現すればいいかな?……なんて……」
「【愛し合う二人は固く抱き締め合い口づけを交わした。朝になった。】……こんな説明だけで十ヶ月後に安産で娘が産まれました、なんて白々しく説明する方が不自然で曖昧で不気味だけどね」
「……そうかもしれませんが……」
「いやッ!!そうじゃない!!俺がレビューした中々中氏の小説の魅力はそんなことじゃないんだッ!!」
「ひィッ!?」
「……ごめん、少し落ち着こうか……」
そう言うと俺は喫茶店の主人に声を荒げたことを詫び、コーヒーのお代わりを二杯注文した。
それから彼女に断ってからキャメルに火を点けて、紫煙を目で追った。
「……俺にとって、中々中氏の作品群は、表現の範囲に囚われない、自分にとって面白い作品になる!って強い意思が通った小説ばかりなんだよ。確かに異世界、地下迷宮、亜人種、魔法、そんな題材が目立つけど、どこかしら主流に真っ向から立ち向かい自分流を貫いている設定が必ず有るんだよね。俺は主流に抗って色々と書き散らして、結局ハイファンタジーの世界観からは距離を置いてるけど、中々中氏はそんな世界観を据えても自分流を必ず入れてくる。ホント……才能だと思うよ」
「エッセイ凄いですねッ!!……プフッ!……だ、ダメ無理!!キャハハハハハハ~♪」
「うん、エッセイの破壊力はネット小説界のホイス・グレイシーだね」
そんな風にとりとめの無いやり取りをしながら話し続けて会計を済ませ、気付けば秋山嬢を駅まで送る道を並んで歩いていた。
「……済まないね、レビューに関係の無い話ばかりして……」
「いーえ御構い無く!私もネット小説のこと、もっと知りたくなって来ましたし、ホント……センセのお陰です!」
「そう?なら良いけど……」
「センセ……私……実はセンセのこと……」
(……っ!?ま、まさかの妻子持ちに爆弾発言!?……言われたら俺は即座にオッケー牧場からの……)
「……歳の離れたおにーちゃんみたいに思ってます!」
「……はい?」
「ウフフ♪……そーですよね……いきなり言われたって判らないですよね……私、センセの担当になった時、【あーあ、ラノベ中毒の面倒臭そうな中年に当たっちゃったなぁ】って、正直に思っていたんですけど……」
「……思っていたんですけど?」
「でもね!見た目と履歴欄が全然当てはまらない?って感じで安心できて……それにセンセの作品の中でも……」
「いや、それはいいよ……もう駅だし、続きはまた今度にしよう」
駅舎の改札口へと繋がる階段の下で、彼女と話す俺。
「……センセ、良い報せと、悪い報せなら……どちらから聞きたいですか?」
「何なの?それ……じゃ、悪い方から……」
「……私……実は今回限りで、センセの担当から外れることになりました!!」
彼女は精一杯の声を張り上げて、悲しい報せを、努めて明るく伝えてくれた。
「……じゃ、良い方ってのは?」
「……次の担当は、元気な後輩の女子ですっ!!」
……たぶん、巨乳じゃないんだろうなぁ。
「そっか。ま、身体に気を付けてお仕事に励んでね」
……うん、これでいい。軽く往なしてさようなら、そんな感じで、ね。
「センセ!メアド交換しませんか?」
「するする!赤外線ピッピッしよう!」
……嗚呼、俺のバカちん……。
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御精読有り難う御座いました。これにて第一部は終了致します。レビューした皆様からの許可返信順にご紹介してきましたが、ネタ切れになりました。
次回からは秋山嬢に代わって新しい担当者にバトンタッチするそうです。それではまた次回の再レビューでお会いいたしましょう!
(次からはタイトルが替わる予定です)
最後に再レビューのお許しをくださった中々中氏、及び他の作家様の皆様に感謝。
そんな感じですが、レビュー数が増えて作者様からのお許しが得られたら、また更新致します。それまで……暫し御待ちあれ。