ある小さな恋の物語⑨1度目のcatastropheに向けて④
「賢者殿が、そんな早朝からですか?!、それは申し訳ありませんでした」
昨晩は、その賢者殿とこれからの事を夜の空が白むまで、スパイクは話し込んでいました。
元々、夜型の御仁なので普段は夜空が白む直前まで研究や調べ物を行っているのを知っています。
本来なら、皆が活発に動き始める今頃になって、寝所からそろそろ起きようか微睡もうかしている様な感じです。
身辺の事は、一応中身が御婦人(?)という事もあって、世話をやくまでもなありません。
しかしながら、サブノックの王宮の一室に研究所と書斎も兼ねて居を構えていて、世話をする近習の中でも、食事を担当する者が、それを出すタイミング程度に迷惑をかけているという事です。
ただそれも専ら最近は保護をしてから随分と経つ、ジニア・マクガフィンという女の子が秘書として据えた事で、本格的に迷惑をかけなくて済んでいる様でした。
彼女の出身は、サブノックとはどちらかと言えば相性の悪いとされているセリサンセウム王国という事なので、信頼出来る者にしか話してはいないと、されていました。
賢者に負けず劣らずはっきりと口にする女の子で、腹違いの弟の引っ込み思案のスパンコーンを"尻に引く"というよりは、手を引っ張っていくタイプでスパイクからしても、頼もしい限りの、褐色の肌をした女の子です。
ただ、恐らくはサブノックの賢者殿のこのような行動については初めての事だと思うので、弟の彼女が慌てていなければ良いのだがとも、スパイクは考えます。
(ジニアは、今日の賢者殿の動向を掴めているのかな……まあ、あの娘は確りしているから大丈夫だろう。
と、今はこんなことを心配している場合ではなかったかな。
何にしても、賢者殿がこんなに早く動くなんて本当に予想外だった)
スパイクは賢者と別れた後に軽く仮眠をとり、一応通常の朝の職務に着いたなら、断りをいれてストラス家の自室に戻って寝るつもりでいました。
しかしながら、兄達の話を聞いて眠気はすっかり消し飛んでします。
けれども、2人の兄達はちっとも気にしている様子はありません。
「何、たまになら早起きするのもいいものだ」
「子ども達が"父上が起きていらっしゃる"って驚いた顔も見れたしな」
兄でもあるけれども、父という役割もこなしてい2人は楽しそうに笑っていました。