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第1話 異世界転生

 憶えているのは真っ赤な部屋だ。

 現代社会で生きていれば火を見る事くらいはあるだろう。

 でも、自分の周りを覆い尽くすような炎にはお目にかかれる事はまずない。

 それを見た瞬間、あまりの非現実的な光景に思考が止まった。

 だが、自分の体を炎が炙っていく段になって、止まっていた思考が一気に溢れ出しだ。

「あああああああああ!!」

 痛い。痛い。痛い。痛い。

 なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。

 どうして、どうして、どうして、どうして。

「あああああああああ!!!」

 助けて、助けて、助けて、助けて……!!

 

 全身を襲う激痛にもだえながら、俺は必死に答えを探した。

 だが、答えはどこにも見つからず、やがて俺は死んだ。


——はず、だった。


「生を全うできなかった者に救いを与えましょう。

 あなたは、新たな生に何を望みますか?」 


 そこは何もない真っ白な空間。

 目の前には、この世の者とは思えないくらいの美女が立っている。

 俺は美女の言葉を脳内で反芻して、1つの結論に辿り着いた、

「そうか。俺は、転生するんだな?」

「肯定です。私は女神フレイヤ。あなたは異世界ミッドガルドへ転生します」

 やっぱりだ。これは、俗にいう「異世界転生」ってやつだ。

 現世で非業の死を遂げた人間が、新たな宿命を背負って異世界に召喚されるアレだ。

 俺は自分の口元が緩むのを感じながら、女神フレイヤの問いをもう一度思い出す。

『あなたは、新たな生に何を望みますか?』

 女神はそう言った。これは恐らく、転生する際のチート能力の事だろう。

 チート能力。異世界転生においてはお約束とも言えるものだ。現世から異世界に召喚された主人公が、その世界で無双するためにかかせないスキル。

 まあ、その世界において反則級に便利な能力ってことだな。

「んー、そうだな……痛いのは嫌だな」

 前世の最後の記憶。炎に焼かれた時を思い出しながら、俺は言った。

「了解しました。願いを受諾します。痛覚無効を獲得しました」

「おぉ、やっぱりそういう感じなのか」

 痛覚無効って事は、痛みを感じないって事なんだろうな。そりゃありがたい。

「あなたは勇者として召喚されます。それを意識して望みを告げる事を推奨します」

「へぇ、勇者か。まあ、現実では働いてなかったし、異世界でくらいはがんばりますかね……じゃあ、剣術と魔法は使えるようにしといてよ」

 30歳で引きこもりニートだった俺は、一度も働いた事がなかった。ネットゲームの世界ではそれなりに働いていたけどな。

「了解しました。願いを受諾します。剣術スキルと魔法スキルを獲得しました」

「うおー、良いね。ワクワクしてきた。次は……」

 前世での記憶、異世界転生ものの小説やマンガの知識を思い出しながら、次の願いを考える。

 そうだ。異世界転生ものと言えば……ハーレムだろう。

 かわいい美少女たちから愛されまくって、チート能力でバッタバッタと敵を倒し、最高の異世界ライフを送りたい。

 そうして俺は、その願いを告げる。


「誰からも愛されるモテモテな勇者になりたいな」


 その瞬間、俺の意識は途絶えた。

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